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ボルドーvs.ブルゴーニュ の商品レビュー

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2021/01/02

私の場合、「ワイン」と聞いてまず思うのは、ボルドーかな?ブルゴーニュかな?ということになります。 有名どころではイタリアワインとかもありますが、ワインと言えばフランスのボルドーワインとブルゴーニュワインを連想する方はきっと多いはず。それくらいにボルドーワインとブルゴーニュワインは...

私の場合、「ワイン」と聞いてまず思うのは、ボルドーかな?ブルゴーニュかな?ということになります。 有名どころではイタリアワインとかもありますが、ワインと言えばフランスのボルドーワインとブルゴーニュワインを連想する方はきっと多いはず。それくらいにボルドーワインとブルゴーニュワインは世界に浸透していると言っても過言ではないでしょう。 かつて「新世界」といわれたアメリカとかチリとか南アフリカとかオーストラリアとかのワインも結局はこの両者のスタイルを真似ていることが多く、ワインという文化をフランスが世界に誇るのも当然なことと言えます。 本書はソルボンヌ大学の学長にして味覚関連の地理学者である氏が、フランスワインの歴史や文化、そして葡萄栽培とワイン醸造に関すること、生産と消費構造などその幅広い知識と蘊蓄について大いに語った一書です。 蘊蓄を披見するだけの一般のワイン本が多い中で、本書ではそれらの本には見られない批判とか蘊蓄にしてもさらに突っ込んだ内容が多くあり、他のワイン本とは一線を画す魅力的な書物になっていると言えます。 ただ、学者の著したものだからなのか、訳のせいなのかはよく分かりませんが、回りくどい言い回しの記述が多いところは少々難儀したかな。 ボルドーとブルゴーニュを対比させながらも、その共通点と異質な点を大いにさらけ出しているところはうすうす感じてはいたものの、こうやってあからさまに対比した点は良かったですね。 ボルドーはイギリスやヨーロッパ北部の嗜好に合わせて発展し、かたやブルゴーニュはパリなどフランス中央部の嗜好に合わせて発展してきましたが、お互いのワインを飲むことは20世紀に入ってもずっと無かったんだなというのは多少の驚きだったかな。 また、一般的なワイン本ではテロワールの違いを強調し過ぎるきらいがありますが、本書では結論は避けてはいるものの、ブルゴーニュでカベルネ・ソーヴィニヨンをなぜ作らないのかとか、ボルドーでピノ・ノワールを作ってもいいじゃないとか、かなり挑発的な領域まで踏み込んでいるところなどは特に面白かったです。 テロワールもさることながら作り手であるヴィニュロンの影響は近年特に大きくなっていると思っていたところで、かつて特権としてテロワールのテリトリー化を図っていたものが、そこから逸脱して酒質の高いワインの領域を拡げていく姿はあくなきワインへの情熱を感じさせるところですね。 そんな中で気鋭の作り手の紹介も何人かありましたが、ブルゴーニュの作り手の紹介はもっとあっても良かったかな。 いわゆる「新世界」ワインの酒質の向上にみられるように、ただのテロワール推しだけではフランスワインも太刀打ちできなくなってきていて、ここのところは著者もフランスワインを偏愛するあまりに危機感を持っているようでした。(笑) 本書では古今東西のフランスワインの文化面での貢献も数多く記述されていて、ブルゴーニュでいうと日本では開高健はいうに及ばず、井上靖も死ぬ直前までブルゴーニュワイン愛に溢れていたようですね。ボルドーで言えば有名なところでは、ロアルド・ダールなんかがいますね。 著者はブルゴーニュワインは官能的でボルドーワインは理性的と書いていますが、確かにシャトー・マルゴーを除けば、ブルゴーニュワインの方が官能的な場面に多く登場するかもね。(笑) 一方で、ボルドーワインはやはり紳士のワインかな。ジェームズ・ボンドも『ムートン』とか『アンジェリス』とかをオーダーしていたね。 料理とのマリアージュのくだりはもう芸術としかいいようがなくて、口もじゅるじゅるものですね!(笑) 個人的な話をすると今年は家人にそそのかされて(笑)、秘蔵ワインの中からブルゴーニュでは本書でもたびたび登場していたシトー派修道院の銘酒からアンヌ・グロの『ル・グラン・モーペルテュイ 2007』、ボルドーではこれまた本書でもたびたび登場していたフィリップのシャトーの『ムートン節子』を開けてしまいましたが、自分にはどちらも厳粛な気分になるワインでしたよ! 今年の読書は本書が締めくくりとなりましたが、最後に麗しのワインの本で良かったと思います。 今年はコロナ禍の大変な年でしたが、みなさまにとって来年が良い年となりますように。 私は正月三箇日は、朝からお雑煮とおせち料理とシャンパーニュで過ごします。むふふ。

Posted byブクログ