月読 の商品レビュー
せっかくファンタジー性に優れた舞台なのに、ストーリーに活かしきれていないのが惜しい。 特に後半は登場人物の神秘性がどんどん薄れて、普通のメロドラマみたいになってしまった印象。期待が大き過ぎたかな?
Posted by
興味深く、引き込まれていった。 死者の最後の声を聞く月読(つくよみ)ってありがちな設定って思ったけど、予想外。色々な事件と月読の人生が交差し最後まで飽きない。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
死者の最後の思いを様々な形となって現す『月導』。 その思いを読み取ることの出来る能力を持つ『月読』。 とても素敵な世界観にあっという間に引き込まれました。 青春小説のような輝きと、複雑な人間関係が交錯する群像劇、そして根本にあるのはミステリ。 これらの要素が見事に絡み合い、このパラレルワールドへと誘います。 とても良かったです。 もしこの世界に『月導』『月読』が存在するならば、自分の死後、どんなものが形となって現れるんだろうか。 続きも購入してあるので、読み始めます。
Posted by
書架でタイトルに惹かれて読む。 基本的には現代の日本を舞台としたミステリー。 だが、パラレルワールドとも言うべき、微妙に異なる世界。 だか、その差異がかなり自然に表現されているので、変な(下手な?)刑事ものより現実的。 その異分に心魅かれ、全体に漂う優しさに心暖まる一冊。
Posted by
死者が最期の思いを残す月導(つきしるべ)と、 それを読み解く月読(つくよみ)が存在する世界の話。 月読として生きる青年と殺人事件を追う刑事、自分の進路に悩む高校生達、彼らの運命が重なり合うときに・・・ 平行世界を舞台とした長編ミステリー!!
Posted by
太田 忠司 『月読』 (2005年1月・文藝春秋 / 2008年1月・文春文庫) 「月読」とは、死者の最期の思いを読みとる能力者。 月読として生きる朔夜が、従妹を殺した犯人を追う刑事・河井と出会ったとき、さらに大きな事件が勃発して――。 人は死の瞬間、何を思うのか。それを知る...
太田 忠司 『月読』 (2005年1月・文藝春秋 / 2008年1月・文春文庫) 「月読」とは、死者の最期の思いを読みとる能力者。 月読として生きる朔夜が、従妹を殺した犯人を追う刑事・河井と出会ったとき、さらに大きな事件が勃発して――。 人は死の瞬間、何を思うのか。それを知ることに意味はあるのか。 地方都市で鬱屈する若者たちの青春を描く、著者渾身の傑作ミステリー長篇。(文庫版裏表紙より) 人間が死んだ直後に必ず現れる不可解な現象「月導(つきしるべ)」 その月導に触れることにより、亡くなった人が最期に思ったことを読み取る能力者「月読(つくよみ)」 舞台となる世界と我々の住む世界との相違はたった二つの事柄――「月導」と「月読」の存在だ。 科学技術の進歩に費やされるはずだった学者たちの才能がこれらの研究に著しく浪費された結果、我々の世界よりもこの作品の舞台となっている世界の科学技術は遅れてしまっている。 それゆえ、携帯電話も薄型テレビもない「現代」が描かれている。 もちろん、月導と月読の存在はこの物語にとって大きな役割を果たしている。 だからといってSF的な色合いは決して強くなく、科学的な根拠に関しては何も語られない。 読者はただその存在のみを自然に受け止めればよい。 二つの殺人事件とそれを追う刑事、三人の若者と一人の月読。 それぞれが背負う業と謎を絡めながら、物語は淡々と語られていく。 しかし私がこの物語に魅かれたのはミステリとしての完成度や衝撃度ではなかった。 この作品世界に生きる彼らすべてに幸福な結末が用意されているわけでは決してなかったが、 それを静かに丁寧に描いた作者の優しい眼差しを感じたからだ。 ある者は生きることに意味はないと言い、ある者は、自らの存在に意味を求める。 生きた証を残したいと願う者がいれば、静かに見守ることで生きる意味を見出す者もいる。 死の瞬間に人は何を思うのか? その答えが具現化される世界に生きる彼らは日々何を思って生きているのか? 先端技術や情報が溢れかえる世界に生きる我々はその速い流れを泳ぎきるのに精一杯になっていて、この作品を通じて問いかけられるこれらの問いに対して何の答えも用意していない。 85点(100点満点)。
Posted by
ファンタジー的な設定が苦手で、初めは苦戦したがファンタジー色は強くなく、ミステリとして楽しめた。 あらすじ: 死者の残す月導(つきしるべ)を読み取る月読(つくよみ)。その人の一番心に残っているメッセージが時には花に、ガラスに、絵に、温度に--とにかくさまざまな形をとって表れる。...
ファンタジー的な設定が苦手で、初めは苦戦したがファンタジー色は強くなく、ミステリとして楽しめた。 あらすじ: 死者の残す月導(つきしるべ)を読み取る月読(つくよみ)。その人の一番心に残っているメッセージが時には花に、ガラスに、絵に、温度に--とにかくさまざまな形をとって表れる。 婦女暴行事件、女子大生殺傷事件(勝手に命名)とさらなる殺人事件に放火事件。加えて過去の事件や別の事件がからまる事件づくし。残る月導と月読が事件に光を与えるのか――。 良かった点は普段あまり推理はせずに本を読むのだが(例外はあるが)、この本では個々の事件がとてもわかりやすく描写されているため、整理しやすくて、探偵的な気分を味わえたことだ。今現在「○○という事件と、△△という事件と、××という事件があって」などと。これは太田氏の巧さだろう。きっとこれ別の作家先生が書いていたら、「難しいですよ」というミステリになってただろうな。それをそう思わせないのが太田氏の偉大さだ。逆に、それによって物足りなさは少し残ったのだが。 面白いのが世界観。月読研究に莫大な資金が投入された結果、科学技術の進歩が大幅に遅れ、人類はまだ月に到達していないというのだ。そのほかにも家電なども全然充実していない。携帯電話だってない! これによって、現代推理小説のメカの役割を排除したのだと思うと、本筋にはかかわらないことだが「これから」を期待してしまうのだ。続編が実際にあるのだが(未読)、書くときに便利だろうな、と。 またファンタジーというより幻想小説的な印象を抱いた。両者のボーダーは言及しないが、月読という「不思議な力」により解決はしないのがいい。ヒントにはなるが(ならない時もあるが)、決定打にはならないのが好感が持てた。個人的にファンタジーを敬遠する理由はここらへんにあるから。またどうして幻想小説的か、と思ったかというとなんとなく泉鏡花を思い出したからだ。うん、なんでだろう。 納得できないのが動機と結末。 なんていうか理解できない。いや、わかっているのだが、納得できないのだ。結末というか真相がわかって以後の処遇がどうにもぼかされているような気がしてちと不満。 太田氏では今のところ「甘栗と金貨とエルム」が一番だ。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
続編を先に読んでいたが、やはりこの設定は好き。人が亡くなると月導があらわれる。 いくつかの事件が複雑にからんで、他の事件の動機になったり手掛かりになったり。 でもクライマックスで盛り上げておいて、双子でしたっていうオチ?はちょっと…。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ネタばれあり 月読-現れた月導を読む能力を持つ人。月読師として生計をたてる人間は昨今少なくなっているらしい。 月導-人が死に際に強く想った事、気にしていたことがどこかに、何れかのかたちで現れる現象。発生する現象と死者との因果関係及び月導の法則性は解明されていない。 従姉妹を殺した犯人を探す刑事。彼は殺された従姉妹の部屋の隣に住む一人の月読と知り合い、彼が探している養父の捜索に協力する。 また、己が養子であることを知った高校生は自分の進路で喧嘩をする養父母に挟まれ、悩んでいた。 全く接点のないふたりだけど、所々で関わってる。 正直養父が失踪した理由とか納得できないんだが、月導と月読の関係は面白いと思った。
Posted by
読み終わった方なら、巻末の解説とカブるレビューだと感じるところもあるかもしれませんが、以下は私の素直な感想です。 タイトルでもある『月読』のいる世界は、本の裏表紙に書かれているあらすじから想像していたのとは違い、ある意味ファンタジーでした。 パラレルワールドと言った方...
読み終わった方なら、巻末の解説とカブるレビューだと感じるところもあるかもしれませんが、以下は私の素直な感想です。 タイトルでもある『月読』のいる世界は、本の裏表紙に書かれているあらすじから想像していたのとは違い、ある意味ファンタジーでした。 パラレルワールドと言った方が正しいかもしれません。 例えるなら、アニメ第1期の『鋼の錬金術師』と発想が似ていると思います。 違う可能性で発達した文明に因って構成されている世界。 私はそれを知らずに心霊物のオカルト探偵系かと勘違いしたまま読み始めたので違和感がありましたが、現実とは異なる現実的な世界としてすぐ物語に入り込めました。 ただ難を言えば、老若男女問わず、早計な人間ばかりが出てきます。 これを人間らしさと言うには愚か過ぎやしないかと思いますし、少々ご都合主義に感じる部分もありました。 しかしハッとさせられるリアルが散りばめられているのも確かで、また心理描写が丁寧な為、後味は悪くありません。 朔夜さんと河井刑事が緩衝剤になっているからかもしれないなあ。 二人が会話している時は、こっちまで同じ香ばしい焙じ茶を飲んでいるかのような安心した気分になれます。 次々と増える登場人物や伏線に追い付けないということもなく、また分厚いページ数も展開の妙で飽きさせません。 帯に「青春小説です」と書店店員さんのコメントが書いてありました。 生まれてから死ぬまで、死んだ後、生まれる前、全てをひっくるめて「青春」と言える、この本はそんな本です。 これから続編の『落下する花 月読』を読むのが楽しみです。
Posted by