少年志願兵 の商品レビュー
10年以上前に著者の方からいただいた。 読まなければと思いながら雑用に追われていることや軍記や戦記ものへの苦手意識が強いせいで、やっと読破することができた。 柴田さん、ごめんなさい。 特攻隊や知覧に関する本は何冊か読んではいるが、あまりにも辛くてそれからこうした類のものを拒否する...
10年以上前に著者の方からいただいた。 読まなければと思いながら雑用に追われていることや軍記や戦記ものへの苦手意識が強いせいで、やっと読破することができた。 柴田さん、ごめんなさい。 特攻隊や知覧に関する本は何冊か読んではいるが、あまりにも辛くてそれからこうした類のものを拒否するようになっていたのかもしれない。 「知覧の母」も寿命を全うされたと聞く。 時代は移り、物質文明にふりまわされる日々。やはり、ここまでのプロセスを考えると避けて通ってはいけないものの一つに戦記ものがあるのだろう。 『少年志願兵』は著者の16歳陸軍航空学校入学から終戦までの6年間を書いた自伝的小説だ。 少年が軍曹に変化して行く過程が自然なタッチで描かれている。 これを書きながらあの戦争の意味を確かめられたのかもしれない。 読みながら、ある大企業の会長さんが縷々語ってくださった戦場での話が背景となって立体的に伝わってきた。 同じく、航空整備兵だった。 「死ぬことは生きること」会長さんは何度も繰り返された。 死に方を考えることは生き方を考えることだと。 柴田さんは小説を書くために生業としてケーキ屋さんをなさっている。 どんなケーキを作っていらっしゃるのだろう。 やさしく控えめなあの方のマニラやニューギニアで戦っている姿は結びつかない。 命を賭けて戦って、帰ってきた母国はエゴが激突する荒野だった。 自分たちは何のために戦ってきたのか。 こんな母国の為に戦ってきたのか。 その虚しさがまだまだ尾を引いている。 そして、それを読む者の胸にも沁みこんでいく。 怠惰な日常生活に溺れていることをいやでも反省させられた。
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