ロシア・マルクス主義と自由 の商品レビュー
廣松渉の物象化論の観点から、ソヴィエト・ロシアにおける教条的なマルクス主義思想、とりわけスターリン主義の問題点について考察している本です。また、同様の観点から、レーニンのマッハ批判とその淵源としてのエンゲルスの自然弁証法についての批判もおこなわれています。 スターリン批判の意義...
廣松渉の物象化論の観点から、ソヴィエト・ロシアにおける教条的なマルクス主義思想、とりわけスターリン主義の問題点について考察している本です。また、同様の観点から、レーニンのマッハ批判とその淵源としてのエンゲルスの自然弁証法についての批判もおこなわれています。 スターリン批判の意義と必要性は、いまでもなおうしなわれていないと思いますが、それによって廣松の思想をよりいっそう掘り下げるような試みが見られないことは、すこし残念に思いました。むろん本書においても、廣松の主張に対して部分的に修正をおこない、唯物史観そのものが、生態史観などの立場に親和的なものとみなすべきではないという著者自身の主張も示されているのですが、いまひとつインパクトに欠ける印象があります。左派論壇というコップのなかの争いを越え出るようなヴィジョンをえがいてほしかったように思います。
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