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学力を育てる の商品レビュー

3.8

22件のお客様レビュー

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2019/01/20

「学力とは何か」「子どもの学力を伸ばすにはどうしたら良いか」を考えるとき、一度は読んでおいた方が良い本。ただし、具体例が関西の学校に限られている点が少し物足りないのと、発行年が少し古いため、特に教員の長時間労働問題については全く触れておらず、そのため「効果のある学校とは」の議論は...

「学力とは何か」「子どもの学力を伸ばすにはどうしたら良いか」を考えるとき、一度は読んでおいた方が良い本。ただし、具体例が関西の学校に限られている点が少し物足りないのと、発行年が少し古いため、特に教員の長時間労働問題については全く触れておらず、そのため「効果のある学校とは」の議論は今の時代には合わなくなってしまっている点が少し残念。

Posted byブクログ

2017/01/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 学力低下論争の収束期たる2005年後半、それまでに百家争鳴の観があった学力低下問題・学力の定義・学力低下の原因・学力を増進させる方略などについて、本書はデータに基づく回答を与えようとするものだ。  学力のイメージ化から、家庭・学校・地域の役割、調査データに伴う学力の現状まで広範に論じられている。  この中で、調査データと力のある学校の内容が興味深い。学力低下の実態を一言で言えば、二こぶラクダ化と非通塾層の顕著な落ち込みであろうか。  また、力のある学校とは、集団づくりを重視しつつ、学習内容の定着を図る試みをする学校といえる。本書はこれを提示しているのだ。

Posted byブクログ

2018/11/17

この本によると、そもそも日本で使われる学力という言葉は日本独特のもので、英語で同じニュアンスを指す単語を見出すのは難しいらしい。 なるほど、私たちは「学力」と聞くと、ペーパーテストや高校・大学入試のような点数化できるものを想像する。だが、これほどまで日本人を悩ませ、一喜一憂させる...

この本によると、そもそも日本で使われる学力という言葉は日本独特のもので、英語で同じニュアンスを指す単語を見出すのは難しいらしい。 なるほど、私たちは「学力」と聞くと、ペーパーテストや高校・大学入試のような点数化できるものを想像する。だが、これほどまで日本人を悩ませ、一喜一憂させる学力という概念は、世界標準ではなかった。世界では判断力や思考力といったものを含めて、もっと広い捉え方がされている。 「データや根拠にもとづかない主張はしない」 著者の持ち味は既成概念や学界の狭い枠にとらわれずに、物事の本来の状況を的確にわかりやすく捉えようとする視点であり、また、自分の考えのよりどころを現場から得ようという、頭だけでなく足も使った研究姿勢。だから書いている内容は理解しやすく、突飛さがない。 一般に「親が高学歴ならば子どもの学力は高い」「親の収入が多いほど子どもの学力は高い」というようなことをよく聞く。確かに全体から見た傾向ではそれは正しいだろう。 しかし著者はフィールドワークの結果「親が学歴でも収入でも恵まれていない家庭が多い学校で、それらが恵まれた学校を上回る成績を出す学校」の存在を発見した。 教師が個人でなく集団で取り組み、そして家庭訪問などで学校外もフォローする…地道で単純で即効性があるわけじゃない。だけど、学校が家庭が地域が同じ方向を向いて協働した結果、従来の説なんか蹴り飛ばすかのような痛快な結果につながった。 子どもの学力を上げようとするのなら、塾に通わせ、家庭教師をつけて…といったことをすればいいのは素人でもわかる。それが経済的理由などで全員ができるとは限らないから問題なのであって、今の日本教育の危機には、そんな当たり前の処方箋は意味がない。本当に現場の視点から出た、現場の状況に応じた柔軟な提案。それこそが私たちみんなの求めているものだし、実践できるもののはずだから。 ただし志水先生も「これは特効薬やマジックじゃない」とは認めている。つまり、このやり方で成果が出せるなんて何の保証もないってこと。じゃあどうすればいい?その答えの導出を志水先生だけに負わせるのは酷だろう。「学力」を本当に広い世界標準の意味で捉えて教育を大きな視点で考えれば、選択肢が何百通りもあるテストを解くように正解が見えない。だから政治家や評論家の口先だけの論調は虫酸が走るし、志水氏のような現場とつながった研究者を待望する。 (2011/6/19)

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2015/06/08

10年ほど前に書かれた本です。この中にある「学力の樹」という考え方が大事だとある講演会でおうかがいしたので読んでみた。その考え方自体はよく分かるし、根っこの部分が最も大切であるのも分かる。が、まあ特に新しい考え方でもなかったように感じた。国際学力調査で日本の学力が低下しているとい...

10年ほど前に書かれた本です。この中にある「学力の樹」という考え方が大事だとある講演会でおうかがいしたので読んでみた。その考え方自体はよく分かるし、根っこの部分が最も大切であるのも分かる。が、まあ特に新しい考え方でもなかったように感じた。国際学力調査で日本の学力が低下しているということについて、参加国が増えたために順位が落ちているだけ、ということは一覧を見ればすぐわかることなのに、はっきりそう言っている人は、私にとっては本書の著者が初めてだった。ブルデューの考え方が、不勉強な私には新鮮で得るものが多かった。経済資本(お金・資産)、文化資本―客体化された形(本・楽器・骨董品)、制度化された形(学歴・教育資格)、身体化された形(ハビトゥス)―、社会関係資本(コネ・人間関係)、この3つの資本が、家庭における子育て・教育という再生産に役立っている。はてさて我が家には、経済資本はともかく、文化資本はまあまああると思うのだけれど、再生産にどうも役立っていない。父親がさりげなく(わざとらしく?)差し出した本を読んでいる姿を見つけたことがない。ピアノもヴァイオリンも長続きしなかった。進め方が上手でないのかなあ。良かれと思ってやったことがすべてうまくいくわけではない。それが今のところの実感。けれど、必ず根っこのところに何らかの引っ掛かりができているはずと思っているのだけれど、いつか何かのきっかけでまたそこから新しい芽が出ることを期待しつつ・・・。そう、今ふと思ったけれど、樹というのは上の方を切り落としても、横からふいっと生えてくることがある。すごい生命力だし、「学力の樹」についてもそういうことがあってもいいかも知れない。もう一つ、本書で紹介されている「効果のある学校」の取り組みについて、先生方の並々ならぬ努力、すごいことなのだろうと頭が下がります。しかし、一方できっと先生方は自分の家庭を犠牲にされているのではないだろうか、しんどいことだなあという思いもある。森毅先生ならどない言わはるのやろ~

Posted byブクログ

2015/02/18

自分史から学力感を導入していくところは、「読み物」的であるが、その後は、教育学らしい論が展開される。

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2014/05/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

まず、「学力」というものの捉え方として、「学力の樹」という著者の考え方と、実際の学力調査結果に基づく分析が提示され、その中で「力のある学校(端的に言えば、低学力層の学力を下支えしいくつものセーフティネットを充実させている学校)」の実例を挿みながら、家庭・学校・地域それぞれの環境と学力とがどう関わり合っているかについて論じられ、最後に、これからの公立学校の在り方を提案する、というのが大まかな内容であった。 本書の中に出てくるE小やU中の例を見ていると、学力がいかに表面的な数値だけでない、目には見えない部分での影響を強く受けていることが分かる。もちろん、「学力」と一口に言ってもそれが具体的にどんな能力を指すのかによっても変わってくるが、私は、「学力」とは「学ぶための力」であって、小学校や中学校、そして高校の教科書で学ぶ知識だけに限定されてはいけないと思うし、知識だけを持っていても実社会で役に立たない、そんなことを大学に在籍する今、自分の受けてきた教育、今までの勉強態度などを思い返して経験的にも感じるのである。 また、本書を読んでいて気になったことは、以前貧困の勉強会で教育格差を少し扱ったが、そのとき低学歴層と高学歴層の格差に影響を与えるものとして、「親の年収(あるいは親の学歴)」という項目を挙げていた。しかし、本書でも家庭環境の違いによって生まれる成績の格差は取り扱われたが、そこで用いた指標は「文化的階層」といったものだった。例えば、「親に絵本などを読み聞かせしてもらったことがある」とか、「家の人に博物館や美術館に連れて行ってもらったことがある」「家にコンピューターがある」等である。すなわち、家庭の文化的水準の高さといったものであろうと思う。これは著者が、「学力」というものを、必ずしもペーパーテストの点数だったり、学歴の高さから反映されるものではない性質のものと考えているためかなと思った。

Posted byブクログ

2013/11/14

志水先生の新書。 ラフで読みやすいですが、書いてあることの質は結構高いように思います。数字で測る学力だけが大切なのではない、しかし数字で測る学力を軽んじていいわけでもない、というバランスが良かったです。「効果のある学校」に関する話も興味深かったです。学力問題について考える入り口と...

志水先生の新書。 ラフで読みやすいですが、書いてあることの質は結構高いように思います。数字で測る学力だけが大切なのではない、しかし数字で測る学力を軽んじていいわけでもない、というバランスが良かったです。「効果のある学校」に関する話も興味深かったです。学力問題について考える入り口として、ちょうどいい本です。

Posted byブクログ

2013/08/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

西宮の波側の下町育ちだとのこと。子供時代から岐阜の高校での寮生活、東大入学など青春時代までの自己披瀝が特に楽しかったです。子供のときに阪急に乗ったときのカルチャー・ショックとは確かにありそうですね。学力低下が問題視されている今日の問題を考えるにあたり、著者自身のこのような歴史は意味があるのですね。学力を3つの構造に分ける考えは、私も同感でした。つまり、A知識・理解、B思考・判断力。C意欲・関心・態度。大学に限らず、初中等教育においても学力とはこれら全体を指していると思いますから。最後に英国の教育改革がもてはやされていることへのアンチテーゼは、教育改革を急いでいる現内閣への批判にも通じるように思います。

Posted byブクログ

2013/06/04

 うちの校長が勧めていたので,読んでみました。  とくに「効果のある学校」の実践例のことを言っていたので,その部分を中心に読みました。  ま,確かに,これだけ手厚く教師集団が指導をすれば,家庭的に,社会的にしんどい環境におかれた子どもたちも,伸びるんだろうなあって思いました。でも...

 うちの校長が勧めていたので,読んでみました。  とくに「効果のある学校」の実践例のことを言っていたので,その部分を中心に読みました。  ま,確かに,これだけ手厚く教師集団が指導をすれば,家庭的に,社会的にしんどい環境におかれた子どもたちも,伸びるんだろうなあって思いました。でも,そのためには,教師自身の家庭はどうなるのかな…(とくに中学の生徒指導上の話題)。みんな金八先生みたいになれないし…ってこともちょっとだけ思いました。  ただ,効果を上げている小中学校がやっていることには,今,すぐにでも真似出来そうなことがたくさんあります。それはそれで,真似をしていけばいいんですよね。  すでにうちの学校でもちゃんとやっているやん。というものもたくさんあるように思います。  教師集団の力で,子どもたち全体を見ていく…そんな姿勢が大切ですね。

Posted byブクログ

2013/01/03

非常に読みやすい。簡潔にまとめられている。効果のある学校の実例もあげられている。学力を考える入り口に読むといいと思う。

Posted byブクログ