イスカンダルと伝説の庭園 の商品レビュー
世界一の美しい庭園を造ろうとした王と建築士。天才建築士の美への追求と、その才能を独占しようとした王の野心。狂気とも見えるお互いの執着心が美しく描かれていた。 権力によって美は独占されるものなのか。ファンタジーとしても読めますが、歴史の中にある物語でもあるでしょう。
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イスカンダルの造る、奇跡的なお庭の話。 読んでいくと庭園の水のせせらぎや、むせ返る花の芳香がリアルに感じられて不思議。 エキゾチックで五感を満足させてくれる描写と、スリル満点の展開が楽しくて大好き!
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
アラビアの王(と言っても架空のアラビア世界なのだが)が、自分の名を後世に残すため、イスカンダルという天才建築師に世界一美しい庭園をつくることを命じる……というお話。 いやあ、天才を騙そうなんて大それたことを考えちゃいけません。イスカンダルの仕返しのやり方にはまったく脱帽です。 王さまの目的が、美しい庭園を造ることじゃなくて、自分の名を残すことだったのがそもそもの間違いだったんだな。美しいもののために他人が力を尽くすのであって、他人のために美しいものが存在することはありえないと思う。……うーん、全然上手く言えないけど。 短くてさっぱりとした小説だけど、イスカンダルと詩人ダラバッドとのやりとりや、庭園の描写がすごくきれい。
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内容紹介を、表紙裏から転載します。 『アラビアの王が栄耀栄華を誇っていた時代、世継ぎに恵まれなかった王は後世に名を残すため、世界一美しい庭園を造ることを思い立った。その庭を見るたびに、人々はその美しさとともに偉大な王の名をほめ讃えることだろう。王は、当代随一の建築家イスカンダルに...
内容紹介を、表紙裏から転載します。 『アラビアの王が栄耀栄華を誇っていた時代、世継ぎに恵まれなかった王は後世に名を残すため、世界一美しい庭園を造ることを思い立った。その庭を見るたびに、人々はその美しさとともに偉大な王の名をほめ讃えることだろう。王は、当代随一の建築家イスカンダルに仕事を依頼した。引き受けたイスカンダルは、昼夜を問わず持てる力の限りを尽くして庭造りに没頭する。しかし新たな王の野心を知ったイスカンダルは・・・・。 この世の美の粋が集められた庭園をめぐる人々の相克を、詩情豊に描いた壮大なファンタジー。』 ドラマチックな話なのに淡々とした説明調の文章が続き、それがかえってこの話はどう展開していくのだろうと言う不安感を高めていきます。最初から、何かこの先には不幸が待っているという感じがただよっていました。 王が考えていることは読者の私にはなんとなく察しがつきましたが、イスカンダルがそれに気がついたかどうかは分かりませんでした。 第二部まではとても良いと思いましたが、最後の第三部、その後半はちょっと残念でした。詩人のダラバットとイスカンダルが出会った後、エピローグの前のほんの20ページほどで全てをダラバットの説明で済ませてしまって・・・・。 え~っ、そんなもったいないこと。この部分は十倍くらいに膨らませて欲しかったです。 後日談では、人々の心に残るのは何なのかをしみじみと語りかけてくれました。
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栄華を誇るアラビア王アルイクシールは自らの名を後世に残そうと当代髄一の建築家イスカンダルにこの世でいちばん美しい庭園を造らせようと躍起になるが、広大なこの世の楽園の完成を間近にしてイスカンダルは失踪してしまう。 宝石が散りばめられた多彩で美麗な建築物、噴水の煌き、さまざまな花々...
栄華を誇るアラビア王アルイクシールは自らの名を後世に残そうと当代髄一の建築家イスカンダルにこの世でいちばん美しい庭園を造らせようと躍起になるが、広大なこの世の楽園の完成を間近にしてイスカンダルは失踪してしまう。 宝石が散りばめられた多彩で美麗な建築物、噴水の煌き、さまざまな花々を咲かせる植物群、獣、鳥…めくるめく庭園の描写が幻想的でとても美しいです。
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アラビアの王が栄耀栄華を誇っていた時代、世継ぎに恵まれなかった王は、後世に名を残すため、世界一美しい庭園をつくることを思いたった。その庭を見るたびに、人々はその美しさとともに偉大な王の名をほめ讃えることだろう。王は、当代随一の建築師イスカンダルに仕事を依頼した。引き受けたイスカン...
アラビアの王が栄耀栄華を誇っていた時代、世継ぎに恵まれなかった王は、後世に名を残すため、世界一美しい庭園をつくることを思いたった。その庭を見るたびに、人々はその美しさとともに偉大な王の名をほめ讃えることだろう。王は、当代随一の建築師イスカンダルに仕事を依頼した。引き受けたイスカンダルは、昼夜を問わず、持てる力の限りを尽くして庭造りに没頭する。しかし、新たな王の野心を知ったイスカンダルは……。 この世の美の粋が集められた楽園をめぐる人々の相克を、詩情豊かに描いた壮大なファンタジー。 (あらすじより)[徳間書店.1999.12.31.] -------------------------------------------------------------------------------- 「すごい……。それって、不死の体を得るよりすごいよ」 「望み」「願い」・・・。 聞いたり見たり、当たり障りもなく美しい(少なくとも良い)イメージの言葉だ。 しかし、この言葉に対して私は一種敬遠したいような印象を受ける。 恐らく、高校時代などの思い出も絡んでそう強く思うのだろうが、その思い出を換算せずとも、矢張り苦手な…と言うか好んで使いたくないような感触を受ける言葉である。 望みや願いは誰しも持っているもので、勿論のこと私にだってあるものだ。 それなのに、敬遠したいという理由は、多分望みや願いが怖いからだろうと思う。 望みとは、結局は「欲」であって、自分の望みが達せられると言うことは、つまりは誰であれ自分以外の存在に影響を与えることなのだなと理解しているからだ。 自分の望みが叶っている裏で、必ず誰かが(人とは限らず)嫌な思いをしているに違いない。 願うという事は美しげなイメージと共にあるけれど、願ったその瞬間からその願いを叶える方向へ無意識にでも人は動いてしまうと思う。 望みや願いといった「欲」は人から切り離せないほど根源的なものであるけれど、それだけに矢張りその強さに躊躇ってしまう。極論だと言われるだろうけれど、どうもこの考えが離れないのである。 『イスカンダルと伝説の庭園』は、刊行直後に読んだ作品である。 その時は図書館で何気なく新刊コーナーから手に取ったのだが、それから数年も経った今、どうしてももう一度読みたくなり、タイトルもどこの発行なのかも覚えていないながらも、図書館の棚を一冊ずつチェックしてまわり、検索用PCでキイワード検索をしたりと、時間がかかりながらも見つけ出した一冊である。 見つけ出せたのは、「庭」という言葉がタイトルに含まれていたような記憶があったからで、「庭」と付く書籍を全て当たって探し出した。 この本が此処まで記憶に残っていたのは、恐らくこの「欲」というものがキィワードとなっている物語であったことと、その話の展開自体のおもしろさからだろう。 アラビアの王の望みがあからさまな「欲」に変容して行く様、そしてその欲によってイスカンダルが翻弄されて行く様が描かれるが、イスカンダルはどのような末路をたどるのか、是非一読をお薦めする。 「欲」に対する手段として採られたのは矢張り「欲」であったのだと再読して感じる。 しかも、イスカンダルの「欲」を達すること自体が、王の「欲」を挫く形になったという様は深いものを感じさせて、此処があったからこそ再び手に取りたいと思ったのだなと感じた。 王は世界一美しい庭園が残ることで自分の名が後世にまで伝わることを望んだが、結局それは打ち破られ、また王の野望を打ち砕いたモノでさえ、その美しい楽園と共に時を経て失われて行く。 そして結局最期に残り、伝えられたものとは……。 読了後に良い満足感を得られる一冊ではないかと思う。
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