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現代音楽を考える の商品レビュー

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2014/02/26

以前図書館から借りて読んだ本書を、購入し直して再読。 かつても感じたことだが、ブーレーズの文章は非常に読みにくい。もしかしたら翻訳も良くないのかもしれないが、恐らく原文自体、持って回ったような言い回しや無意味な気取りなどに充ち満ちており、ブーレーズに文才はないなと思う。 しかし、...

以前図書館から借りて読んだ本書を、購入し直して再読。 かつても感じたことだが、ブーレーズの文章は非常に読みにくい。もしかしたら翻訳も良くないのかもしれないが、恐らく原文自体、持って回ったような言い回しや無意味な気取りなどに充ち満ちており、ブーレーズに文才はないなと思う。 しかし、ブーレーズはドビュッシーやシェーンベルクあたりと同様に文人気質、というか一流の知識人という自覚があって、しかも音楽史上、自分は特別な存在だという自負にあふれている。そうした性格上のいやみさが、冒頭の無意味な一人ダイアローグから明白に現れている。 私はそもそも、ピエール・ブーレーズの作曲はあまり好きではない。聴いていて退屈なのだ。楽譜を見たら凄く精緻で感銘を受けるのかもしれないが、単にリスナーとして彼の音楽に対峙したとき、格別な感動も衝撃も受けた試しがない。 それでも、この本に表明されたブーレーズの思考は精密であり、真剣に読解し、気合いを入れて批判しなくてはならないのだろうと感じている。 どうやら、彼の作曲法思想は、クロード・レヴィ=ストロースの「構造主義」に強く影響されているようだ。音楽要素を幾つかの視点から解析し、表にまとめあげるところなんか、レヴィ=ストロースの流儀そのものである。 ブーレーズは音楽とは芸術であると同時に「学問」である、と語る。 確かに「学問」であれば、レヴィ=ストロースばりの構造主義分析は有効でないとは言えない。ただし、それはそのまま「芸術」の創作行為と合致できるのかどうか、というと、私にはどうも疑わしく思われる。 学問的知解の方法論と、とりわけ音楽のような生理的・感情的な受容の側面がつよい「芸術」の生成手法とは、そう簡単には結びつかないような気がするのだ。 ロマン主義的な「感情」を知的構成によってほぼ完全に駆逐するのがブーレーズの企てなのかもしれないが、それならシュトックハウゼンやヘルムート・ラッヘンマンの音楽の方が面白いし、「感動的」な面をさえ持っている。 だから私はブーレーズのこのような思考に批判的にならざるをえないのだが、私も好きなレヴィ=ストロースの影響圏内にありながら、彼はどこで間違ったのだろうか。 この問題は是非とも解決したいところだが、なにしろ本書はあまりにも読みづらい。そして私も、まだまだ「音楽」について考えを整理できていないのだ。

Posted byブクログ