エンジェル・メイカー の商品レビュー
第1次大戦前のハンガリーの片田舎。 助産婦の手引きで起こった大量殺人事件を描く。 実際に起こった「ナジレーヴのエンジェル・メイカー殺人事件」を下書きにしている。 事件の手引きをした助産婦を主人公に据え、彼女の生い立ちをなぞって話が進む。 まじない師の娘に生まれ、他人には受け入れ...
第1次大戦前のハンガリーの片田舎。 助産婦の手引きで起こった大量殺人事件を描く。 実際に起こった「ナジレーヴのエンジェル・メイカー殺人事件」を下書きにしている。 事件の手引きをした助産婦を主人公に据え、彼女の生い立ちをなぞって話が進む。 まじない師の娘に生まれ、他人には受け入れがたい予知能力を持っていたための苦悩。その彼女をすら含めて結束していかざるを得なかった戦争と言う現実。自分たちを虐げてきた男たちがいなくなったことで自由を知ってしまう女たち。 そんなところへ連れてこられたのがよりにもよってイタリア人捕虜たち。もうこれで何か起こらない方が無理という話で…。 「狂気の連鎖(裏表紙より)」って言うより、最初は女たちの反逆のような感じ。 主人公のシャーリも殺人に対して罪悪感を持ったり悩んだりしているし、誰でも無差別に狙うわけではないし。 それが当たり前のこととして村の女性に受け入れられた時に歯車が狂い始める。 事件よりもその軸となったシャーリの人生に焦点を当てている分、残虐性は薄く、むしろシャーリに同情してしまうようになっている。いや、それでも殺人はいけないことだけどね。 「何が起きても受身のままで何もしないでいることに、私は疲れてしまったのよ。」 ラスト近くのシャーリの言葉だけど、とっても重く響いた。 でも、これ。村にやってきた捕虜がイタリア人じゃなかったら少しは事態が変わっていたかもって思ってしまった。
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