人間ぎらい の商品レビュー
悲劇的喜劇。世間知ら…
悲劇的喜劇。世間知らずの純真な青年貴族アルセストは、虚偽に満ちた社交界に激しい憤りをいだいている。ところが、皮肉にも彼は社交界の悪風にそまった未亡人セリーヌに熱烈な恋をしてしまう。17世紀に書かれたものだと思えないくらい、現代でも十分楽しめる。翻訳も読みやすい。
文庫OFF
演劇の脚本である。現物を見た後でないとその場面が頭に浮かばないので興味が持てない。 現在であればYouTUbeで観た後にこの脚本を見ればいいと思われる。津村の読み直し世界文学の1冊であるが、読み直しても場面が浮かばないのは、日本でそれほど上演されなくなったせいなのかもしれない。
Posted by
生のどの瞬間も、死への一歩である。コルネイユ 大きな罪の前には、取るに足らぬ罪がある。ラシーヌ『フェードル』 金曜日に笑う者は土曜日には泣くだろう。ラシーヌ『訴訟人』 結婚の契約をしてからでなければ恋をしないというのは、小説を終わりから読み始めるようなものだ。▼満足は富にま...
生のどの瞬間も、死への一歩である。コルネイユ 大きな罪の前には、取るに足らぬ罪がある。ラシーヌ『フェードル』 金曜日に笑う者は土曜日には泣くだろう。ラシーヌ『訴訟人』 結婚の契約をしてからでなければ恋をしないというのは、小説を終わりから読み始めるようなものだ。▼満足は富にまさる。モリエール
Posted by
面白い。 おべっかや飾り立てた大仰な言葉遣い、本心とは異なる表面上の友情と愛情で満ち満ちた社会を嫌うアルセスト。 「嘘をつくと蕁麻疹が出る(これは違国日記の高代槙生)」かのような彼は、真実の見えない厚化粧な社交界を嫌う。つまりは「人間嫌い」ということだろう。 しかしそんな彼も「...
面白い。 おべっかや飾り立てた大仰な言葉遣い、本心とは異なる表面上の友情と愛情で満ち満ちた社会を嫌うアルセスト。 「嘘をつくと蕁麻疹が出る(これは違国日記の高代槙生)」かのような彼は、真実の見えない厚化粧な社交界を嫌う。つまりは「人間嫌い」ということだろう。 しかしそんな彼も「恋ってやつぁ、理性じゃどうにもならないんでね」と、本来彼が憎む部類の女性に恋をする。その様は、自分の主張を偽らず世間が嫌いだと言って憚らない頑固で一本気な彼らしく、大いに気狂いじみている。 馬鹿馬鹿しい世間とアルセストの対比というのを基調に、それらをさらに、馬鹿馬鹿しくしかし哀れなほど真剣に恋しているアルセストの様と対比させることで、あるスケールでは喜劇、あるスケールでは悲劇、と深みがでている。 この舞台、みてみたいなあ
Posted by
世間知らずで潔癖なアルセストくんが恋に落ちたことで苦しみまくり人間嫌いになるという「喜劇」。本人からしたら悲劇なのだろうけれど…
Posted by
本音と建前を弁え、言葉を並び立てて"良識"のある人間として振る舞う社交界貴族達の言動も、言葉や気遣いで固めた人間の心の醜さに耐えられず、真っ向から反発する青年アルセストの言動も喜劇として見ると滑稽でおかしい。が、それはくすぐられるようなおかしさではなく、痛切な...
本音と建前を弁え、言葉を並び立てて"良識"のある人間として振る舞う社交界貴族達の言動も、言葉や気遣いで固めた人間の心の醜さに耐えられず、真っ向から反発する青年アルセストの言動も喜劇として見ると滑稽でおかしい。が、それはくすぐられるようなおかしさではなく、痛切な余韻を残すおかしさである。喜劇と悲劇の表裏一体を描いており、これが喜劇の随一とされるゆえんかと感じた。
Posted by
久しぶりに古典を読んだ。さくっと読めるので良い。とても皮肉のきいた作品。いつの時代も悪口は人間関係を強固にする手段だったのだなあと悲しくなるし、そんなもんかとも思う。
Posted by
モリエールの人間喜劇。 昔から潔癖はいたのだろう。八方美人に恋をするが、ラストで急展開。主人公はいい友人に恵まれたところが救い。
Posted by
純心な主人公アルセストが、自分の最も嫌うつくろいの社会の色に染まったセリエーヌにのめり込む。恋に破れ人間嫌いとなって隠遁することを決意する。1640年代の作品だが現代にも通ずる物語。2018.7.7
Posted by
この喜劇は日本でいうと江戸時代の初期に著されたものだが、たしかに背景や表現こそ古めかしいものの、あらゆる人間を憎む正義漢アルセストのバカバカしさは、今の時代にあっても伝わってくるものはある。 ただ、バカバカしさはこのアルセストのふるまいだけではなく、とりわけ上流社会におけるしき...
この喜劇は日本でいうと江戸時代の初期に著されたものだが、たしかに背景や表現こそ古めかしいものの、あらゆる人間を憎む正義漢アルセストのバカバカしさは、今の時代にあっても伝わってくるものはある。 ただ、バカバカしさはこのアルセストのふるまいだけではなく、とりわけ上流社会におけるしきたり、こびへつらいなどに塗り固められた人間関係など、アルセストが芯から嫌った対象そのものでもある。 この本が著された17世紀中ごろはまさにブルボン朝の最盛期を迎えようという時代であり、そうした滑稽なふるまいが社会で大手を振って行われていたことについてもモリエールは描こうとしたのかもしれません。
Posted by