新編 燈火節 の商品レビュー
「倹しくとも、こころに灯をともすことを忘れぬような素敵なエセー」などと今朝呑気に評したが、終わりに梨木香歩さんの解説を読み、うまく表現できぬまま胸のうちに埋もれてあったものにやっときちんと思い当たって、「ああ」と嘆息した。こころに灯をともす、そのために片山廣子がどれだけの注意を払...
「倹しくとも、こころに灯をともすことを忘れぬような素敵なエセー」などと今朝呑気に評したが、終わりに梨木香歩さんの解説を読み、うまく表現できぬまま胸のうちに埋もれてあったものにやっときちんと思い当たって、「ああ」と嘆息した。こころに灯をともす、そのために片山廣子がどれだけの注意を払い、強い意志のもとに生きてきたか。いいわけにもならないが、たぶん、時代がちがうからふらふら読んでしまったのだろう。そのことをとても悲しく思うとともに、「文学者の眼」と「現実者の眼」を両方とも立たせ、噛み締めて生きながらエセーを残した彼女を尊敬する。彼女の文学をときたま青空文庫で読む(ちくま文庫は見当たらないから!)。土地がこんなに隔たり異なっているというのに、その場に足がついた在り方は、梨木香歩さんの書く「スケールを小さく」のことをよく思い起こさせる。
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芥川龍之介の「越し人」といわれた片山広子の随筆などをまとめたもの。 孤高の才媛などと評された作家が、夫や息子の死、敗戦をへて晩年に至る折々の心境をつづっています。
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静かで内省的だが、世間に背を固く向ける過敏さではない。理知的でおっとりとした女性の文章だ。生活の一瞬一瞬と時の流れ両方を大切にしている有り様が尊敬と憧れを持たせる。小雨の降る日、温かい紅茶を居住まいを正しつつもくつろいで飲む時間、手に取りたい、そんな乙女的憧れエッセイ。
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