エトルリアの微笑み の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
イタリア南部の田舎から癌の治療のため、都会ミラノの息子の元にやって来た老人サルヴァトーレ。 道中、ローマの博物館でイタリアの古代国家エルトリアの遺物「夫婦の棺」を見、刻まれた夫婦の微笑みが心をとらえる。 老人は、男である事や故郷での伝統・しきたりなどにこだわっており、ミラノでの生活は、食事や人、子育ての方法など不満や怒りを生み出すものばかり。 しかし、孫ブルネッティーノが心の安らぎを与えてくれる。 ブルーノのお陰で徐々に他にも心許せる人々と出会うと共に、病気は進行していく。 ブルーノの成長を見守りたいが、人生の終りは近づいていく・・・。 孫や家族、親しい人と関わり、心安らかに最後の時を迎えられるって、とても幸せな事だな。
Posted by
いい本。老人の心に少しも衰えずに残っている熱と、それを孫が受け継いでいるように感じ深く愛していく様が緻密に描かれている。 個人的に感動や愛着の面からも考えて星4。
Posted by
これは本当によかった。 生と死、父と子、祖父と孫、男と女… 色んなことを考えさせられる。 年をとってからまた読みたい。 今とは絶対に違う読み方をするだろう。 30年後にもう一度読むのが楽しみだ。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
昔気質という言葉がある。昔気質の人は世界中どこにでもいて、一昔前の秩序を守って生きている。 そんな老人が、ガンになったため、故郷から離れたミラノの息子夫婦に引き取られる。 主人公の老人は渋々息子夫婦の家に行くが、そこで1歳になったばかりの孫とはじめて対面し、老人は新たなる自分を見出していくのだが、、、、 この小説には、ふたつのイタリアの至宝ともいえる彫刻が登場する。 ひとつは、ローマの<エトルリア夫婦の棺> もうひとつは、ミラノの<ロンダニーニのピエタ> <エトルリア夫婦の棺>は、ローマのボルゲーゼ公園内のヴィラ・ジュリア博物館に所蔵されている。 エトルリアの夫婦が寄り添い寝棺の上で笑まいている彫刻で、博物館の代表的な作品である。 残念ながら、私はボルゲーゼ美術館は訪れたが、そのすぐ近くのヴィラ・ジュリア博物館には行っていない。 主人公の老人は、故郷からミラノに向かう最中、ローマのこの美術館に立ち寄り、<エトルリア夫婦の棺>に心惹かれる。 微笑みながら、死ぬとはどういうことなのか自問自答しながら老人はミラノに向かうのだった。 <ロンダニーニのピエタ>は、老人がミラノに暮らし始めてから、スフォルツェスコ城に行った際に見たもので、元パルチザンの老人は、ピエタではなく別の見方をしていて面白い。 ミケランジェロが死の数日前まで彫っていたという<ロンダニーニのピエタ>は、城内にぽつんと置かれているが、未完成のものだし、立位なので、ヴァチカンのミケランジェロの<サン・ピエトロのピエタ>とは全く違うもので、老パルチザンの視点は斬新だ。 本書は、およそ20年前に書かれ、スペイン国内で大ベストセラーとなり、ヨーロッパ国内でもベストセラーになって一世を風靡したらしい。 経済学者としても著名であり小説家としての地位も確立しているホセ・ルイス・サンペドロの小説著作として、本書は初の翻訳書となる。 この小説は、時を経ても版を重ね続けているらしいが、なんといっても、主人公の老人の魅力がたまらない。 彼のキャラクター魅力を損なわず翻訳するのは、大変なことだっただろう。 そして、現代社会がつきつける悲哀を新しい光をもって明るくしていく老人の最期は、憧憬に値する。 1歳のみずみずしい命と、余命幾許もない老人の命は同じ時間を生きつつもやさしく交わる。 老人が、かわいい赤ん坊を生甲斐にして癒されるという話はよくある。しかし、一風かわったこの老人は、赤ん坊を乳母車に入れ散歩している最中に彼女を作ってしまうし、高名な学者たちとも対等に渡り合う。 笑わされたり、泣かされたり、読者も忙しい。無敵不死のようなスーパーおじいちゃんに、すっかり虜になったころ、読者は悲しい別れを経験する。
Posted by
- 1