薩摩燃ゆ の商品レビュー
薩摩藩といえば、幕末の武力を背景にした幕府の顔色など気にしない強さと、他藩との交渉のしたたかさという2つのイメージを持っていたのですが、その力を身に付けるまでにはこんな汚いことを重ねてきたのだと初めて知りました。 全てが真実とは限らないと思うし、他藩も似たり寄ったりだったのかも知...
薩摩藩といえば、幕末の武力を背景にした幕府の顔色など気にしない強さと、他藩との交渉のしたたかさという2つのイメージを持っていたのですが、その力を身に付けるまでにはこんな汚いことを重ねてきたのだと初めて知りました。 全てが真実とは限らないと思うし、他藩も似たり寄ったりだったのかも知れせんが、それでも薩摩藩に対する印象は間違いなく悪くなりました。 ただ、善悪の判断を捨てて主君への絶対的な忠誠を生涯貫いた笑左右衛門については、共感はしないものその後の日本が歩んだ道に大きな影響を及ぼした凄い人だと思う。
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幕末の雄、薩摩藩を、作り上げたのは、調所笑左衛門広郷であり、島津重豪であった。西郷隆盛や大久保利通に隠れてはいるが、想像を絶する状況下での、調所笑左衛門広郷の改革には、驚きました。
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調所笑左衛門廣郷は、薩摩財政建て直しのために、500万両を250年払いとして事実上踏み倒したということで有名な薩摩藩家老である。そしてお由羅騒動の責任をとって自決ということで、島津斉彬との対立軸でみられることの多い人物でもある。 本書『薩摩燃ゆ』は調所廣郷の自伝的小説ということ...
調所笑左衛門廣郷は、薩摩財政建て直しのために、500万両を250年払いとして事実上踏み倒したということで有名な薩摩藩家老である。そしてお由羅騒動の責任をとって自決ということで、島津斉彬との対立軸でみられることの多い人物でもある。 本書『薩摩燃ゆ』は調所廣郷の自伝的小説ということで、上記本人評伝のほんの一部を大いに覆す作品であった。島津重豪に仕えて以来50歳を超えてから藩の財政再建に携わり、70歳を過ぎるまで島津家や藩のために奔走、その活躍には陰陽併せ持っており、ドラスティックな対応しか、世の中を変えることはできないことが大いに論じられている。 小説であるから、多少善き部分の記述に偏っている感はあるが、それでもやはりその活躍の幅は当代一なんだろうと思う。 当然ながら、最初に述べたよく知られた部分をもって調所家の評判はなりたっており、廣郷が心配したとおりの展開であったが、本書はそのあたりの心配がよく描かれている。 薩摩は関ケ原の戦いにおける島津義弘の××と島津斉彬や久光の幕末における活躍は広く知られているが、その間の重豪の豪胆な政策などは本書によって開示されたといっても過言ではない。それゆえ、続く斉宣、斉興の不遇やお由羅騒動などが起こったともいえるが、斉彬さへも小物に見えてしまう時代の流れと、晩年に西郷吉之助や大久保正助を取り立てた(ように導いた)ことで廣郷の活躍をもう一段押し広げたようにも見える。 いずれにしろこれまであまり見えていなかった世界が広げてくれたという観点で、非常に興味を駆り立てられる作品であった。
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最後のシーンが印象的 あの温かさの中に戻りたいと痛切に思ったが、もはや目を開ける力も残っていなかった 調所笑左衛門広郷。行年七十三歳。彼の身命を投げ打った改革によって、薩摩藩は明治維新の立役者となりえたのである
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幕末、島津藩の財政難を救い島津斉彬の富国強兵への礎を築いたとされる家老調所笑左衛門広郷の半生を描いた伝記小説。前藩主島津重豪より受けたとんでもない勅命。500万両の借金を抱え経営破綻寸前の藩の危機を命を賭して回避せよ!?内外の非難を一手に引き受け強引に推し進めた政策は?まず奄美大...
幕末、島津藩の財政難を救い島津斉彬の富国強兵への礎を築いたとされる家老調所笑左衛門広郷の半生を描いた伝記小説。前藩主島津重豪より受けたとんでもない勅命。500万両の借金を抱え経営破綻寸前の藩の危機を命を賭して回避せよ!?内外の非難を一手に引き受け強引に推し進めた政策は?まず奄美大島・徳之島などから取れる砂糖の専売制を成し遂げ、価格の統制により莫大な利益を藩にもたらせた事。次に借金棒引きによる支出削減を強硬に実施した事。更に国禁を犯し、琉球経由で清との密貿易を拡大させ更なる国力の増強をはかる。ゆるがぬ強い信念。つまり世界に互していくために開放政策が必須。そのために多少の犠牲はやむを得ず。歴史の舞台に派手に登場する人物ではないが時代の潮流を自ら巻き起こす様が見事に綴られています。ところで本作品私の故郷鹿児島の地名がふんだんに出てきて望郷そそられる~。そういえば故郷の偉人を取り上げた作品をあまり読んでいない気がする(゚д゚)マズー。
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破綻寸前の薩摩藩の財政改革に尽力した家老 調所広郷。歴史の影を受け持った彼の藩再興なくして、後の明治維新は無かったであろう。そう思えば尚更感慨深い。
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・薩摩藩の財政を立て直した家老調所笑左衛門の生涯を描いた小説。 ・唐物取引、砂糖密売、貨幣偽造など、財政立て直しに奔走するのだが、島津家は徳川家より由緒があり、藩主島津重豪のころから、財力を以って朝廷、幕府(徳川家)に楔を打っていたことが背景にあるのだろう。 詰まり、徳川家を必ず...
・薩摩藩の財政を立て直した家老調所笑左衛門の生涯を描いた小説。 ・唐物取引、砂糖密売、貨幣偽造など、財政立て直しに奔走するのだが、島津家は徳川家より由緒があり、藩主島津重豪のころから、財力を以って朝廷、幕府(徳川家)に楔を打っていたことが背景にあるのだろう。 詰まり、徳川家を必ずしも怖れていなかった。 ・また、その姿勢が倒幕の原動力になっていたのだと思うと納得できる。 ・この小説では調所笑左衛門は斉彬派寄りに描かれているが、史実としてはどうだったのだろう。脚色か?
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53歳の調所笑左衛門広郷(ずしょ しょうざえもん ひろさと)が、500万両の借金を抱えた破綻寸前の薩摩藩の財政建て直しを島津重豪(しまずしげひで)に命じられて金策に奔走するところから、跡継ぎをめぐる騒動に巻き込まれ、汚名を一身に背負い、自ら命を絶つまでの物語です。
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2007/10/20 ジュンク堂住吉シーア店にて購入。 2016/11/15〜11/22 二年半ぶりの安倍作品。幕末の薩摩藩の活躍は良く知っていたが、その影に調所広郷のような人物がいたことは知らなかった。小説の世界とはいえ、理不尽な要求に耐え、職務をこなす。今の時代ならパワハラと、言えるような状況であるが、こんな時代の方が世の中逞しく、ある意味正しい方向に向かっていたのではないだろうか。決してりふじんさを褒め称えるわけではないが、昨今の甘やかし社会に感じる危惧を喚起する作品であった。
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