日本縦断徒歩の旅 の商品レビュー

金澤良彦【著】

2009/10/04

　60才代のご夫婦が、本州最南端鹿児島県佐多岬から最北端の北海道宗谷岬まで歩きとおした3,409.6km、118日の旅の記録。
　徒歩で、が凄い。夫婦で、がスゴイ。環境問題を訴えながらというのがすごい。ましてこんな壮大なプランを考え、達成してしまうことに驚嘆。一気に読み通してしまいます。
　旅にかかった118日を考えると、旅の日記222頁はちょっとあっけない。書ききれなかった出来事や見聞きしたことが10倍、20倍あったでしょうに。「おわりに」に「数え切れないほど多くの人と言葉を交わし、知り合いになれた。途中でお世話になった多くの方々とは、その後も交流が続いている」とありました。118日の旅を通した、温かな人と人との関わりが心に残る本です。
　お二人の旅のほぼ半ば、親不知を通る機会がありました。一日かけて歩いた、親不知〜糸魚川間23.0kmを普通列車はわずか10分程で通り過ぎてしまいます。名勝親不知の海も道路の橋桁の間々に垣間見るのがやっと。立ち止まって見惚れることも、土地の人との会話も交わりもありません。23kmにかける時間が違うのですから、濃密さが全く違うということでしょう。日本縦断なんていいません。まず自分の町を縦断してみようっと。（Ｈ）