ヨシアキは戦争で生まれ戦争で死んだ の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
この表紙の眼差しが、あまりに印象的で、図書館の棚で再び出会った時に、思わず借りることに。 この穏やかで、少し悲しげな瞳で柔らかに微笑むのは、戦後の日本で、米兵と日本女性の間にできた混血児の孤児を預かった、エリザベス・サンダース・ホームから、アメリカに養子に海を渡った少年、後田義明、アメリカの名前は、スティーブ・フラハティ。 ダンスホールで米兵相手にダンスを踊ることで、生計を立てていた女性は帰り道でレイプされる。 子供を手放したくはなかったが生活できなくなり、一時のつもりでエリザベス・サンダース・ホームに預ける。 泣き虫で、おとなしく穏やかな義明は、園長の澤田美喜の1番のお気に入りでもあった。澤田のことを孤児たちは「ママちゃま」と呼んでいた。 ホームの子供達に、野球を教えていたのが、スティーブの引き取り先にもなったロン。まだ25歳であったので、母親が書類上は引受先。 大人しく、穏やかで、はにかむような笑顔の少年は、ダニーという唯一無二の親友ができた。 小学校に転入した時から、何彼と、英語の苦手なスティーブの後ろ盾となって、双子のように信頼しあっていた。 小柄だが俊敏なスティーブは、野球とフットボールでたちまち才能を発揮する。 元来控えめな彼は、おごることもなくますます人気者に。だが終始、ダニーとダニーの家族は特別な存在。 どれだけヒーローになっても、初恋の相手の父親からの人種差別的拒絶を受けたあたりから、アメリカ人にこだわるようになる。 プロ野球からもスカウトがあったにもかかわらず、陸軍に志願し混迷していたベトナムへ。 そこで戦死。 家族に愛され、隣人に愛された彼は、常に自分のアイデンティティを探していた。何者なのか?と。 日本テレビで放映された「子供たちは七つの海を越えた」というドキュメント番組を作ったプロデューサーとその妻が詳しく追った戦争で生まれて、戦争で死んでいった少年の一生を追う。 涙無くして読めなかった作品。
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本を読んで久々に号泣しました。 切ないまでに素直で謙虚なヨシアキの生き様に心を打たれます。 読み進めるうちにヨシアキに魅了されると同時に、幼少期に母代わりとなって彼に愛を注いだ澤田美喜さんの慈悲に心が熱くなりました。
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ノンフィクションなのに、まるでよくできた映画のように 起承転結のあるお話だった。 不幸なる出生の秘密、しかしながら 愛にあふれたやさしい里親たち、ふたつめの家族のようにあたたかい親友一家、 旧きよきアメリカの心躍る青春、差別による初恋の人との別れ、 そしてベトナム戦争による終幕...
ノンフィクションなのに、まるでよくできた映画のように 起承転結のあるお話だった。 不幸なる出生の秘密、しかしながら 愛にあふれたやさしい里親たち、ふたつめの家族のようにあたたかい親友一家、 旧きよきアメリカの心躍る青春、差別による初恋の人との別れ、 そしてベトナム戦争による終幕。 ヨシアキの人生が、ほんとうにこのままのひかりあるもので あったことを願わずにはいられない。 まさに事実は小説より奇なりである。 Amazonでも高評価で、たくさんの人に読まれるべき本だと思うが、電子書籍化されていない。 電子書籍推進派出版社である講談社の本でもまだこういったものがあったか。 残念だ。
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戦後史がビジュアルになるようで面白かった。アメリカというのは不思議な国だと思う。 しかし、こういう内容をテレビの民放が作っていた時代もあったのだな。
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戦後の混乱期、日本に駐留する米兵(コメヒョウに非ず)と日本人女性との間に生れた子供たちの多くが孤児になつたといひます。 孤児となつた理由はいろいろあるでせうが、歓迎されざる存在として生を受けたといふ点で共通点があります。 さういふ孤児たちを引き取り養育してゐた施設の孤児院がありま...
戦後の混乱期、日本に駐留する米兵(コメヒョウに非ず)と日本人女性との間に生れた子供たちの多くが孤児になつたといひます。 孤児となつた理由はいろいろあるでせうが、歓迎されざる存在として生を受けたといふ点で共通点があります。 さういふ孤児たちを引き取り養育してゐた施設の孤児院がありました。「エリザベスサンダースホーム」といひ、現在も創設者・澤田美喜さんの遺志を継いだ人たちが運営を続けてゐるさうです。 そのエリザベスサンダースホームで、本書でその短い生涯が語られる「後田義明=スティーブ・ヨシアキ・フラハティ」も同施設の出身であります。 実母はこころならずも、義明をホームへ託し、必ず迎へに行くと誓つたのでした... 義明はその後米国のフラハティ家の養子となり、米国人スティーブとして生きることになります。しかしあまりに繊細な彼は、スポーツの世界でヒーローにならうとも、米国人として受け入れられてゐないと感じてゐたらしい。 それが理由なのかは明確に語られませんが、野球界での輝かしい未来を約束されながら、スティーブは軍隊に志願します。しかも平時ではありません。ベトナム戦争が泥沼化してゐた最悪の時期でした... 本書が成立した事情もまことにドラマティックであります。面高昌義・直子夫妻の存在がなければ、彼の生涯はかうして世に出ることはなかつたと申せませう。その辺の経緯は読んでみて、と申し上げてをきます。 最近涙もろくなつてゐるなあ、と感じてゐる方は、ハンケチを用意して読まれることをお勧めするものであります。恥づかしながら、わたくしは後半ほとんど泣きながら読んでゐました。 では、ご無礼します。 http://ameblo.jp/genjigawa/entry-11188069581.html
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