軍艦高雄始末記 の商品レビュー

宮崎清文(著者)

2017/01/19

１９８１年刊。海軍重巡洋艦高雄の主計長の回顧録。主として、戦後抑留から復員までを叙述。高雄はシンガポール近辺で、事実上陸上砲台化した状態で終戦を迎えたが、むしろ、本当の苦労はそこから始まったといっても過言ではない。が、そこはかとない明るさを持ちつつ(演劇やバレーボール大会や釣りなど)、苦難を乗り切った様子が生々しく、また、戦中戦後を通じ食事管理に奔走する主計大尉の実相も。英軍支配の理不尽さも描かれるが、無責任ぶりを露呈してタイで逃亡した辻政信(ノモンハン事件敗戦の真の責任者)にも呆れ、著者の目線も厳しい。