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シーボルト 日本植物誌 の商品レビュー

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2023/06/22

【連載第34回】フクロウ館長イチ推しの本 『シーボルト日本植物誌』 ちくま学芸文庫, 2007.12 「今年は来崎200周年です」 「誰の?」 「シーボルト」 「鳴滝塾のシーボルト?」 「ええ」 にっこりとうなずくシーボルト記念館(長崎市)の館長。 「知りませんでした」と、苦...

【連載第34回】フクロウ館長イチ推しの本 『シーボルト日本植物誌』 ちくま学芸文庫, 2007.12 「今年は来崎200周年です」 「誰の?」 「シーボルト」 「鳴滝塾のシーボルト?」 「ええ」 にっこりとうなずくシーボルト記念館(長崎市)の館長。 「知りませんでした」と、苦笑いする「新・鳴滝塾」塾長の僕。 僕は県内16の病院などで組織する県医師臨床研修協議会「新・鳴滝塾」を創り、医師不足を解消するために塾長として10年以上奔走してきた。しかし、1824年に「鳴滝塾」を創り、高野長英ら多くの日本の若者を指導したシーボルについては、ほとんど知らなかった。遅ればせながら、ゴールデンウィーク中に3冊一気読みした。                               1冊目は『シーボルト日本植物誌』(ちくま学芸文庫, 2007年)。シーボルトの「日本植物誌」に掲載されている植物画150図版を縮小収録している。カラー版なので、鮮明な色と緻密な描写の花がページを飾る。もちろん、シーボルトの妻「お滝さん」にちなんで「otaksa」と名付けられたアジサイも収載されている。放映中の朝ドラのモデル・牧野富太郎にも影響を与えた、シーボルトの植物学者としての側面を描いた本である。 2冊目の「シーボルト 長崎に魅せられた男」(季刊〈樂〉34号, 2016年)は、雑誌なので読みやすい。シーボルト事件にまつわる「スパイ説」が面白い。また、故・越中哲也先生が「鳴滝」の地名の由来を解説。もともとは「平井手」と呼ばれた地を、奉行所が「鳴瀧」と改めたそうだ。 3冊目は『シーボルトの日本報告』(平凡社, 2009年)。シーボルトは筆まめであった。本国や長崎奉行への連絡だけでなく、医学を教えた弟子たちへ多くの手紙を送った。それを翻訳し、解説した本である。 彼は生物学、民俗学、地理学に関するものを何でも収集していた。「蝦夷産の熊」、「琉球産の鳥」、「石、230種」などの記録を読むと、「こんなものまで!」と笑いがこみ上げてくる。 一番面白かったのは、シーボルトはある時期、上司であるオランダ商館長と仲が悪かったようで、「貴殿の失礼なやり方」、「貴殿の責任」などと痛烈に批判している。さらに、びっくりすることに商館長の悪口を、その上の上司(植民地総督)へ「あいつは、不愛想で、無法で、日本人に評判が悪い」と、告げ口の手紙を送っている。そこまでやる?シーボルト!(笑)。とにかく、並外れた能力と胆力を持った稀有な人物ということが実感できる本である。                        冒頭のシーボルト記念館長との会話に戻ろう。 「来崎200周年記念事業の一環として何かやりましょう!」と館長さん。 「もちろんです!」と僕。 そこで、新・鳴滝塾主催の第55回日本医学教育学会で、シーボルトに関する市民公開講座を開催することになった。7月28日(金)。詳細はポスターをご覧ください。 https://app.box.com/s/en2c1dhik4gp6jmjy0raogavid8o382d ご来場お待ちしております!ホ~ホッホッホ!次回をお楽しみに。 ▼第55回日本医学教育学会大会 https://www.c-linkage.co.jp/jsme55/ ※以上は2023年5月21日掲載の長崎新聞記事を再編集したものです。

Posted byブクログ