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ムンク伝 の商品レビュー

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2022/10/18
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 世紀の子-ムンク    -2008.07.19記 「レオナルド.ダ.ヴィンチが人体の陥凹を探り、屍を腑分けしたように、わたしは魂を腑分けする」 1944年1月23日、ムンクは誰にも何も告げず静かに死んだ。 息を引き取ったこの日の午後も、彼はドストエフスキーの「悪霊」を読んでいた。 死の床に就いたときに見つめたもの、それは彼自身が描いた一枚のヌード画だった。 ムンクはこの絵の女性を、ドストエフスキーの小説「やさしい女」の自殺したヒロインに因んでクロポトカヤと呼んでいた。 「‥わたしは生まれたときにすでに死を経験している。ほんとうに生まれるのは、ひとはこれを死と呼ぶが、まだ先のこと。わたしたちが去るのではない、世界がわたしたちから去ってゆくのである‥‥わたしの屍は腐り、そこから花が育つだろう、わたしはそうした花のなかに生きつづける‥‥死は人生の始まり、新たな結晶化の始まりである」 この「世紀の子」が死を迎えたオスロは、当時ナチス.ドイツの占領下にあった。 ナチスは一芸術家のこの静謐なる死に、麗々しく飾り立てた大祭を執り行い、彼の葬儀を徹頭徹尾国策宣伝の具と化し、蹂躙した。 若き日のムンクが最愛の母と交わした、いずれの日にか再び結ばれ、二度と別れることのないように、との約束を守ることまでが妨げられ、父母らの眠る墓にともに葬られることは許されなかった。

Posted byブクログ