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兄貴 の商品レビュー

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2014/10/16

 昭和20年、大阪の大空襲で家を焼かれたあと、小学生の弟、十代の兄、母の3人家族が親戚をたよって田舎に向かう汽車の中から始まり、敗戦後昭和22年の夏に終わる物語。日本の負けが目の前に迫り、物資が不足し、デマが飛び交い、新聞は狂ったようにプロパガンダをわめきたて、電車の中の立ち話に...

 昭和20年、大阪の大空襲で家を焼かれたあと、小学生の弟、十代の兄、母の3人家族が親戚をたよって田舎に向かう汽車の中から始まり、敗戦後昭和22年の夏に終わる物語。日本の負けが目の前に迫り、物資が不足し、デマが飛び交い、新聞は狂ったようにプロパガンダをわめきたて、電車の中の立ち話にまで憲兵が耳をそばだてる毎日を、3人それぞれの目線で淡々と描く。 「女と子ども」のごくまっとうな切実な日常が、余計な修飾をせず丁寧に語られているので、あの戦争の日常とはこういうことだったのだな、とじわじわと腑に落ちてくる。 戦時中でも子どもたちは冒険し、喧嘩し、はかない恋をし、友人を作り、成長する。都会に嫁いだ苦労知らずの母は、自給自足の畑を作るため、初めて鋤や鍬をもって土を耕し、立派に育った豆や茄子の花に涙を流さんばかりに感動する。 戦争中にちょうどこの弟と同じ年頃だった著者の自伝的な作品なのか、ほんの一コマしか登場しない人物にまで説得力がある。

Posted byブクログ