人類の足跡10万年全史 の商品レビュー
本著はゲノムという新しいツールにより、人類のルーツを探る壮大なドラマであり、研究成果である。今や定説となっている出アフリカの歴史、ミトコンドリアイヴが正しい事を解説する。人類発祥からの樹形図が整理される。自分はその末端の突起にある、微生物よりも小さな存在であり、しかし、きちんと人...
本著はゲノムという新しいツールにより、人類のルーツを探る壮大なドラマであり、研究成果である。今や定説となっている出アフリカの歴史、ミトコンドリアイヴが正しい事を解説する。人類発祥からの樹形図が整理される。自分はその末端の突起にある、微生物よりも小さな存在であり、しかし、きちんと人類を受け継いだ事を理解する。 母親からのみ受け継がれるミトコンドリアDNA、父親から受け継がれるY染色体。これらが謎解きの鍵だ。現生人類の遺伝子を解明し、見えてきたものとは。ジャレドダイヤモンドは発展と世界の力に不平等が生じるのは、集団ごとに人が生来持っている知性に差があるためではなく、機会が訪れるのが歴史的偶然に任されていたためだと説明した。著者スティーブン・オッペンハイマーは、何を主張するのか。 僅かな遺伝子の変異を追跡して人類の移動過程の北ルート説を支える背景にヨーロッパ中心主義があることを批判する。進化的多様性の重要性から、台湾人の医師に、トラと実験用マウスの生命の重みの違いを説明する。しかし、結局の所、ルーツの解明が明らかにしたのは、人類の遺伝的多様性が低いという事だ。 人類の脳は、移動を開始する10万年以上前に成長を終えた。進化への見返りがないのだという。その代わり、文化が多様化する事で文明が進化してきた。これも、利便性の飽和度合いと実現するための富の平均化により、現代では画一的になりつつあるのではないか。人類自身も、付託された文化自体も多様性を失う。やがて、思考も同一GPTが担い、労働も標準化され、生活はデジタルの枠組みに格納され遺伝子グループに最適なリコメンドが与えられる。ルッキズムも外観を非差別化し、肉体の差は身体拡張機能が補う。 我々の足跡は、一体、どこに向かうのか。多様性が無いのなら、有性生殖にも個々の生存価値にも、どんな意味を見出すべきなのか。
Posted by
人類の足跡10万年全史 (和書)2011年01月07日 16:10 2007 草思社 スティーヴン オッペンハイマー, 仲村 明子 柄谷行人さんの書評から読んでみました。 とても参考になりました。 西欧中心主義や人種差別の根拠の否定は痛快だった。 ただ書評にあったほとん...
人類の足跡10万年全史 (和書)2011年01月07日 16:10 2007 草思社 スティーヴン オッペンハイマー, 仲村 明子 柄谷行人さんの書評から読んでみました。 とても参考になりました。 西欧中心主義や人種差別の根拠の否定は痛快だった。 ただ書評にあったほとんど同じ資料からの全く反対の見方が存在するということにも驚く。 関連作を何冊か読んで比較してみたいです。
Posted by
700万年前にアフリカで生まれた人類は、その後何度かの出アフリカを経験し、各地に拡散し、現在に至った。もちろん、このことは、北京原人が現在の中国人、ジャワ原人が現在のジャワ人、ネアンデルタールが現在のヨーロッパ人と言うことではない。では、現在の人類とは、どのような経緯で世界に拡散...
700万年前にアフリカで生まれた人類は、その後何度かの出アフリカを経験し、各地に拡散し、現在に至った。もちろん、このことは、北京原人が現在の中国人、ジャワ原人が現在のジャワ人、ネアンデルタールが現在のヨーロッパ人と言うことではない。では、現在の人類とは、どのような経緯で世界に拡散し現在に至ったのか?この疑問に迫るのが本書の役割である。 世界各地に住む現代人のミトコンドリアDNA(100%母系遺伝するので、母系の変遷が追跡できる)やY遺伝子(100%父系遺伝するので、父系の変遷が追跡できる)の変異、地質学(氷河期や、間氷河期などで海面位置が変わることなど)、古跡、発掘学などの知識を駆使し、現代人の出アフリカは一度のみ発生し、場所は紅海の出口であり、その後、彼らの一部は海伝いにインド、インドシナ、オーストラリアと拡散していったことなどを明らかにする。 考古学は、発掘が中心だと思っていたが、前記したように遺伝学、発掘学、地質学の統合科学に進化していたことに驚かされる。
Posted by
本書の内容自体はまだ研究中であるし、サンプル数も少ないので鵜呑みにする事は出来ませんが、長いスパンの人類の移動の歴史として本書の内容は刺激的です 2013現在にアップデートされた結果も見てみたい良書
Posted by
ミトコンドリア・イブから、人類がどのように移動していき、どのように世界に広まったか…という壮大な人類の歴史書である。
Posted by
この5,6年で読んだとても刺激的な本の最高峰。「ミトコンドリア・イブ」から枝分かれしてきたホモ・サピーエンス・・・
Posted by
第1章 出アフリカ 第2章 現生人類はいつ生まれたのか 第3章 二種類のヨーロッパ人 第4章 アジア、オーストラリアへの最初の一歩 第5章 アジア人の起源を求めて 第6章 大氷結 第7章 だれがアメリカへ渡ったか
Posted by
世代間で交差することなく、そのままコピーされて受け継がれるミトコンドリア(女系)とY染色体(男系)のDNA分析からアフリカを出た人類が全世界にその住域を展開する歴史を記述したものです。朝日新聞の書評欄で柄谷行人も評価していたこともあり、手に取りました。 この類の本は知的好奇心...
世代間で交差することなく、そのままコピーされて受け継がれるミトコンドリア(女系)とY染色体(男系)のDNA分析からアフリカを出た人類が全世界にその住域を展開する歴史を記述したものです。朝日新聞の書評欄で柄谷行人も評価していたこともあり、手に取りました。 この類の本は知的好奇心をうまくくすぐるらしく、最近多く出版が目立ちます(Amazonでたくさんレコメンドされる)。その中では、少し前の本ですが、ブライアン・サイクスの『イブの7人の娘たち』と『アダムの呪い』が有名です。こちらと比べると娯楽性ではサイクスに軍配が上がるでしょう。一方本書は娯楽性よりも、学問的な誠実さに基づき、考古学や気候学の知見を効果的に援用して人類の空間的展開ルートをDNAの系統樹から演繹しています。またこの類の本では問題となりがちな人種差別主義に対しても非常に慎重な姿勢を終始保っています。その誠実さと慎重さがときに読みやすさを損ねているように思われますが、記述の信頼性を高めているところでもあります。まだまだ学界でも未決の問題が多いというのもよく伝わってきます。統計的な正確さはサンプルの数が増えるにしたがい増えていくので、今後も新しい発見が期待できそうです。 それにしても、先祖をたどるとただ1人の人にたどり着くというのは不思議なロマンスを感じさせますね。どういう歴史を経てアフリカからこの日本まで人類が辿り着いたのかもきっちりと信じさせてくれる本です(まだ未確定なところもあるそうですが)。 なお邦題の『人類の足跡10万年全史』ですが、出アフリカの8万5千年前やアフリカのイブの15万年前とも合致していません。原題は、"Out of Eden: the peopling of the world"で直訳風にすると『エデンの園から - 人類の殖民の全軌跡』という感じでしょうか。この手の本のタイトルでは年数が書かれたものが多いのでそのせいかもしれません。8万5千ではキリが悪いですしね。
Posted by
人類の種としての究極の起源はアフリカに現れた最初の現生人類まで遡り、 そして、ただ一つのグループが7万年以上前にアフリカを離れたのである。
Posted by
内容→基本的には遺伝子「Y染色体」、「ミトコンドリアDNA」を使って現生人類は一体どこからやってきたのか?ということを気象学、考古学、地質学等をときおりまぜながら説明している。 現生人類はそれぞれの地域で進化(多地域進化論)したのではなく、たった一度のアフリカからの...
内容→基本的には遺伝子「Y染色体」、「ミトコンドリアDNA」を使って現生人類は一体どこからやってきたのか?ということを気象学、考古学、地質学等をときおりまぜながら説明している。 現生人類はそれぞれの地域で進化(多地域進化論)したのではなく、たった一度のアフリカからの脱出でその脱出した際のグループが進化していった。つまりすべての人類の遺伝子をたどればこの時に脱出 したグループにいきつく。(出アフリカ論)という説を説いている。もちろん現在では後者の説が有力。原著自体は2003頃に出版されている。 強点→まったくこういった知識がない私でも、大まかな内容は理解できた。また、それぞれの地域(アジア、アメリカ、オーストラリア等)ごとに人類の足跡をたどっていてわかりやすかった。 ただ単に人類の足跡を追うのではなく、「すべての人類は元をたどれば皆同じ」という観点から人種差別の無意味さを説いている場面もみうけられた。著者に好感がもてた。 弱点→遺伝子の話なので、多少こんがらがる。(仕方ないけど)。丁寧に読めば理解できるが、軽く読み流すと理解が半減するかも(私だけ・・・?)。時間がない人にはお薦めしません。 読後の変化→すぐなにか結果がでるわけではないが、自分の知識の糧として大変ためになる。人種間の偏見が馬鹿らしく思えてきた。人類の進化の歴史に大変興味がわいてきた
Posted by
- 1
- 2