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おくのほそ道 の商品レビュー

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2024/08/18

『おくのほそ道』は中学生か高校生のときの国語の時間に、冒頭と平泉のところを読んで以来です。 最初、「江戸時代の文章だし、原文だけ読んでも8割方分かるだろう」と高をくくっていたのですが、全然文意がとれなくてびっくりしました。 まず古典・古歌・謡曲の引用やパロディが豊富ですし、旅先で...

『おくのほそ道』は中学生か高校生のときの国語の時間に、冒頭と平泉のところを読んで以来です。 最初、「江戸時代の文章だし、原文だけ読んでも8割方分かるだろう」と高をくくっていたのですが、全然文意がとれなくてびっくりしました。 まず古典・古歌・謡曲の引用やパロディが豊富ですし、旅先で巡り会う門人も多く、地理についての広い知識も求められる上、掛詞的な叙述や江戸時代ならではの動詞の活用、芭蕉独自の造語や漢字の当て字など、広範な予備知識が必要だからです。 この点、例えば成立の古い平家物語なんかよりも断然難しいです。 そもそも原文はかなり短い(ちゃんと数えてませんが、50ページない位だと思います。)のですが、原文読解の難しさに配慮し、本書は354ページかけて丁寧に説明してくれています。 語釈では予備知識を補い、句解では俳句における論理の跳躍を埋め、解説では構成上の配慮を教えてくれます。 芭蕉は知識の深さやセンスの方向性が現代人とは格段に違うので、本書の説明は本当にありがたかったです。 ただ一つ文句を言えば、今の象潟は1804年の象潟地震に伴う地殻変動で陸地化したため、芭蕉の時代における松島と対比されるような海と島々の情景とは大きく異なってしまったことには、触れて欲しかったです。あるいは、『おくのほそ道』を素の状態で楽しんで欲しいという配慮かもしれませんが。 晩春の元禄2年3月27日(陽暦1689年5月16日)から晩秋の同年9月6日(陽暦10月18日)までの5か月間にわたる紀行文ということですが、同じような季節に時間をかけて読むことができたので、この創作をより良く味わうことができたように思います。 次は是非、同著者の『奥の細道ハンドブック』を片手に、実際に旅行巡礼しながら再読してみたいですね。

Posted byブクログ