イスタンブール の商品レビュー
「わたしは一九五二年の六月七日、真夜中少し過ぎに、イスタンブールのモーダにある小さな個人病院で生まれた」 一画家を目指していた二十二歳までの“自伝”を経糸に、フロベール、ネルヴァル、ゴーチェら西洋の文豪とトルコの四人の作家が描いたこの町の姿を自在に引用しながら、喪われたオスマン・...
「わたしは一九五二年の六月七日、真夜中少し過ぎに、イスタンブールのモーダにある小さな個人病院で生まれた」 一画家を目指していた二十二歳までの“自伝”を経糸に、フロベール、ネルヴァル、ゴーチェら西洋の文豪とトルコの四人の作家が描いたこの町の姿を自在に引用しながら、喪われたオスマン・トルコの栄華と自らの過去を織り合せつつ、胸苦しくも懐かしい「憂愁」そのものとしてのこの町を見事に描く。町を撮らせたら右に出る者のない、トルコを代表する写真家アラ・ギュレルの作品を中心に写真二〇九枚を収録。
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オルハン・パムク初体験はこの本。最初に書店でこの本を手に取った瞬間、この本を読まずにはいられないだろうなという雰囲気が表紙から漂っていた。 写真が豊富に添えられている、それだけでイメージがどんどん広がる、文字を追いかけるスピードを後押ししてくれるエンジンのような存在。この後、ゼ...
オルハン・パムク初体験はこの本。最初に書店でこの本を手に取った瞬間、この本を読まずにはいられないだろうなという雰囲気が表紙から漂っていた。 写真が豊富に添えられている、それだけでイメージがどんどん広がる、文字を追いかけるスピードを後押ししてくれるエンジンのような存在。この後、ゼーバルトの「移民たち」の存在を知るんだけど、あれは画像数ピースで強烈なイマジネーションを喚起させるものだったけど、この「イスタンブール」に添えられている画像はもっと風景に近いものであり、そっと寄り添ってくれるものと言うに近い感じ。 とにかく読み終わる頃には、「ヒュズン」「ヒュズン」と口ずさむ自分がいる。翻訳については不満はない。流麗に読み進める翻訳であったならば、霧の晴れた「ヒュズン」を味わうはめになったことだろうと思うと、ね。
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