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歌集 乱反射 の商品レビュー

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2024/04/22

小島なおさんの歌集ですね。 2007年発行。わずか二十一才での第一歌集です。 十八才の時に、第五十回角川短歌賞を受賞されています。十七歳から二十歳までの作品二七四首が収められています。 素直で真っ直ぐな清々しい歌集ですね。  こころとは脳の内部にあるという    倫理の先生の目...

小島なおさんの歌集ですね。 2007年発行。わずか二十一才での第一歌集です。 十八才の時に、第五十回角川短歌賞を受賞されています。十七歳から二十歳までの作品二七四首が収められています。 素直で真っ直ぐな清々しい歌集ですね。  こころとは脳の内部にあるという    倫理の先生の目の奥の空  春の夜の音楽室に昆虫のような    無数の譜面台あり  晩春はうたた寝の季 ゆるくゆるく    バイオリンの音が聞こえる  牛乳のあふれるような春の日に    天に吸われる桜のおしべ  駐輪場の隅の桜は花びらを    ペダルに落とす風なき日暮れ  はつなつの若楓のきらめいて    その下通る人ら美し  制服のわれの頭上に白雲は    吹きあがりおり渋谷の空を  金木犀のにおいを浴びてのぼりゆく    坂の上にははるかなる君  夏空へ黙って階段のぼりゆく    逆光まぶしくきみが見えない  つつじの花見ればなつかし 陽のにおい    われは重きカメラとなりぬ  わが猫にとって初めての春がきて    ましろきひげはりんりんと張る  花びらを散らしつづける木の下で    深呼吸すればつきぬける春  早春の気配きざせる風のなか    まぶたは薄く透きとおりゆく  春色のコートはおって別れ際    すこしふりむく友のO脚  晴れの日はなぜか静にかなしくて    変わらずにある四月のポスト  薬屋の屋根をも濡らし生きている    世界をつつむあたたかい雨 解説の馬場あき子さんは『少女らしい鮮やかな感性をみせながら、斬新であるよりも、むしろ丁寧に温かな心を反映させた言葉に新鮮さが感じられる歌である。』と綴られています。また、『持ち前のやわらかな感性の清新さとやさしさ、本質に届こうとする心の力、そして現代短歌の本流をなす文体をすでにもっていることが作者の強みだ。』とも添えられています。 若さのエネルギーを歌えあげた、気持ちの良い歌集ですね。           

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2022/02/23

バス停やポストや電柱ひびき合い痛いくらいに夜は澄みゆく 噴水に乱反射する光あり性愛をまだ知らないわたし 書きかけてやめた手紙を想うとき切手の中の砂丘をあるく 何ひとつ知りすぎたことないままにわれは二十歳になってしまいぬ . 著者の17〜20歳の歌集 この歳にして、莫大な量...

バス停やポストや電柱ひびき合い痛いくらいに夜は澄みゆく 噴水に乱反射する光あり性愛をまだ知らないわたし 書きかけてやめた手紙を想うとき切手の中の砂丘をあるく 何ひとつ知りすぎたことないままにわれは二十歳になってしまいぬ . 著者の17〜20歳の歌集 この歳にして、莫大な量の歌を浴びて消化してきたんだろうなと思わせる丁寧さと安定感、落ち着いた感性。"お手本"みたいな印象を受けた

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2014/01/31

うーん、『バスとバスすれちがいたる一瞬に十月の風は光ってみえる』にあるような、微妙な文語とか(自分のものになっていないように感じる。字数的な問題で選んでいるように見える。あるいは私がこの混ざりかたが嫌い。) とか、 『うつぶせにねむればきみの夢をみる夢でもきみはとおくをみてる』に...

うーん、『バスとバスすれちがいたる一瞬に十月の風は光ってみえる』にあるような、微妙な文語とか(自分のものになっていないように感じる。字数的な問題で選んでいるように見える。あるいは私がこの混ざりかたが嫌い。) とか、 『うつぶせにねむればきみの夢をみる夢でもきみはとおくをみてる』にあるようなぞんざいな言葉の使い方(わざとなのだろうが)が気になってしまい、全体として良いと思えなかった。 良いと思った歌は、 『噴水に乱反射する光あり性愛をまだ知らないわたし』 『夕映えの部屋でしずかに燃えている母の小さき老眼鏡は』 『季節すぐ移り変わって冷蔵庫ひらけば深い静寂がある』

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2011/09/01

一日だけ秋を思わせる夏の日があって、電車のなかでだけでも季節に漂っていたくて持ち歩いたのだが、その目論見は上手くいった。本書は角川短歌賞最年少受賞歌人の第一歌集。第二歌集『サリンジャーは死んでしまった』が素晴しかったので、遡って購入したのだ。『牛乳のあふれるような春の日に天に吸わ...

一日だけ秋を思わせる夏の日があって、電車のなかでだけでも季節に漂っていたくて持ち歩いたのだが、その目論見は上手くいった。本書は角川短歌賞最年少受賞歌人の第一歌集。第二歌集『サリンジャーは死んでしまった』が素晴しかったので、遡って購入したのだ。『牛乳のあふれるような春の日に天に吸われる桜のおしべ』『中間試験の自習時間の窓の外流れる雲あり流れぬ雲あり』『まだ染めぬ黒髪香る妹は首のうぶ毛をそよがせて寝る』『梅雨の夜は重たく赤く濡れている小さき球のさくらんぼ食む』『ひっそりと鏡の中を影うごく冷たい雨の降る秋のあさ』『隣家の犬にも春は訪れて鼻の頭がつやつやとする』『なんとなくかなしくなりて夕暮れの世界の隅に傘を忘れる』『マンションの工事現場に響く音まっすぐのびて空を叩けり』『学食で栗味アイスを食べながら落葉の空を見る深い秋』。17歳から20歳までにつくった歌が時系列で収められているようだ。発行当時の自選とは違うが、3章に分かれているうちの第1章、つまり著者が高校生のときのものがいい。著者自身が『歌のこともこれからの自分のこともわからなくて、とても不安ですが』、『こんなに早く歌集を出すことについては、今でも迷いがありますが』(あとがき)と書いている通り、大学時代の歌は抽象的で常套句的な比喩も目立ち、著者独自の視点を掴み損ねている。しかし、その「著者独自の視点」が第二歌集で存分に実を結んでいることからも、著者が「迷い」の時期を無駄にはしなかったことがわかる。やはり、大した歌人のようだ。

Posted byブクログ

2009/10/04

短歌とか正直小中高と苦手てだったのですが、この作者さんのインタビューを新聞記事で読んでから好きになりました。

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