左右の安全 の商品レビュー
アーサー・ビナードさんの詩集ですね。 アーサー・ビナードさんの詩集は二冊目になります。 前作の『釣りあげては』六年後の二〇〇七年の作品です。日本語での詩集は、幾らか言葉がこなれてきて、しっかりと感性を表現されています。 『覚える森』 森を行く人の 一歩一歩の重さを...
アーサー・ビナードさんの詩集ですね。 アーサー・ビナードさんの詩集は二冊目になります。 前作の『釣りあげては』六年後の二〇〇七年の作品です。日本語での詩集は、幾らか言葉がこなれてきて、しっかりと感性を表現されています。 『覚える森』 森を行く人の 一歩一歩の重さを 森の根っこが 感じとる。 ヤブツバキの根、ヤブコウジの根と ベニシダの根、スダジイの根、 アカガシの根、イヌガヤの根 ユズリハの根も、土の中で きみの足どりを受け止め、 計っている。 ここを通ったきみの歩幅を 森は覚えているーー きみがどこに 立ち止まったかも。 立ち止まったとき 森に何を感じとったか、 それはきみの 覚える分だ。 『崖』 西日の当たる家の階段に 腰かけて目をつむると ここは崖だ。 カモメたちが 翼の裏の純白を ちらつかせながら 巣作りの下見をする。 風に飛んできた種が わずかな隙間を探し 根づこうとする。 尾の長いトカゲは 岩にへばりついて 余熱を逃さない。 目を開けると 窓の外は夕焼け空。 崖のすぐ下に 飼い猫がいる。 『願い』 星に願いをかけるのも けっこうだが、その前にまず 分類しておいたほうがいい。 身軽な願いなら光速を超え、 星まで瞬時に飛んで行けるけれど、 悲しみを背負ったものだと 届いたころにはもう時効だったり とっくに癒えた傷痕だったり、 今さら叶えられたら困るのもあるだろう。 そんな願いの宛先は たとえば月に向けるといい。 湿った囁きのような願いを 抱えている場合は、むしろ 水たまりに映った月影か妥当だ。 正気を失っかと疑われる、 だれにもいえない願いは、焚き火に ふーっと吹きかけるにかぎる。 率直な自分の感じた事を詩編にゆだねて、思考の許す限りの言葉を駆使して謳え挙げられています。 アメリカの思い出や、旅の思い出などの詩編は、自分を見つめる眼差しを感じますね。 日本を愛するアーサー・ビナードさんの活躍に、エールを送りたいと思います。
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願い 星に願いをかけるのも けっこうだが、その前にまず 分類しておいたほうがいい。 身軽な願いなら光速を越え、 星まで瞬時に飛んで行けるけれど、 悲しみを背負ったものだと 届いたころにはもう時効だったり とっくに癒えた傷痕だったり、 今さら叶えられたら困るのもあるだろう。 ...
願い 星に願いをかけるのも けっこうだが、その前にまず 分類しておいたほうがいい。 身軽な願いなら光速を越え、 星まで瞬時に飛んで行けるけれど、 悲しみを背負ったものだと 届いたころにはもう時効だったり とっくに癒えた傷痕だったり、 今さら叶えられたら困るのもあるだろう。 そんな願いの宛先は たとえば月に向けるといい。 湿った囁きのような願いを 抱えている場合は、むしろ 水たまりに映った月影が妥当だ。 正気を失ったかと疑われる、 だれにもいえない願いは、焚き火に ふーっと吹きかけるにかぎる。
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王子、グレードーム、母校…東京の街がこんな風に詩になるのかあ。玉の話が実は深い表題作。「これからというときに」の重さ。「バケツを蹴る」に見る各地の言い方に、その民族の「死」に対する敬意が感じられて面白い。
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外国人が日本語で書いた詩集。こんな人がいたんですね。なんてすばらしい詩なんでしょう。「手紙」「草」「「の」」は、ノートに書き写しました。感動あり、日本語の発見あり、ユーモアあり、こういう詩を、もっと読みたいと思っています。
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左右の「何の」安全かと思えば……いやあね、ビナードさんたら。しかしそんな子どものような疑問をまっすぐ現実世界に突き立てるビナード氏の視線の鋭さは、本書でも遺憾なくその切れ味を発揮してみせる。読みやすく楽しく、でも決して軽くない。慣れきった世界にたまにこんな物の見方を取り込むのも、...
左右の「何の」安全かと思えば……いやあね、ビナードさんたら。しかしそんな子どものような疑問をまっすぐ現実世界に突き立てるビナード氏の視線の鋭さは、本書でも遺憾なくその切れ味を発揮してみせる。読みやすく楽しく、でも決して軽くない。慣れきった世界にたまにこんな物の見方を取り込むのも、大事だと思う。
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日本人以上に日本的なアメリカ人。 詩集。 特によかった作品は 「『の』」と 「覚える森」である。 小泉八雲にふれている詩もある。 2008年1月12日読了。
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日本人じゃない人が日本語で書いた誌集。「左右の安全・・って何?」男性のアレの落ち着き方だとか。 英語で「バケツを蹴る」、アルゼンチンのスペイン語では「足をのばす」、ハンガリー語なら「下からスミレの匂いをかぐ」、インドでは「無限と一体」って日本語で何?「息を引き取る」んだよ。ベン・...
日本人じゃない人が日本語で書いた誌集。「左右の安全・・って何?」男性のアレの落ち着き方だとか。 英語で「バケツを蹴る」、アルゼンチンのスペイン語では「足をのばす」、ハンガリー語なら「下からスミレの匂いをかぐ」、インドでは「無限と一体」って日本語で何?「息を引き取る」んだよ。ベン・シャーンのイラスト、最高にステキだ!
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日本在住の米国人詩人アーサー・ビナードさんの新作詩集。それにしてもうまいなぁと思う。特に好きなのは、「懐具合」「の」「夢落ち」。書名の「左右の安全」もクスリと笑える。2007年10月23日NBCラジオ「読書しょ」コーナーで紹介する。
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