撃墜(下) の商品レビュー
東西冷戦下の軍事緊張と航空産業の高度技術システムの落とし穴
1983年9月1日未明に発生した「大韓航空機撃墜事件」に係り、下巻である本書においては、大韓航空007便の正規の航行コース逸脱の謎に対する検証と、ソ連による民間航空機に対する撃墜行為に関する分析を、著者が緻密かつ徹底的に行うプロセスが詳述されている。著者は管制やレーダー、気象デー...
1983年9月1日未明に発生した「大韓航空機撃墜事件」に係り、下巻である本書においては、大韓航空007便の正規の航行コース逸脱の謎に対する検証と、ソ連による民間航空機に対する撃墜行為に関する分析を、著者が緻密かつ徹底的に行うプロセスが詳述されている。著者は管制やレーダー、気象データといった第一次資料の入手など広範で深度の深い取材に基づく事実の確認や鋭い分析・研究のほか、専門家を交えたディスカッションによる科学的・実務的な考察などにより、自ら定立した複数多岐にわたる仮説を逐一検証していく方法によって、コース逸脱の謎に一定の結論を導き出している。単なる状況から議論や推論を行うのではなく、その根拠となる事実の確認からスタートするという著者の分析研究の視点・手法は一貫して明確であり、導き出された結論も極めて説得力がある。この事件が当時の米ソを中心とする東西冷戦下の軍事緊張と航空産業の高度技術システムの落とし穴という二つの巨大なひずみが重なり合ったところで起きたという著者の分析は正鵠を射ており、特に二つ目のヒューマン・ファクター(エラー)という要因は、著者が指摘するとおり、同様の惨事の再発を防ぐためには、急激な技術革新が進行する現今社会においてこそ、ますます重要になることを再認識すべきであろう。
fugyogyo
結局隠されている事が多すぎて、結論は出ないんだけど、事実確認の大切さとか色々と考えされられた。事実が確認できないから日本では新聞に載せなかったのに、外電から同じ情報が入ってくると信じてしまったりするという変な考えとか、ベテランはこんなミスは犯さないという既成概念とか。
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