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勤勉の哲学 の商品レビュー

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2016/02/14

 「勤勉」や「貯蓄」は一昔前の日本人ならば誰もが当然身につけるべき徳目と考えられていたであろう。この当たり前の価値観は現代にもかなりの影響力を残しており、いわゆる過労死やブラック企業等の問題も勤勉性を重んじる価値観が共有されているからだろう。しかし、当たり前のように受け止めている...

 「勤勉」や「貯蓄」は一昔前の日本人ならば誰もが当然身につけるべき徳目と考えられていたであろう。この当たり前の価値観は現代にもかなりの影響力を残しており、いわゆる過労死やブラック企業等の問題も勤勉性を重んじる価値観が共有されているからだろう。しかし、当たり前のように受け止めている価値観が、「どのような思想に基づいているのか?」、「どのように社会に定着したのか?」と問われると答えに窮する。  本書の山本七平氏は独特の日本人論を展開した方であるが、この難問に対して二人のキーパーソンの名前を挙げている。鈴木正三と石田梅岩。義務教育で習う日本史の中でほとんど無名ともいえるこの二人が如何に偉大な思想家であったかを本書では詳細に論じているが、原典からの引用を多用しているため難解である。古文・漢文で書かれた二人のキーパーソンの思想を十分に理解するのは難しいが、現代文で書かれた著者の見解を読むだけでも概要は理解できるだろう。古き良き時代の価値観が揺らぎ始めている現代だからこそ、もう一度、現代的な視点で彼らの思想を再評価することで何か気付きが得られるのではないだろうか。 巻末には社会学者の小室直樹氏が長文の解説を寄稿しているが、本文と併せて読むとより理解が深まるだろう。

Posted byブクログ