デス・シーン死体のある光景無修正 新版 の商品レビュー
ロサンゼルス市警の一警官が趣味で収集した死体写真集。資料から発展し、死の現場を生々しく再現する。外的要因による死は偶然により起こるため、収められた写真には偶然の美が描かれている。
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乾いた砂のうえに、ちょうど顎下からきりとられた、顔だけの死体が置かれている。置かれているのではなく、正確にはころがっているのだが、中央に映るその顔はまっすぐまえをむいており、わずかも傾いておらず、またねむっているような、薄目をあけてぼんやりとなにかをみているような、いずれにせよ幸...
乾いた砂のうえに、ちょうど顎下からきりとられた、顔だけの死体が置かれている。置かれているのではなく、正確にはころがっているのだが、中央に映るその顔はまっすぐまえをむいており、わずかも傾いておらず、またねむっているような、薄目をあけてぼんやりとなにかをみているような、いずれにせよ幸福そうな表情をうかべているので、交通事故により切断された頭部だと一瞬のうちには判別しにくい。死体からは血がながれて砂地に沁みをつくっているが、白黒写真のためそれも影にしかみえず、オブジェか絵画のようだ。被害者はわかい白人男性。ととのった顔をしている。裏表紙にプリントされたこの死の場面は、しかし、まぎれもなく現実であって、それはほかの角度から撮られた、3枚の写真に、残酷なほど鮮明に映しだされている。一枚目は大破して横転した車と、その横につっぷした首無し死体、そして後方の道路に置かれた、いやころがった、被害者の端正な横顔だ。二枚目は胴体だけを撮影したもので、三枚目は首の切断面のアップ。やはり切断面はなまなましい。だが、すべてが映り込んだ一枚目の写真はもっと衝撃的だ。血なまぐさい事故現場と、そこからすこしばかりはなれた場所にある、まるで手前の惨劇とは無関係とでもいうような、穏やかな顔。 それは裏表紙のものより、ある意味シュールで現実ばなれしているが、オブジェのようでも絵画のようでもなかった。そこにあるのは凄惨な現場写真であり、映っているのは破壊された人間だ。『死体のある光景』は、全編がこのようなシーンで埋めつくされている。ここにはあらゆる死の場面がある。掲載されている写真は、ロス市警殺人捜査課の刑事、ジャック・ハドルストンが所蔵していたもので、彼の死後、その膨大なスクラップからこの本が編集、刊行されたそうだ。解説はキャサリン・ダン。本にはキャサリン・デューンと表記されているが、ダンの方が一般的だろう。といっても、他に翻訳されている彼女の本を『異形の愛』以外わたしはしらないのだし、一般的にどうこうといえるほどダンの名が世間に浸透しているかどうか、そもそもわからないのだが。わたしはこの本をダンの解説に惹かれてかった。死体はすきでもきらいでもない、とおもう。ただ、好きな死体写真はある。ブラック・ダリアのしろく艶かしいそれや、遊び飽いてほおりだされた人形のような、ジョンベネのそれだ。内臓が飛び出ているものや大量の血に塗れているもの、腐敗や破損、欠損が激しいものはこのみでない。目をそむけてしまう。 もちろん『死体のある光景』にはそういう写真もおおく含まれている。というか、ほとんどがそのような、はげしく壊れた遺体だ。ダイナマイトの暴発や飛行機事故、散弾銃での殺人や自殺。それらの破損の度合いは尋常ではないし、病気による身体の変形や浮腫、湿疹や斑点なども同様、正視し難いものがすくなくない。狂犬病で死んだ幼女の口は、まるで誰かにこじあけられたかのように不自然にひらき、目は光をうしなっている。顔は正面をむいているが、瞳はどこをみているのかわからない。いや、どこもみていない。一方、うつくしい死体もある。森の木に吊るされた全裸の少女の遺体、ねむるようによこたわる男児の亡骸(男児は母親に殺された。殺害後、母親も自殺)でもごく少数だ。たいていの死体はみにくい。おそろしいしおぞましい(事件、事故に遭って死亡した者のそれなのだからあたりまえだが)そのおそろしくおぞましい写真にそえられた、ダンの解説文がまたなまなましい。傷口にたかる蠅の様子や皮下組織で起こっているであろう腐敗、臭気や湿度までを巧みに描写し、モノクロの画像に色をつけるのだ。読んでいると、変色した皮膚の青やながれでる血液の赤が、そこに浮き上がってくるかのよう。まるでカラー写真をみているみたいな錯覚さえ起こす。 死体ではなく奇形や両性具有者、象皮病患者のスナップ、犯罪者のポートレートもある。脚が6本、尻尾が2本、つまり下半身をふたつもった猫は、生後まもないのかとてもちいさく、奇妙に愛らしい。両性具有者は性器をさらけだしている。が、スカートをたくしあげて男性器をみせている画像は、女装をした中年男のようだ。まったく同じ格好をし、同じ髪型をしたふたりの女性の写真もあった。その下に、ビル・バーバー、レイ・ホール、同性愛者の文字。どうしてここに彼女らが収められたのか定かでじゃないが、1921〜50年代初頭までの事件、事故現場のスクラップなので、きっとそう時代だったのだろう。
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いつか発禁になるかというドキドキ グロ苦手な人は完璧にアウトですが好きな人には是非ともお勧め 凄く勉強になりました
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これはひとつのアートです。 日本ではなかなか見れない光景、でも世界のどこかでは必ず存在している 死と隣り合わせの日常・・・何気ないからこそ現代のアートなのです。
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でも全部白黒なのよね。最近「修正無しバージョン」って 売ってますが要は見にくいんジャン。 ちなみに僕は初期の修正有りヴァージョン。
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