族譜・李朝残影 の商品レビュー
地面師のようにサラッと読める短編ではなく、戦時中の日本の朝鮮半島への横暴を描いた作品にこそ、梶山氏の真骨頂があるのだと知りました。感情移入しやすい等身大の文章で素敵。
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民族とは、国家とは、個人とは、等々読んでいてしんどいテーマなのだけれども、文章がおそろしく読みやすいので物語がすんなりと頭の中に入ってきてしまう。
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【由来】 ・佐藤優 逆境 P210 【期待したもの】 ・ ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。 【要約】 ・ 【ノート】 ・ 【目次】
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日韓併合時代の韓国を舞台にした小説を読むのは初めてだった。どの小説も主人公はみんな日本人だが、他国を侵略し、他民族を支配している国民のひとりとして理不尽な事柄に直面する。そのときに感じるものすごいストレスの描写がとても印象的だった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
日本人、むしろ本国人という表現の方が正しいような気もするが、の自分にはどうも居心地が悪い本だった。サルトルを、ファノンを、エメェエ・セゼールを読んだフランス本国人も同じだったのだろうか。 族譜は、創氏改名がいかに朝鮮人(戦中の話なので、あえてこう呼ぶ)を蹂躙したのか、という話だ。もっとも、小説という形をもって、著者が著者自身の体験を述べているような感覚にさせる告白のように思えるのだが。非常に親日的である、とある地主の創氏改名に関する話。彼の影響力によって、役所に勤める主人公は、自身の担当地区の朝鮮人の改名を、なかなか成功させることができない。彼自身、徴兵逃れのために、この仕事をしており、やる気もない。しかし、上司はそれを許さない…。李朝残影もまた、舞踊に関する話。 正直言って、胸糞悪い本ではある。過去に日本人はこんなことをした、だから韓国、北朝鮮に支援をしろ、と使おうと思えば使えるからだ。ただ、それは、否定できない部分があるから、まだいい。ただ、この本が、軍国主義、軍人の、また彼らに協力した日本人の、単なる責任転嫁に使えてしまうのは、いかがなものかと思う。 本来、このような本が目指すべきなのは、読者が持っている、蔑視や差別感情、例えば、日本人と朝鮮人が合同で「捧ゲ砲」を行っているワンシーンでの、 『仲間たちは、優越感を露骨に顔の色に浮かべて、日本人である特権を誇示するように胸を張り肩を怒らしていた』(P.201) をえぐり出すことであろう。そして、彼らが、自分自身の中にあるそれらの感情に気付き、悩む。これこそが必要だ。しかし、この本の描き方だと、 『課長にとっては、七百年の歴史も、族譜も、一門の価値もない。課長はただ、南総督から指令された『創氏改名の早急なる実施と普及」にしか関心がないのである』(P.47) このように描写される人間に、嫌々従っていたのであって、心から差別を望んだわけではない。こうやって、他人の責任として、逃げる事が出来る。 したがって、植民地支配を考えさせるには、カミュやサルトル、ファノンほどの影響力がないように思えた。しかし、日本が植民地を持つ国であった。この事実を風化させないためには、非常に重要な本ではあると思う。
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