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イスラーム哲学の原像 の商品レビュー

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9件のお客様レビュー

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2024/04/21

ユダヤ教、キリスト教と同じ一神教で同じ聖地も持つイスラム教。ただイスラム教は宗教を超越した社会を指すとも言われるので根本をなす哲学を理解したく読んでみた。 難解な表現があって全ては理解できないものの読み進めると、存在一性論のスーフィズムはなかなか興味深いものであることがわかる。...

ユダヤ教、キリスト教と同じ一神教で同じ聖地も持つイスラム教。ただイスラム教は宗教を超越した社会を指すとも言われるので根本をなす哲学を理解したく読んでみた。 難解な表現があって全ては理解できないものの読み進めると、存在一性論のスーフィズムはなかなか興味深いものであることがわかる。近代的な観点からいくとスーフィズムは非科学的なものと捉えてしまうかもしれないが、仏教や老荘の思想に通じる点があるというのは自分の中での発見でした。 あと、時間と存在の絡みでハイデガーが出てくるあたりは、おおそうくるのか、という驚きもあり。洋の東西を越えて哲学や宗教を俯瞰すると見えてくる世界が変わるというとても経験でした。 最後に、イスラム哲学の現代を代表する人が誰なのか知りたくなった。資本主義の純化したものとも言える新自由主義的な考えにどう向き合うのか?この著書に出てくる哲学者イブン・アラビーの本を読むと何かヒントがあるのかな。

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2021/01/29

イスラム哲学の一つのピークとしての「存在一性論」を探求しつつ、その考えを「東洋的」な思想の一つの底流?として捉えようとする試み、かな? 井筒俊彦さんの本は、テーマが馴染みがなくて、かなり難しいものが多いのだが、講演をベースとしたものなので、比較的、近づきやすい本かな? イスラ...

イスラム哲学の一つのピークとしての「存在一性論」を探求しつつ、その考えを「東洋的」な思想の一つの底流?として捉えようとする試み、かな? 井筒俊彦さんの本は、テーマが馴染みがなくて、かなり難しいものが多いのだが、講演をベースとしたものなので、比較的、近づきやすい本かな? イスラム哲学以前に、神秘主義の一般的な説明の部分で、かなり驚いた。おお、たしかにそういう考え方のものって、キリスト教でも、仏教でも、ある種の心理療法などでもあるあるだな〜と思った。 で、イスラム特有の思考として、イブン・アラビーの「存在一性論」が紹介されるのかなと思っていると、スーフィーの修行とそのプロセスでどんな状態にいたるのかという説明が結構、つづき、後半でようやくイブン・アラビーの話しになってくる。 が、これがなかなか分からなくて、なるほど、いきなり哲学の説明をしても分からないので、スーフィーの修行の話がつづいていたのだな〜とわかってくる。 分からないなりに、読んでいくと、荘子とか、老子となんか近いんだな〜、あと仏教とかも近そうなことがわかってくる。イスラムは人格神の一神教なんだけど、それが無とか、道とか、空とかと両立するのか〜と感心。 そして、最後のほうで到達する境地は、なんか突き抜けている。これはすごいインパクト。 けど、結構、難しかったので、イブン・アラビーをもうちょっと深めてみようということにはならないかな? それにしても、井筒さんの学識の広さと深さは、とんでもないな〜と改めて思う。

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2020/06/05

おもしろかった。 イスラムにこのような、仏教とも共有するところのある存在論があることを初めて知った。存在一性論の形而上学は存在顕現の構造学であると結論している。存在のゼロポイントにどう向き合うのかは宗教によって異なる。そこに様々な宗教を学ぶ意味があると思う。

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2018/07/15

イスラーム哲学においては、神秘主義的な実在体験と哲学的思惟の根源的な結びつきがあることを紹介してくれている本。読みやすくてなかなか興味深かったです。 神秘主義というと、なんともアヤシゲなイメージがありますが、この本のように理路整然と解説されると、そういうアヤシゲは雲散霧消してしま...

イスラーム哲学においては、神秘主義的な実在体験と哲学的思惟の根源的な結びつきがあることを紹介してくれている本。読みやすくてなかなか興味深かったです。 神秘主義というと、なんともアヤシゲなイメージがありますが、この本のように理路整然と解説されると、そういうアヤシゲは雲散霧消してしまいます。実際のところ、どうなんでしょうね。 神秘主義のアヤシゲは、その理論構築にあるのではなく、秘儀的実践にあるということなのかもしれません。では、神秘主義において、構築された理論と秘儀的実践は必然的に結びついているのか? そこは、部外者たる我々には知りえない部分なのでしょうか…。 あるいは、私のもっている神秘主義のアヤシゲなイメージは、単にインディ・ジョーンズによってうえつけられただけかもしれません。 それはそうと、こうした神秘主義的な理論構築の枠組みは、大小の異同はあれ、後期ハイデガーの思索と通ずるところがあるなあと感じながら読みました。(2018年7月7日読了)

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2016/08/29

イスラーム哲学関連の本は初めて読んだが、面白かった。もっと早く読むべきだった。 「イスラーム哲学」や「神秘主義」という単語にはかなり近寄りがたい雰囲気があるけれど、仏教や老荘思想、ウパニシャッドといった東洋思想と共通する部分も多く、むしろそれらを理解する助けになるようなものだ。...

イスラーム哲学関連の本は初めて読んだが、面白かった。もっと早く読むべきだった。 「イスラーム哲学」や「神秘主義」という単語にはかなり近寄りがたい雰囲気があるけれど、仏教や老荘思想、ウパニシャッドといった東洋思想と共通する部分も多く、むしろそれらを理解する助けになるようなものだ。この本ではそうした東洋思想との比較も豊富なので、とても参考になった。 この本でおもに取り上げられているのはイブン・アラビーの「存在一性論」という考え方である。これがイスラームの中心思想というわけでは決してないということに注意が必要だ。それでも、東洋思想に通底するものについて考えるときにとても役立つものだと思う。膨大な文献からこの思想を取り上げ、他の東洋思想の術語を用いて比較しつつ、わかりやすくまとめているのはほんとうにすごい。 以下は内容についてのメモ。 イスラームと聞くと「唯一神アッラーへの絶対的帰依」というイメージがまず浮かぶ。しかし、神秘主義哲学では「絶対一者」と「統合的一者」を区別し、後者をいわゆる「アッラー」と考えるなど、複雑でダイナミックな存在論が展開されている。 イスラーム哲学の特徴として、「この世」に対する考え方が肯定的であるということが挙げられる。修行によって「無の境地」にたどり着くというプロセスは多くの他の東洋哲学と共通している。しかし、悟りに至ったあと、この世を虚無ととらえるのではなく、むしろ神の「慈愛の息吹き」による現象だととらえる。こういうところにウパニシャッドや仏教との大きな違いがあり、一神教らしさがある。

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2014/07/13

一般的にイスラムは魂というものを非常に重視する。人間を肉体と魂との結合と考え、魂の救済にその宗教性の全てをかける。この考えでは肉体は物質的なもの、つまり汁朝敵な実態であり、魂は非物質的なもの、つまり非物質的なものとしての魂はそれ独自の1つの構造を持つと考える。

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2013/11/13

再刊を喜びたい。この本はイスラーム哲学全体を把握するための本ではない。 イスラーム教神秘主義、なかでもイブンアラビーの存在一性論について、哲学的思惟と形而上学的体験がぶつかり合い思想の生起する場を、新書とは思えないほど集中的に、生々しい臨在感をもって訴えかける。

Posted byブクログ

2011/05/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

[ 内容 ] [ 目次 ] [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]

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2009/10/07

13世紀イランのイブン・アラビーにはじまる存在一性論の哲学について書いてある。同じ著者の『イスラーム思想史』の後の時代について書いたもの。  ただし、イブン・アラビーからの引用がほとんどなく、実際にイブン・アラビーがどんな表現をつかっていたのかは不明なところが残念。この点は論文を...

13世紀イランのイブン・アラビーにはじまる存在一性論の哲学について書いてある。同じ著者の『イスラーム思想史』の後の時代について書いたもの。  ただし、イブン・アラビーからの引用がほとんどなく、実際にイブン・アラビーがどんな表現をつかっていたのかは不明なところが残念。この点は論文を読む必要があるかも。だが、存在一性論の考え方、「○○が存在する」ではなく、「存在が○○する」という方式で形容詞的に世界を理解する方法などははっきり分かる。最後にでてくる「絶対的一」と「統合的一」のちがいも面白い。

Posted byブクログ