消えたカラヴァッジョ の商品レビュー
ルネサンス絵画と近代絵画を橋渡ししたのがカラヴァッジョだ。 そのあまりにリアルで、あまりに庶民的な聖画は、当然、激しい毀誉褒貶の嵐を招いた。 人気絶頂期に人を殺め、各地を逃亡しながら、生きるためにそれぞれの地で描き、最後はのたれ死ぬ。 イタリア各地に残された彼の傑作の数々は、全...
ルネサンス絵画と近代絵画を橋渡ししたのがカラヴァッジョだ。 そのあまりにリアルで、あまりに庶民的な聖画は、当然、激しい毀誉褒貶の嵐を招いた。 人気絶頂期に人を殺め、各地を逃亡しながら、生きるためにそれぞれの地で描き、最後はのたれ死ぬ。 イタリア各地に残された彼の傑作の数々は、全て逃亡の最中に描かれたのだ。 長らく歴史の闇に沈んで評価されることのなかったこの画家が再評価され、ダ•ヴィンチと並ぶ天才画家として持て囃されるようになったのは20世紀に入ってからのことだった。 今や古典の仲間入りをした彼にはかつて存在したが失われた名画がある。 それが「キリストの捕縛」だ。 その幻の名画が、今もどこかに息を潜めて存在している! まだ見ぬ傑作を追い求めて演じられる美術界の物語。 古文書を通じて幻の絵画に接近していく女子学生、 アイルランドの鄙びた修道院で幻の作品を発見してしまう絵画修復士。 偶々ウィーンに出張し、美術史美術館でカラヴァッジョの「ゴリアテの首を持つダビデ」を見て、いささかショックを受けた直後に本書を読む。 本書を読む「レディネス」は万全だった。 美術史全集を引っ張り出してきてカラヴァッジョの作品を眺めたが、当然「キリストの捕縛」は載っていない。 いつか、実物を見てみたいものだ。 作品は18世紀後半には失われ、200年間行方不明だった。 再発見されたのは1990年。 アイルランド、ダブリンのイエズス会の修道院に実は1930年代から飾られていたのだ。 しかし、それがカラヴァッジョの失われた名画とは誰も思わなかったのだ。 何故なら、その作品は複製と考えられていたのだ。複製と考えられていたのは、もっと時代を遡る。 それはその作品が修道院に寄贈される以前からなのだ。 元々の所有者であるマッティ家が、所有する時代から複製と考えられていたのだ。 それでは、その絵画を毎日眺める修道士たちが複製と思うのは当然だ。 この傑作は、「失われた」のではなく、複製ととみなされることで姿を隠していたのだ。 修復士がニスを落とすと、素晴らしい絵画か現れた。 そして女子学生が、古文書からイタリアのマッティ家がカラヴァッジョに注文した事実を見出した。 こうして、複製画は、ホンモノとなった。 カラヴァッジョの絵画は教会や礼拝堂に描かれた聖画が多い。 堂内の聖画は壁に直接描かれることが多い。 だが、「キリストの捕縛」という聖画は、失われた。 どうしてなのか。 2018年公開の映画「盗まれたカラヴァッジョ」ではマフィアが、教会堂から「キリストの降誕」を盗みだすシーンが描かれていた。 カラヴァッジョは壁画を苦手としていて、多くはキャンバスに描いていたのだ。 だから、簡単に移動させることができたのだ。
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失われた絵がどのように再発見されるのかというプロセスを窺い知れる一冊。 もし、その発見の当事者になっていたらそれは相当にスリリングだったんだろうなぁ。 カラヴァッジョファン必読。
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読んでも読んでもページ数が進んでいかないような錯覚にとらわれるが、いつの間にか読み終わってた。 カラバッジョの伝記ものにも読めるし、若き美大生の謎解き物語にも読めるし、修復美術のノウハウ集にも読めるし、美術界隈の金と名声の奪い合いにも読めるし、ほかにもえーとイタリアとエゲレスでの...
読んでも読んでもページ数が進んでいかないような錯覚にとらわれるが、いつの間にか読み終わってた。 カラバッジョの伝記ものにも読めるし、若き美大生の謎解き物語にも読めるし、修復美術のノウハウ集にも読めるし、美術界隈の金と名声の奪い合いにも読めるし、ほかにもえーとイタリアとエゲレスでの遠距離恋愛のエッセンスもあり、薄い割にこってりしてて、おもしろかった。
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まったくジャンル違いのノンフィクション。 最初は専門用語などイメージがわかないものもあり、入り込んでいきにくいが、イタリアの風景描写をイメージしながら読んでいるだけでも楽しめた。 絵画1枚が本物だと公認されるまでのドラマを垣間見られるのも、別世界の話なので、それはそれで興味深かっ...
まったくジャンル違いのノンフィクション。 最初は専門用語などイメージがわかないものもあり、入り込んでいきにくいが、イタリアの風景描写をイメージしながら読んでいるだけでも楽しめた。 絵画1枚が本物だと公認されるまでのドラマを垣間見られるのも、別世界の話なので、それはそれで興味深かった。
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「消えたカラバッジョ」は、そのノンフィクションが持つスリルと、カラバッジョの生活、芸術性を一緒に楽しめて、とってもお得?でした。カラヴァッジョがとても好きになった本。いつか、ダブリンに行って、この目で見たいものです。
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カラヴァッジョ『キリストの捕縛』が発見されるまでの、ルポタージュ小説(?)。丹念なインタビューに基づく発見までの過程再現が、スリリング!!
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