空中スキップ の商品レビュー
撃たれる!と、身構える間もなく、鮮やかに撃ち抜かれる。 バドニッツが放った23発の弾丸が、きれいに急所を貫通してゆく。 我に返って胸に空けられた風穴をまじまじと覗き込む。奥からカラリとした笑い声が響いてくる。 穴に見えたのは、僕の内側に巣食うものなのか、それとも僕という男を通過し...
撃たれる!と、身構える間もなく、鮮やかに撃ち抜かれる。 バドニッツが放った23発の弾丸が、きれいに急所を貫通してゆく。 我に返って胸に空けられた風穴をまじまじと覗き込む。奥からカラリとした笑い声が響いてくる。 穴に見えたのは、僕の内側に巣食うものなのか、それとも僕という男を通過して背後に覗ける、歪んだ世界の有り様なのか。 奇妙な物語の中で、人々は戸惑い、苛立ち、拒絶し、そして気づけば順応している。常識を取っ払って皮を剥いてしまえば、誰も彼も結局は醜い同じ人間だということをジュディ・バドニッツは強烈にシニカルな視線で暴く。 だが、それは一方でとても優しい視線なのだ。 あなたも私も、歪んだ残酷な世界のイカれた住人だ。 そのことを受け止めたとき、孤独が消える。あなたはもうひとりじゃない。 僕の撃ち抜かれて飛び散った肉片はどこへ行ったのか。 願わくは、捏ねて焼いた小さな人がたとなって、バドニッツ世界を旅していて欲しい。グレイハウンドバスに乗って、目的地などなく。
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支離滅裂、奇想天外、荒唐無稽… グロすぎたり、全く救いのない展開だったり、頭に入ってこなかったりでなかなか読み進めず。全部は読めなかった。 これが絶賛されるって、アメリカの文学界はどうなってるんだろうか…?
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グロテスクで摩訶不思議。そんな描写があるってわけじゃないのに、えぐみがすごい…。こんなものを書く作家がいるのか…。
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表紙からは想像もできないほどの 切れ味の鋭い文章が怒涛の如く 読者を時に惑わせる作品です。 切れ味良好、さっくり、と。 著者の職業経験から 赤ん坊を扱う作品はまた 考えさせられるものがあります。 命がはぐくまれなくなる社会もまた 恐ろしいものですし、 そのプロセスがない社会もまた 恐ろしいものなのです。 結局のところ、人は存在自体が 罪なのかもしれませんね。 「借り」における主人公の母親の親族の 手のひらの返し方といい。 自分たちだけよければいいわけで。 この作品に関しては 読書の際は要注意。 とてつもなく落ち込みます。
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目次より ・犬の日 ・借り ・秋冬ファッション・カタログより ・道案内 ・チア魂 ・アートのレッスン ・イェルヴィル ・アベレージ・ジョー ・飛ぶ ・作曲家 ・公園のベンチ ・百ポンドの赤ん坊 ・本当のこと ・お目付け役 ・バカンス ・スキン・ケア ・産まれない世界 ・レクチャー ・電車 ・パーマネント ・ブルーノ ・焼きつくされて ・ハーシェル どれもこれも理不尽で不条理。 愉快な設定のすくわれない読後感。 これは万人受けする作品ではないだろう。 けど、ハマればくせになること請け合いだ。 日常と混在する非日常。 重みすら感じる違和の正体を探ろうと手を伸ばせば、そこには何もない。 何かは確実にそばにいたはずなのに、感じることができたのに、手を伸ばせば何もない。 それは夢のようなもの。 それも、悪夢に近い。 逃げれば追いかけてくるが、受けいれるとそれは消える。 感触だけを残り香として。 ショートショートの感想なんて書けないよ。 何書いたってネタバレになるんだからさ。 でも、例えば「借り」 母が心臓の病に倒れる。 心臓移植をするしか助かるすべはない。 だけどドナーを見つけるのには時間がかかりすぎる。 母の姉たちは僕に言う。 「あんたの心臓でどう?」 僕の心臓をあげちゃったら、僕はどうなる? 「そんなこと、あとで考えればいいじゃないの」 「そもそも自分の母親の命を救うのに、どうして心臓くらいやれないんだ」 これ想像以上に相当悲惨な話ですが、なんだかからりとしているのは僕の人柄によるのでしょうか。 読み終わったとき笑っちゃったもの。 世の中はシュールで不快なことにふたをしたがるけれども、たまには解放してやらないと、キレイなだけの上っ面な世界で窒息してしまうかもな。 そんなことを思いました。
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#岸本佐知子訳。空中でさらに跳ぶ。世界がひょいと反転するときの手付きが鮮やかな短編集。 #今度は俺らの番、とヌードモデルから服を脱ぐことを強要される学生たち。統計の結果、世界で最も平均的な男として、大統領や神様から意見を求められるアベレージ・ジョー。パンのように生地をこねて赤ん...
#岸本佐知子訳。空中でさらに跳ぶ。世界がひょいと反転するときの手付きが鮮やかな短編集。 #今度は俺らの番、とヌードモデルから服を脱ぐことを強要される学生たち。統計の結果、世界で最も平均的な男として、大統領や神様から意見を求められるアベレージ・ジョー。パンのように生地をこねて赤ん坊を焼く職人、といった初期設定からおかしな話も、「つぼみの形に小さく丸めた耳が竃で焼かれるうちに花開いて」といった細部の描写にオチまで連れていかれて、呆然。 (2008/7/23)
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『空中スキップ』タイトル通り想像(妄想?)が飛びまくっている短篇集だった。最初の「犬の日」でえぇっ!となってすぐ心をつかまれてしまった。シュールでブラックな感じがたまらない。しかし奇想というだけでなく、犬に対する末娘の優しさ、バスで乗り合わせた黒人の老女への思い、皮膚病になった少...
『空中スキップ』タイトル通り想像(妄想?)が飛びまくっている短篇集だった。最初の「犬の日」でえぇっ!となってすぐ心をつかまれてしまった。シュールでブラックな感じがたまらない。しかし奇想というだけでなく、犬に対する末娘の優しさ、バスで乗り合わせた黒人の老女への思い、皮膚病になった少女に応える医師、弱い者への眼差しが優しい。そしてハッピーエンドになれないのがほろ苦い。バドニッツの大ファンになってもっと読みたくなった。
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ブラックでシュールな世界。 行き過ぎず、物足りなさもない、ちょうどいい世界。 それらを物語る才能に感心するばかり。
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メルヘンな表紙に惹かれて読んだのだけれど・・・びっくりするくらいダークです! それはもう後味の悪いこと!! 短編集なだけに、「えっ?えっ!?」という間に展開していきます。 落下するだけの絶叫マシンみたいな。 比較的好きだったのは『アートのレッスン』、『アベレージ・ジョ...
メルヘンな表紙に惹かれて読んだのだけれど・・・びっくりするくらいダークです! それはもう後味の悪いこと!! 短編集なだけに、「えっ?えっ!?」という間に展開していきます。 落下するだけの絶叫マシンみたいな。 比較的好きだったのは『アートのレッスン』、『アベレージ・ジョー』、『スキン・ケア』、『産まれない世界』かな。 他の作品よりも無駄が無い感じ。(変な日本語) わかりやすく言うなら、2時間ドラマと「世にも奇妙な物語」。 また、訳者あとがきにもあるけれど、「子ども」がテーマになっている話が多いかも? 未来のことまで嫌でも考えさせられるのがすごいと思った。 子ども・・・可愛いだけじゃないのね。
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バドニッツの処女短編集23話。岸本さんの翻訳はわかりやすくスムーズに頭に入ってくる。1番最初の短編犬の日の一行目で、笑うべきか気持ち悪がるべきか悩む。日常的にどんどんずれている、狂っている世界。切ない感じとグロテスクとなぜか美しさが同居してる感じ。気に入った印象に残る短編を列挙し...
バドニッツの処女短編集23話。岸本さんの翻訳はわかりやすくスムーズに頭に入ってくる。1番最初の短編犬の日の一行目で、笑うべきか気持ち悪がるべきか悩む。日常的にどんどんずれている、狂っている世界。切ない感じとグロテスクとなぜか美しさが同居してる感じ。気に入った印象に残る短編を列挙しようとしたが、ほとんどお気に入り短編なので、書くのはやめる。
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