リベラルな多文化主義 の商品レビュー
従来相反すると見られてきたリベラリズムと多文化主義を両立させようとする政治理論に着目しつつ、その両立可能性と妥当性を検討する研究。第一部では両立可能性が検討されるが、結論として、リベラリズムは文化の差異を考慮して文化保護政策を正当化できるし、その際に文化の内在的価値に訴えることな...
従来相反すると見られてきたリベラリズムと多文化主義を両立させようとする政治理論に着目しつつ、その両立可能性と妥当性を検討する研究。第一部では両立可能性が検討されるが、結論として、リベラリズムは文化の差異を考慮して文化保護政策を正当化できるし、その際に文化の内在的価値に訴えることなく正当化できるという点で国家中立性の要求も満たすことができるとされる。第二部ではそのような「リベラルな多文化主義」の論証の妥当性が検討される。従来の論証において機能してきた根拠を「自律」、「公正」、「自尊心」に区別したうえで、自尊心に依拠した論証が最も妥当だとされる。ロールズ、ドゥオーキンといった人々によって洗練されてきたリベラリズムに依拠しつつ、その中では無視されているように見えがちな文化の問題をその枠内にうまく取り込み、正当化の論理を組み立てていると思われる。少数派の文化保護という政策目標の重要性が失われることは今後も無いと思われる点を踏まえると、政策的議論の叩き台として格好の研究ではないかと思われる。
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