水漬く魂(第5部) の商品レビュー
その後の新左翼を書く河井雄之進を書く第5部は良かった。読み応えがあった。息が詰まる。最後の阿部剛の告白は胸にきた。ここだけでも、読んできて良かった。 でもそれだけに、全5巻のこの小説の全体の構成がよく分からん。真帆子いらないんじゃないの? 堀口大示と河井雄之進の二人の男の物語でよ...
その後の新左翼を書く河井雄之進を書く第5部は良かった。読み応えがあった。息が詰まる。最後の阿部剛の告白は胸にきた。ここだけでも、読んできて良かった。 でもそれだけに、全5巻のこの小説の全体の構成がよく分からん。真帆子いらないんじゃないの? 堀口大示と河井雄之進の二人の男の物語でよかったのではないか。 とくになにか、設定だけで使い捨てられた感のある、姉の比呂美や、田舎ヤクザの源起や、銀蔵や貞はどうなったんだ? あとテレビ局に務める息子のうつ病についても。労働者であると同時に下請けを搾取する立場にいる彼について、この父は理解も考察も全方向でぞんざいじゃないか。(次男ははっきりと不要だった。) 私は、源起は越山会、銀蔵と貞は大正デモクラシーなり自由民権運動なりで出てくると思った。「反骨の大河」ならば、それはいいな、と。 いやそうではなくて、人間の存在と社会と性というところに言ってもいいと思った。つまり、阿部剛が最後に行き着いたところだ。 なんだかそれが、ねじれながらも、どちらも消化不良になっているように思う。それは、そのまま、堀口大示、あんたの姿そのものじゃないのか? ・・・と書いてみて思ったが、もしかして、まさにこの本で書いているのはそういうこと?
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