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Y氏の終わり の商品レビュー

3.8

10件のお客様レビュー

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2018/07/06

「Y氏の終わり」(スカーレット・トマス : 田中一江 訳)を読んだ。 それを読んだら死ぬと言われている幻の書「Y氏の終わり」を偶然見つけた主人公が…。 ホラーではないからね。哲学や神学や物理学やそういったものをひとつ鍋でグツグツ煮込んだカオスの旨いスープを味わうとでも言おうか。

Posted byブクログ

2017/11/16

これは途中まで読み進めると、どんだけすごい小説になるんだぁ!という期待を抱かせる。だけど、あらら、途中で何かが足りない!と気がつく。という、ちょっと残念な一冊。まぁそれでもかなり面白いですので一応紹介いたします。設定はちょっとベタなSF風なんですが、哲学的な問いかけに満ちていて興...

これは途中まで読み進めると、どんだけすごい小説になるんだぁ!という期待を抱かせる。だけど、あらら、途中で何かが足りない!と気がつく。という、ちょっと残念な一冊。まぁそれでもかなり面白いですので一応紹介いたします。設定はちょっとベタなSF風なんですが、哲学的な問いかけに満ちていて興味深い。 主人公は科学雑誌にコラムを書いたりしていた元ライターの女性アリエル。彼女は最近知り合った英文学の教授バーレムに誘われ、大学院生として「Y氏の終わり」という19世紀に書かれた小説を研究することになる。 その本は幻の本と言われていて、確認されているのはドイツの貸金庫に保管されている一冊だけという稀覯本。だから読んだことがある人はほとんどいない。そしてその本には呪いがかかっている、という伝説もある。その本を読んだものはすぐに生命を落とすのだという、かなり怖い伝説。 そんな奇妙な本を書いた作家トマスEルーマスを研究している数少ない人間が、彼女を誘った大学教授バーレム。アリエルはバーレムの指導を受けつつ研究を始めようとしていた。しかしバーレムは突然失踪する。 その後、偶然にもアリエルは世界に一冊しかないという「Y氏の終わり」を手に入れて読み始める。想像以上の内容に引き込まれる。物語の中でY氏という男はある薬を飲むことにより、他人の頭の中にはいりこむことができるようになるという話。そしてその薬の調合方法はその本には書いてある、はずだったのだが、その該当するページだけが切り取られている。 彼女はそのページがどこにあるのかと探す。そのページは失踪したバーレムの蔵書の中に挟み込まれていた。彼女は薬の調合を試してみる。薬を飲むと彼女は意識を失う。目覚めたときには、どこかで見たことがあるような、でも思い出せない風景の街角に立っていた。そこはなんと他人の頭の中の心象風景だったのだ・・・・。 というような感じでストーリーが続いていきます。この設定だけ読むとなかなか面白そうな感じがしませんか。まぁ自分的にはこの設定ならもっと面白くなったんじゃないのか!という感じでこの後話は続いていくわけですが、実はこの本の肝は、そういうエンタメとしてのストーリーの面白さがメインの小説ではないんだろうなぁという気もします。 といいますのは、作品の中で登場人物たちが議論する哲学的問答がめちゃくちゃ面白いんですね。僕は詳しくはありませんが、サミュエル・バトラー、ハイデッガー、デリタあたりの言葉を引用したり、新たな解釈として掲示されている「ポスト構造主義物理学」なるものの考え方が興味深い。 例えば「私たちを生み出すのは過去ではなくて未来だったら・・・」みたいな話ですね、意味不明だけど面白い(笑)ひとつ引用しましょうか。 ↓ 「さて物質はどのように作られるのだろう。思考と物質が同じものでできているとしたら、物質はどんなふうに作られるのか。私は物質とその正体について考えた。ただのクオークと電子だ。クオークと電子の組み合わせが、ゼロとイチとの組み合わせと、どう違うのかを考えた。」 ↑ これって、ゼロとイチの組み合わせで「思考」も「意識」も作れてもおかしくない、って考え方ですよね。と、先週のAIについて考えていたときに僕の意識は戻りました(笑)というような話を聞いてオモシロそー、という方にはオススメの超傑作になりそこねたなぁという感想を持った一冊です。

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2011/05/05

全く新しい視点からタイムトラベルをとらえているという点でも興味深い、非常に変わっていて面白い考え方の物語だった。

Posted byブクログ

2011/03/21

図書館で借読。 こういう設定は大好きだ。 呪われているという伝説の古書をめぐってのお話。 最後まで気になって一気に読めた。

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2010/06/16

もう少しシンプルなストーリーでも良かったかな。あと、翻訳に気になるところがあったのが残念だった。でも、それなりに刺激的で楽しめたので、いつかメモ帳片手に再読しよう。

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2010/05/10

こういうのは嫌いじゃないです。 物語が動き出すまでがちょっと冗長な気がしますが、あとは一気に読ませます。 扱ってるテーマは哲学的で本気で考えるとかなり難しいですが ストーリーは純粋にエンターテイメントとして楽しめます。 サヴァンの子たちの役回りには少々苦笑いしつつも、まあ小説なの...

こういうのは嫌いじゃないです。 物語が動き出すまでがちょっと冗長な気がしますが、あとは一気に読ませます。 扱ってるテーマは哲学的で本気で考えるとかなり難しいですが ストーリーは純粋にエンターテイメントとして楽しめます。 サヴァンの子たちの役回りには少々苦笑いしつつも、まあ小説なので。 気持ち的には星3.5くらいなのですが四捨五入で(笑)

Posted byブクログ

2009/10/07

大学院生のアリエルは、指導教官のバーレムが行方不明になったことに戸惑う。バーレムしか研究していない19世紀の作家ルーマスの研究のために大学に来たばかりだったのだ。 しかも大学の研究棟が地下の構造のために崩落。 もう存在しないと言われた奇書「Y氏の終わり」を入手したアリエルは、人の...

大学院生のアリエルは、指導教官のバーレムが行方不明になったことに戸惑う。バーレムしか研究していない19世紀の作家ルーマスの研究のために大学に来たばかりだったのだ。 しかも大学の研究棟が地下の構造のために崩落。 もう存在しないと言われた奇書「Y氏の終わり」を入手したアリエルは、人の思考の中に入り込む事が出来るようになるが、謎の人間に脅かされ…大学の研究者達や、独り身の私生活の描写がやけにリアル。 ミステリ的要素もある途方もないSF、哲学的ともいえる展開で驚天動地。

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2009/10/04

この本は、麻薬です。危険極まりないけれど、一度身をゆだねたらその奇妙な心地よさから抜け出すことは困難。まさしく本書のトロポスフィアさながら、この本そのものが麻薬的な魅力を備えています。 わたしは、翻訳者を目指していながら、翻訳書は苦手でした。翻訳の文章の硬さというか説明的な表現...

この本は、麻薬です。危険極まりないけれど、一度身をゆだねたらその奇妙な心地よさから抜け出すことは困難。まさしく本書のトロポスフィアさながら、この本そのものが麻薬的な魅力を備えています。 わたしは、翻訳者を目指していながら、翻訳書は苦手でした。翻訳の文章の硬さというか説明的な表現のせいで作品世界に入り込みづらいから。この本も、読み始めた頃は表現が気になってしまい、なかなか集中できなかった。一文の中に「〜ので」が二度も使われていたりするし、これは最後まで気になっていたのだけど「起こる」とすべきところがほとんど「起きる」になっていたりして。 しかし、いつのまにかそんなことは超越していた。ルーマスやバーレムやアリエルのように、気付いたらわたしもこの本に魅せられてしまっていました。 とにかくあらゆる学問が、この一冊に集約されています。『Y氏の終わり』という本をきっかけに、トロポスフィアと呼ばれる意識の世界に入り込み、人に限らずあらゆる生き物の頭の中に時を超えて入っていく(=ペデシス)という、すごくスピリチュアルな小説でありながら、科学的で、数学的で、哲学的で、宗教学的。ときには難解な議論が展開されます。 でも全体として見ればやっぱり英米文学であり、アポロ・スミンテウスなんていうちょっとヘンテコリンな神様も登場しちゃう、ファンタジックなSFミステリであるのです。帯に<こんな小説、読んだことがない。世界が驚いた話題作>とありますが、その通り、とても斬新な作品です。 ラストは、この本らしいといういうべきでしょう、読み手を考えさせます。これは様々な解釈が可能ですね。 ただもうちょっと書いて欲しかったなぁと、読後は思いました。現実の世界(と言ってもどちらが現実なのかわからないんですが)にいるアリエルや、バーレムとルーラはその後どうしたのか、そもそもアダムはどうなっていたのか、かなり気になります。でも今思うと、その辺も読み手が想像して楽しむのがいいのだ、と思います。 とにかく酔えます。どっぷり浸かってしまって、スリルいっぱいなのに気持ちよくて、なかなか出られません。おもしろい貴重な体験でした。 海外の作品って、日本人にはない価値観を学ぶことができるんですね。翻訳者を目指すなら、勉強のために翻訳書をたくさん読むようにとよく言われるんですが、先に書いた理由であまり読んでいませんでした。わたしはすごくもったいないことをしていたような気がします。これからはもっといろんな海外作品を読んでいこうと思います。 ももさんが紹介してくださらなかったら、この本を読むことはなかった。それを思うと、感謝せずにはいられません。ももさん、ありがとうございました。そしてこれからもよろしくデス。 読了日:2008年2月26日(火) ◎原書:?The End of Mr. Y? by Scarlett Thomas

Posted byブクログ

2009/10/04

読みずらい、しかし何故か最後まで読めてしまう不思議な本です。 精神世界の描写はイメージにぴったり・・

Posted byブクログ

2011/08/07

新聞書評で絶賛されていたので読んでみた。多宇宙解釈、ビッグバン、ハイデッガーなど、登場人物が色々と語るが、ペダンチックで上滑りな印象しか残らないし、ストーリー的にもまとまらない。どうとでも取れる話。(あらすじ)読む者が全員死んでしまう呪いの本、「Y氏の終わり」をたまたま見つけた主...

新聞書評で絶賛されていたので読んでみた。多宇宙解釈、ビッグバン、ハイデッガーなど、登場人物が色々と語るが、ペダンチックで上滑りな印象しか残らないし、ストーリー的にもまとまらない。どうとでも取れる話。(あらすじ)読む者が全員死んでしまう呪いの本、「Y氏の終わり」をたまたま見つけた主人公アリエルは、そこに書かれてあるホメオパシーの秘薬の処方を知る。レシピに従い、調合した薬は、飲んだ者の意識を他の人・動物の意識にジャンプさせる力を持っていた。秘薬の力を追い求める元CIA職員に命を狙われることになるが、ネズミの神様が出てきて一命を取りとめる。ネズミの神様の依頼で、20世紀初頭にジャンプし、実験用マウスの祖先を助け出した後、アリエルは恋人のアダムとともにさらに時代を遡り、樹木が一本生えている庭園(エデン?)にたどりつく。

Posted byブクログ