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無能な者たちの共同体 の商品レビュー

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2011/07/13

共同体論を銘打ちつつも、ハイデガーやベンヤミンをひきつつ、哲学的にかなり深い論考を展開している。 しかしその一方で、従軍慰安婦問題や東欧内戦などに言及した社会批判がみられ、しかもその立場は一貫して弱者側から鋭く矛盾を突くかたちであり、しばしば心打たれる。哲学的議論がいくらかか展開...

共同体論を銘打ちつつも、ハイデガーやベンヤミンをひきつつ、哲学的にかなり深い論考を展開している。 しかしその一方で、従軍慰安婦問題や東欧内戦などに言及した社会批判がみられ、しかもその立場は一貫して弱者側から鋭く矛盾を突くかたちであり、しばしば心打たれる。哲学的議論がいくらかか展開されたのち、ふいに突然と社会批判があらわれることも、また効果的に作用して、わたしたちの心に訴えかける。 文体が非常に独特であり、さらに著者の哲学-政治の世界観もかなり独特であるため、好きか嫌いかは意見が分かれるところであろうが、私はとても文体・世界観ともに好きだし、気に入った(借り物なのだが、返すのがもったいないくらい)。 難点は、哲学的議論に慣れてないので、なかなか読み進められず、また全体を通しての理解度も半分程度にとどまってしまったこと。 しかし、それでもこの世界観にたゆたうのがとても心地よかったので、楽しく読み通すことができた。 以下、本文より引用(P.116)。 「(前略)…現在の共同体をめぐる議論の根底にあるのは、このような恥と怒りの感情であるということである。移民が、失業者が、難民が捨て置かれ、死んでいくこの社会、この世界の一員として、それを恥じ、怒る者たちこそが共同体を思考する者たちなのである」 共同体論の本質をついているような気がします。

Posted byブクログ