自然法と国家学講義 の商品レビュー
ヘーゲルによるハイデルベルクでの「法哲学」講義の筆記録である。ヘーゲルは、『法哲学綱要』においては明確に君主制を支持しており、これが一貫したモチーフなのか、それともカールスバート決議以降の苦渋の選択にすぎないものなのか、ということが解釈史上は問題となってきた。そのため、ヘーゲルの...
ヘーゲルによるハイデルベルクでの「法哲学」講義の筆記録である。ヘーゲルは、『法哲学綱要』においては明確に君主制を支持しており、これが一貫したモチーフなのか、それともカールスバート決議以降の苦渋の選択にすぎないものなのか、ということが解釈史上は問題となってきた。そのため、ヘーゲルの法哲学が根本的な部分で君主制原理に基づくのか、民主制原理に基づくのかという問題は、『綱要』以外でのヘーゲルの考え方の検証も要するものである。そのような点を踏まえると、この講義録の独特の位置づけが浮かび上がる。内容的には、その後の『綱要』とほぼ変わらない。ということはつまり、ヘーゲルは基本的に「立憲君主政」論者であり続けたということである。とはいえ、これがヘーゲル法哲学における「君主制原理」の存在を支持する事態なのかどうか、というのは、ヘーゲルにおける「憲法」概念の詳細な検討なども含めて、これからも研究が必要になると思われる。
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