戦後日本政治と平和外交 の商品レビュー
戦後の日本外交について再度捉え直し、いかにして平和外交は展開されて来たのか再構築する本。正直、日本史嫌いで日本政治についてはワイドショー並の知識しかなかったので戦後の日本外交史については興味深い読ませて頂いた。特に保守本流がむしろ経済発展と戦後の日本復興を優先し、それに専念する...
戦後の日本外交について再度捉え直し、いかにして平和外交は展開されて来たのか再構築する本。正直、日本史嫌いで日本政治についてはワイドショー並の知識しかなかったので戦後の日本外交史については興味深い読ませて頂いた。特に保守本流がむしろ経済発展と戦後の日本復興を優先し、それに専念することで9条の原理が守られて来たのだとする指摘は興味深かった。よって高度経済成長を終えた80年代には、中曽根らによる国軍論と憲法改正が見られるというのである。確かに、現・自民党の加藤などは宮沢系列のリベラリストと言われるが、その加藤が「真の戦後自民党の保守本流は自分たちだ」と言っているのを想起した。この論理で言えば、加藤らは確かに戦後自民党の保守本流の流れを汲んでいるのかもしれない。 9条や平和外交というとどうも安保闘争崩れの人々の「青春」の匂いを感じるが、本書では各論者とも最後の「まとめ」を除けば、ほとんど一定の学術作業に専念しており(無論、安保時代の人が進藤栄一くらいしかいない事もあるだろうが)、「うさんくささ」やお得意の「運動論」はほとんど出て来ない(ご多分に漏れず進藤氏は「運動」について触れているが)。その意味で、本書は論文集という割には7割型質の良い論考が集まっており、イデオロギーをまとった書籍ではない。戦争を経験せず、その体験談も聞く事もなくなった我々の世代は、怖いもの見たさでか、それとも単純にヌルさの中で感覚がマヒし、何も知らずに右傾化する傾向があるが、そんな人々に是非余計な先入観なく読んでほしい。個人的には、祖父が満州で戦い、シベリアに抑留された人間なので、政治学的方法論としてリアリストであっても、平和を望みこれを守っていかなければならないと思っている。祖父母の生きた時代を無駄にしないことは大切な事である。
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