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文学の現在 現代作家論 の商品レビュー

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2019/06/17

芥川龍之介から立松和平にいたるまで、日本の近現代の作家25人についての批評を収録しています。 小林秀雄や太宰治は、著者が独立した著作で主題的に論じた対象ということもあり、かなり立ち入った考察が展開されています。とくに小林については、保田與重郎や寺田透をあつかった章でも言及されて...

芥川龍之介から立松和平にいたるまで、日本の近現代の作家25人についての批評を収録しています。 小林秀雄や太宰治は、著者が独立した著作で主題的に論じた対象ということもあり、かなり立ち入った考察が展開されています。とくに小林については、保田與重郎や寺田透をあつかった章でも言及されており、著者の小林理解が立体的な像を結んでくるように感じられました。 辻邦夫のヨーロッパ体験にかんしては、『石と光の思想―ヨーロッパで考えたこと』(平凡社ライブラリー)で論じられている著者自身の体験とかさねあわせて、その内実に踏み込んでいこうと試みられています。こうした体験は、森有正や高田博厚といった人びとにも通じるものがあるといってよいと思いますが、たとえば森のことばを用いるならば「経験」が「経験」それ自身へと折りかさなり堆積していくところに「ヨーロッパ」というものの重みを感じとろうとすることには、著者が小林の「歴史」について指摘しているのと同様の問題がひそんでいるのではないかという気がしています。 そのほかでは、吉行淳之介の作品における「風景」というモティーフが指摘されていたことなどが印象にのこっています。

Posted byブクログ