もっと知りたい雪村 の商品レビュー
雪村周継は室町後期から戦国時代の画家・僧侶。常陸国に生まれ、関東を転々としながら絵を描き、八十年余りの生涯を送った。 美術番組で「呂洞賓(りょどうひん)図」を取り上げていて、興味がわいたので借りてみた。自分自身がビギナーなので何とも言い難いが、ビギナー向けによくまとまっている本...
雪村周継は室町後期から戦国時代の画家・僧侶。常陸国に生まれ、関東を転々としながら絵を描き、八十年余りの生涯を送った。 美術番組で「呂洞賓(りょどうひん)図」を取り上げていて、興味がわいたので借りてみた。自分自身がビギナーなので何とも言い難いが、ビギナー向けによくまとまっている本なのではないかと思う(しかし、私の見た番組とスタンスがよく似ているような・・・? 監修者が同じなのかもしれない)。 雪村は謎多き人物なのだそうである。雪村の生涯について語られた文書がそれほど多く存在せず、推測に頼る部分が多いらしい。 武士の家に生を受けたが父に疎まれ廃嫡、出家して画僧となる。名前や後世の文書から、雪舟と師弟関係にあったのではと推測される向きもあるが、雪舟は西に住み、雪村は箱根から西には行ったことがないようであり、また生年も80年ほど隔たっているため、直接の師弟関係があったとは考えにくいそうだ。 後年、尾形光琳や酒井抱一らも雪村を好み、光琳は模写も残している。 なんと言っても呂洞賓図の闊達な感じが楽しい。たぁ!と叫びつつ、天空の龍と戦う、天翔る呂洞賓。 この他、「布袋童子図」(後ろ姿の布袋さんが荷物を背負うのを童子が手伝っている)、「猿と蟹図」(ハサミを振り上げる蟹と猿の対決)、「茄子、笹に蟹図」(2匹の蟹がとっくみあい)、「野菜香魚図」(鮎が美しい)、「瀟湘八景図屏風」(端正な風景画)あたりが個人的には好きだった。 子どもが泣いているとき、村人が争っているとき、ただ黙って絵を描いて渡し、渡された方も泣き止み、またケンカを止めて見入ったというエピソードが本書中に紹介されている。さもありなんと思わせる「遊び心」のある絵が多くて、楽しく眺められる。 *「呂洞賓図」は奈良の大和文華館にあるという。京都の野村美術館にも他の絵があるそうだ。この2館ならそこそこ近所なので、いつか見に行けるかな?
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