早島鏡正著作集 第3巻 浄土教思想論 の商品レビュー
親鸞の思想が、釈尊の思想や中国浄土教をどのように継承し、そこに仏教の本質がどのようなしかたで受け継がれているのかといった問題を考察している論文などを収録しています。 著者は、たとえば渡辺照宏の仏教理解に示されるように、「阿弥陀仏信仰や再訪浄土信仰は本来の仏教には存在しない」とい...
親鸞の思想が、釈尊の思想や中国浄土教をどのように継承し、そこに仏教の本質がどのようなしかたで受け継がれているのかといった問題を考察している論文などを収録しています。 著者は、たとえば渡辺照宏の仏教理解に示されるように、「阿弥陀仏信仰や再訪浄土信仰は本来の仏教には存在しない」という見解が広く語られていることに触れたうえで、経典のテクストのみを見ているだけでは読み取ることのできない仏教の本質があるのではないかと論じています。経典は仏教思想の一表現であり、仏教徒の宗教生活の一端を示すものだと著者はいい、さらに経典としてのこされることのなかった一般大衆の信仰史のなかにも仏教は生きていたのではないかといいます。 そのうえで著者は、「仏教は念仏である」という年来の主張を提出しています。宗学においては「念仏は仏教である」ということが、いわばドグマティックに主張されていたのに対し、著者は仏教の本質を求道者としての釈尊のすがたに見いだし、目的であるとともに過程でもある「道」への参究が、信心の行者の宗教である浄土教を特徴づけており、それゆえ「仏教は念仏である」と述べています。 専門的な論文が多く、著者の文章にしてはやや難解に思えるものもすくなくありませんでした。それでも、著者の仏教理解のアウトラインにかんしては、明瞭な主張が示されており、興味深く読みました。
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