ブラック・リスト の商品レビュー
▼サラ・パレツキーさん作、シカゴを舞台にした「女私立探偵ウォシャウスキー・シリーズ」です。海外ミステリ好きなら、知らないはずはないシリーズ。個人的には読むのは二作目。 ▼ウォシャウスキー、という名前に既に、WASP的アメリカ社会というか、トランプ的アメリカ社会からのアウトロー的...
▼サラ・パレツキーさん作、シカゴを舞台にした「女私立探偵ウォシャウスキー・シリーズ」です。海外ミステリ好きなら、知らないはずはないシリーズ。個人的には読むのは二作目。 ▼ウォシャウスキー、という名前に既に、WASP的アメリカ社会というか、トランプ的アメリカ社会からのアウトロー的精神が漲っているのですが、さらにはウン十年前からの女性主人公ですから、とにかくマイノリティーの味方、左翼的反骨精神に貫かれています。 ▼お話は、9.11の直後なんですね。ですから2002年くらいでしょうか。黒人ジャーナリストの変死体発見から、テロリストの疑いをかけられたアラブ人少年の逃避行へと。「9.11後のヒステリックなアラブ人バッシング」の精神構造へと進んでいくんです。ネタバレで言うと。。。。 ▼黒人ジャーナリストは、1950年代の「赤狩り」の時代に活躍した黒人文化人たちの歴史ネタを取材していた。行きついたのは、 ・当時、リベラル派として黒人文化人を擁護していたはずの金持ち白人セレブが、我が身を守るために、黒人文化人を含む仲間のことを、赤狩り陣営に「売っていた」という事実。 ・それを知られたくない当の金持ち白人セレブの一族が、黒人ジャーナリストを殺害していた。 ・さらにその現場を目撃されていたので、アラブ人少年のことも「テロリスト」として射殺してしまう。 ・それが、色々証拠はあるのだけど、どこまで裁かれるのかは、「どうなることやら」で終わる。 ・・・というなかなか救いがあまりない、お話。 サスペンス、それなりに読ませますが(結構複雑)。 ▼なんですが、小説全般から、崩れ行くリベラルへの哀惜と、独善的なナショナリズムへの憤怒が溢れるようで、その熱量にはちょっとグッと来るものがあります。2024年の現在から読むと、なんとも現在が「ディストピア」になっちゃってる感がとにかくしてしまうのですが・・・。こういう熱量のエンタメ小説が、日本でも海外でも、読まれると良いなあと思いました。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
探偵ウォーショースキーの12作目。 9.11の直後とは。 ここへきて、ヴィクとの距離感がぐんと縮まった気がした。 元自分の屋敷に侵入者がいるからつきとめてほしいという、 金持ちの老婦人からの依頼を受けるヴィク。 屋敷の池で男性の遺体を発見し、 「赤狩り」の時代の上流社会の闇と 現代の「テロ狩り」に巻き込まれていく。 恋人のモレルはアフガニスタンに危険な取材に出かけていて、 心配でしょうがないヴィク。 ロティはあっさり日常に戻ったようだが、 助手を務めていたメアリがいなくなっていて残念だった。 面白かったのは、ヴィクがテロリストをかくまっていると捜索に来たFBIたちが、 近所の人たちが大騒ぎをはじめて、 子供が「パレードなの?」と聞いていたところ。 最後、雪の中を思い出のコテージへヴィクを案内した九十一歳の女性と、 スノーモービルでかけつけて銃を乱射した推定六十代の女性の闘いは、 かなり怖かった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
数少ない上得意からの依頼で、夜間の侵入者についての調査を始めたところ、侵入者を追ううちに敷地内の池に落ちて死体を引き上げてしまう。侵入者と死体についてさらに調査を進めると、過去のシカゴの上流階級の内輪話に踏み込んでいくこととなるのだが、すでに亡くなった者もおり、複雑な人間関係を読み解くのに難航する。そこへテロと関係が疑われる少年が事件の目撃者として入り込む。 いつもは登場人物の人物描写や心理描写が多いのだが、今回はシカゴの上流階級それ自体の描写にも力が入っている。最後、事件全体の取り調べが始まったところとはいえ、上流階級の有力ファミリーのマダムは人を射殺しておいて逮捕されないんだよなあ。だけど、それでいいのか?それまでの経緯もあって身内の複雑な心理も描かれているが。日本でも似たようなケースに関連し上級国民という言い方が流行っているが、定着しそうな気もする。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
700ページ超の1冊で、持ち歩きもできないし、かなり時間がかかるかなと思いながら読み始めたのだが…テンポも展開もよく無事に読了。 さまざまな事柄が絡まりあって進むなか、ヴィクが悪戦苦闘しながらも推理を深めていく過程を素直に楽しめた。
Posted by
9.11以降のアメリカの様子がよく描かれています。所謂‘愛国者法”。これによって、疑心暗鬼になるV.I.の姿も描かれています。 あとがきでも触れられていますが、このところ「年とった」とか「疲れた」とか言うボヤキ話が多かったV.I.ですが、この作品では、そう言ったボヤキ話は減って...
9.11以降のアメリカの様子がよく描かれています。所謂‘愛国者法”。これによって、疑心暗鬼になるV.I.の姿も描かれています。 あとがきでも触れられていますが、このところ「年とった」とか「疲れた」とか言うボヤキ話が多かったV.I.ですが、この作品では、そう言ったボヤキ話は減って、若かりし頃を彷彿させるような八面六臂の活躍を示しています。V.I.は、こう来なきゃね。 気になるのは、ロティの出番が減ってきているところ。V.I.が年齢を重ねているんですから、年上のロティはより年齢を重ねているわけで・・・。まぁ、診療所も運営しているようなので、そう言う点での心配は今のところ無いと思いますが、小説なのに珍しく登場人物が歳を取っていく形式を取っているので、何れはロティとの別れもあるんでしょうね。
Posted by
おもしろくないわけじゃちっともないんだけど、いかんせん長かったかなー。あと登場人物が多くて人間関係が複雑で。わたしがちびちび読んでるのがいけなくて、一気に読んだらもっとおもしろく読めた気はする。でも、なんというかリアルなアメリカ社会みたいなのが描かれていて、すごく読みごたえがあっ...
おもしろくないわけじゃちっともないんだけど、いかんせん長かったかなー。あと登場人物が多くて人間関係が複雑で。わたしがちびちび読んでるのがいけなくて、一気に読んだらもっとおもしろく読めた気はする。でも、なんというかリアルなアメリカ社会みたいなのが描かれていて、すごく読みごたえがあった。赤狩り、とか、人種問題、とか、貧富の差とか。テロ以降の令状なしで盗聴とか捜査とかできるって法律とか。おそろしい……。さすがサラ・パレツキーという感じで、単なる女性私立探偵モノっていうのとは格が違うという感じだった。ヴィクはいつもいつも、肉体的にひどい目にあってでもまったく休めずにさらにひどい目にあい、体力の限界までがんばる。ヘンだけど、わたしなんてヴィクに比べたら全然ラクなんだ、がんばらなきゃ、とか思ったりする。ヴィクの孤独感を感じながらもひとりで自立してがんばっているという感じが好き。今回、戦地に行ってるジャーナリストの恋人のことが頭から離れないってのも、それはまたそれでよかったな。しばらく離れていたけど、やっぱりヴィク・シリーズはこれからも読んでいきたいかも。
Posted by
9.11後、まだ半年の2002年3月のアメリカ。 空気が変わったことを危ぶみながら過ごす〜女私立探偵のヴィク。 恋人のモレルはジャーナリストで、アフガニスタンにいるため、なかなか連絡が取れないという不安もある。 顧客のダロウ・グレアムからの意外な依頼で、高級老人ホームに暮らす母...
9.11後、まだ半年の2002年3月のアメリカ。 空気が変わったことを危ぶみながら過ごす〜女私立探偵のヴィク。 恋人のモレルはジャーナリストで、アフガニスタンにいるため、なかなか連絡が取れないという不安もある。 顧客のダロウ・グレアムからの意外な依頼で、高級老人ホームに暮らす母ジェラルディンが向かいに見える自宅(もう誰も住んでいない)に不審な灯りが見え、警察に取り合ってもらえないために調査して欲しいということ。 大金持ちの暮らす大邸宅が並ぶ土地に潜入。 ヴィクは死体を発見してしまう。黒人ジャーナリストが何故そんなところに? 遺族から依頼を受けて、調査することになります。 ベイヤード出版のカルヴィン・ベイヤードも近くに住み、かってはヴィクの憧れの人物だったが、今は痴呆症とわかる。 その孫娘のキャサリンと暗闇でぶつかるが… 何かを隠している少女。 そして、狭い社交界の住人達の絡み合う過去とは。 女性ながら泥池に潜水もいとわぬヴィクの行動力に、少女は救われるでしょう。 なかなか読み応えありました。 2009年10月初登録。 著者は1947年生まれ。1982年シカゴの女性探偵V.I.ウォーショースキーを誕生させる。 この作品は2003年発行。この時点でこの内容、さすがです。 2004年9月翻訳発行。 2004年、CWA最優秀長篇賞受賞作。
Posted by
隣の空き家に人がいるらしいので調べてほしい。旧知の依頼主からの頼みで出かけたところ死体を発見する。それがきっかけでアメリカの上流階級のスキャンダルとテロリスト問題に巻き込まれてしまう。愛国と自認する自由の国と、9・11後の自己矛盾のアメリカのジレンマが絵が描かれている。
Posted by
- 1