映画狂時代 の商品レビュー
原題「Moviegoer」は直訳すれば「映画好き」。 意訳して「映画狂時代」とした邦題は、「映画のように現実感に乏しい我々の時代」というような、翻訳者による解釈の押しつけが感じられて、失敗のように思う。 主人公の彼が、現実の手ごたえのなさが嵩じた結果、映画のワンシーンにむしろ...
原題「Moviegoer」は直訳すれば「映画好き」。 意訳して「映画狂時代」とした邦題は、「映画のように現実感に乏しい我々の時代」というような、翻訳者による解釈の押しつけが感じられて、失敗のように思う。 主人公の彼が、現実の手ごたえのなさが嵩じた結果、映画のワンシーンにむしろ現実味を感じ出す、その逆転現象が小説のひとつのモチーフになっている。「映画狂時代」という邦題は、その点を意識している。 50年代前後のアメリカ映画史に詳しければ、本書はまた別の味を感じさせてくれたのだろう、詳しくないので味わい損ねた印象。 -ホセ・フェレールみたいな篤志家じゃない たとえば、こうある。続いて訳注でその説明がある。その訳注を読んでとりあえずの意味を理解する。そういう工程を数十回経るわけだが、もうその時には、作者が仕込んだ皮肉や洒落をライブ感を持って吸収するには鮮度が落ちてしまう。
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