日本の人口は減らない の商品レビュー
人口を維持するための出生率を下回って何年も経過しており、また数年前から人口減少が確認されている現状なので、「人口は将来にわたって減少し続ける」ということは常識のようになっていると思います。 それに対して、この本では南氏が医師の論理や動物の本来持つ種の保存の法則に基づいて、人口...
人口を維持するための出生率を下回って何年も経過しており、また数年前から人口減少が確認されている現状なので、「人口は将来にわたって減少し続ける」ということは常識のようになっていると思います。 それに対して、この本では南氏が医師の論理や動物の本来持つ種の保存の法則に基づいて、人口は減り続けることはないという考え方を披露して解説しています。結論としては、1億2000万人を割り込むことはないだろう(p173)というものです。 気候が激変して人口が減るというのは理解できても、今の状況のままで減り続けていくというのは、なんとなく変だと思っていたので、納得できることも多かったです。特にアフリカで人口爆発となっている原因として、平均寿命の低下がある(p110)、というのは驚きでした。 以下は気になったポイントです。 ・出生数は、生活資源・配分率・平均寿命により影響を受ける、つまり、生活資源・配分率が上がると出生数が増える、平均寿命が短縮すると出生数が増える(p4) ・日本の出生率予測が外れる理由として、1)平均寿命の延びが考慮されない、2)GDPやCPI(消費者物価指数)の変化率が考慮されない、3)出生率を予測する方法が誤っている、である(p10) ・女性の社会進出度合いを計るジェンダー・エンパワーメント指数(女性議員、高官、管理職登用率等)によると、日本はフィリピンとハンガリーの間の世界ランク38位、短大以上の高等教育受講率は45%で世界ランク39位であり、先進国の中では最低レベル(p15) ・出生率を高い精度で予測するには、成婚率と結婚後の平均出産数の2変数を、どのような要因でどう働くかを理解する必要があるが、現状ではわからないので、これを定数としている(p15) ・1957年頃は、日本の人口は爆発的に増加すると予測されていて、出生数を抑えて人口増加を防ぐ目的のもと、優生保護法が制定されて産児制限政策がとられた(p16) ・妊娠期間(10ヶ月)と2回の出産の間隔(平均として2年)、20年という出産期間から考慮すると、ヒトの生涯出産数は0から10人の間に分布する(p18) ・動物が安心感、危機感を認知するのは、草原(生活資源)が広いかどうかでなく、増加傾向にあるのか減少傾向にあるかによる(p43) ・平均寿命が長い場合には、環境の受け皿に余裕ができないので、出生数を落とす必要がある(p46) ・出生数x平均寿命=配分率x生活資源(p65) ・一人当たりの生活費は所帯人員数の平方根に比例する、4人家族だと一人暮らしの半分(P69) ・1947年(昭和22年)の生命表では、20歳の平均余命は41年であるが、0歳児は50年である、61年と50年の差の11年は乳幼児死亡率を反映している(p75) ・人口ピラミッドが富士山型になるのは、死亡率が各年齢層で異なるから、山の底辺部分は乳幼児の死亡率の高さを示す(p80) ・1970年代以降の平均寿命の延びは、乳幼児死亡率がこれ以上改善できないレベルに達しているので、成人の長生きを意味する(p99) ・アフリカでの人口爆発の根本的な原因は、平均寿命の低下にある、その原因は、1)経済停滞、2)内戦リスク、3)感染症の蔓延、である(p110、112) ・ダイヤモンド、金、原油等の実物資産の場合は、手にいれた手段がどんな方法であれ、価格・流動性・価値に変化はない(p115) ・敗戦で日本陸軍を除隊して地元県庁に勤めた人の給料は、月給60円(年収720円)であった、当時のレート(1ドル=360円)を考えるとドルの力はもの凄い(p118) ・日本の出生数が2000年以降に再び減少しているのは、GDPの高止まりと平均寿命の延びが原因、付則的な要因として、CPIの下げ止まりと配分率の低下もある(p125) ・現在の有配偶率は平均年収と相関がある、これは長男は結婚して子供をもうけるが、次男以下は独身で過ごす近代以前と同じ構図(p128) ・小型で短命な種は、もともと多産であったため、出生数が押さえ込まれても絶滅を免れた(p157) ・世界には多産多死、多産少死、少産少死、の3つの社会があるが、移民を受け入れているアメリカは3つの社会がある(p172) ・日本の人口は、早ければ2015年頃、遅くとも2025年には1億2000万人を割り込むことなく下げ止まる(p173)
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