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女の民俗誌 の商品レビュー

4.7

8件のお客様レビュー

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2024/01/15

名も知れない、歴史に残されなかったいわゆる庶民の女性の生き様、生活を綴った内容。今と比べると、出てくる女性達は皆貧しかったのだろうけれど、でも逞しさというか芯の強さ、そしておおらかさがあって、かつ著者に対しては女性へのあたたかい眼差し、尊敬の念を文章に感じられるので(解説文はちょ...

名も知れない、歴史に残されなかったいわゆる庶民の女性の生き様、生活を綴った内容。今と比べると、出てくる女性達は皆貧しかったのだろうけれど、でも逞しさというか芯の強さ、そしておおらかさがあって、かつ著者に対しては女性へのあたたかい眼差し、尊敬の念を文章に感じられるので(解説文はちょっと上から目線なのに対して)嫌味がない。多分、お母さんがほんと立派だったんだろうなぁ。 この本の中の言葉ではないが、「民衆の世界が世間に知られるのは不幸によってである」この一文には胸に迫るものがある。日本残酷物語、ちょっと読んでみたい。 飛島の女はちょっと切なく哀しくなった。阿蘇の女は、阿蘇を旅した情景とセットに読める楽しさがあった。

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2017/01/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

婚姻・習俗・生活・仕事等につき、女性という切り口でまとめられた論考集。宮本常一が全国各地を訪ね歩き、聞き取りをした結果が、ぎっしり詰まったもので、彼の丹念な調査・行脚に驚嘆するばかりである。本書(特に、「海女たち」「共稼ぎ」)を読めば、「専業主婦」という有り様が、極めて限定された時代の特殊な状況ということがわかる。また、「行商」「出稼ぎと旅」からは、女性が頻繁に連れ立って旅をしていた(させられていた)ことがよくわかり、従来のイメージを覆すだけでなく、ルイス・フロイスの説明を裏付けるものとなっている。

Posted byブクログ

2016/12/21

 庶民の暮らしというのは、大体表舞台の外に置かれ続けてきた。こと家庭内の役目に従事した女性の実態となるとなおさらである。  まず谷川健一氏の解説から引用しよう。 「私は柳田にみちびかれて民俗学の世界に足を踏み入れたのだが、貴族的精神の持主であった柳田の文章からは、庶民の肌のぬく...

 庶民の暮らしというのは、大体表舞台の外に置かれ続けてきた。こと家庭内の役目に従事した女性の実態となるとなおさらである。  まず谷川健一氏の解説から引用しよう。 「私は柳田にみちびかれて民俗学の世界に足を踏み入れたのだが、貴族的精神の持主であった柳田の文章からは、庶民の肌のぬくもりというものはあまり感じだれない。私は宮本氏に出会ってはじめて、庶民の生き生きした姿を実感することができた。宮本氏は生まれ育った環境からして、生得の庶民だったから、民俗学者として「庶民の魂」をつかむことは誰よりもうまかった」  私は民俗学者ではないし、そもそも柳田氏の著作もほとんどまともに読んだことはない。このところ歴史や民俗学に関する書籍を読み漁っているのは、伊勢志摩の海女キャラクター「碧志摩メグ」の公認取り消しや「のうりんポスター事案」などを契機に「いわゆる萌え表現に対する規制」というものがどこから来ているのかに興味を持ったからで、日本における女性の表現がどのようなものであったかという関心だった。  わが国に文字がもたらされた飛鳥時代から連綿と続く日本の表現の歴史の中で、女性がどのように描かれてきたか、女性の地位がどのようなものであったか、それを知ることに、「萌え規制」を望む感情を読み解くヒントがあるような気がしている(ちなみにまだ答えには至っていない)。  表現される女性はとりもなおさずその時点での女性の扱いを表すものであって、それを「女性の地位」という形で私はとらえている。  本書はまさに女性の生き方そのものの記録であるわけで、わずか100年ほどの間に、私達の生活習慣は大きく変わったことを改めて知らしめられる。  「昔は親の決めた相手と結婚した」「夜這いの習慣があった」等々といった断片的な知識はあっても、それが具体的にどのようなものであったかを、人々はあまり語りたがらないし、風習は地域や時期によって大きく異なる。  著者は徹底的に歩いて回ることで多くの人々の話を聞いた。祭事だの食生活だのといったことは誰もが気軽に答えるであろうが、性や婚姻といったプライベートなことはなかなか本当のことを語ってもらえない。「濁酒と堕児の話が出てきて、はじめて本当のことが聞けた」というのが著者の弁であるが、そこに至るまでの労苦は想像を絶する。  そうした労苦を抜きに成果物を拝読し、好奇心を充足できる幸甚を噛み締める次第である。

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2014/11/08

日本人女性の社会的役割を古代から現代まで、北から南、果ては海外まで追った一冊。武家だけでなく、庶民の、無名の女性達の記録で、その調査対象の広さには感服した。それはまさに自分の母や祖母、曽祖母の話を聞いているようで、ある意味どのエピソードも「あ、それ聞いたことある」という感じだった...

日本人女性の社会的役割を古代から現代まで、北から南、果ては海外まで追った一冊。武家だけでなく、庶民の、無名の女性達の記録で、その調査対象の広さには感服した。それはまさに自分の母や祖母、曽祖母の話を聞いているようで、ある意味どのエピソードも「あ、それ聞いたことある」という感じだった。女性は男性に比べて選択肢が少ないとか、社会的弱者だとか言われているものの、冷静に見つめ直してみると、想像以上に女性は柔軟な生活を、つい最近まで送っていたのだということが分かる。歴史観を変える一冊。

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2012/11/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

自分がどうしようもなく女性であることを認識し、女子力を女性という存在そのものから考えたかったときに、書店で目にしたので購入 日本の様様な祭などが女人禁制である理由(男尊女卑)の一考察に、なるほどと思った 女性からの縁切りが多く離婚率も高かったことは、初めて知った 女性が服従するだけの存在ではなかったことに、なんだか安心してしまった 男性との関係を絶つときに、「このたびかぎり」と、女性が男性に足袋をおくったというから、なんとも粋だ

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2013/07/21

宮本常一氏の書いたものの中から、女性に関して書かれたものを集めた一冊。 女性はたくましい。その一言に尽きるかもしれない。 各地を回り、綿密な話を聞き取った宮本氏は偉大です。 いまから同じ話を聞き取ろうと思っても、無理ですもの。 イメージや思い込みで語られがちな「日本の女性像」の真...

宮本常一氏の書いたものの中から、女性に関して書かれたものを集めた一冊。 女性はたくましい。その一言に尽きるかもしれない。 各地を回り、綿密な話を聞き取った宮本氏は偉大です。 いまから同じ話を聞き取ろうと思っても、無理ですもの。 イメージや思い込みで語られがちな「日本の女性像」の真の姿がここに詰まっています。 最後の「母の記」は涙ぐみました。

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2010/10/08

 宮本の書いたもののうち、女性に関する文章を集めた本。娘宿のことなど、赤松啓介の夜這の話には出てこないような女性の性や出産に関する話も多数。  「戦後の女性」(p190)に、戦後の婦人参政の話題があり、このことについて世間では当時、 「女に選挙権を与えても、投票のときは亭主の投...

 宮本の書いたもののうち、女性に関する文章を集めた本。娘宿のことなど、赤松啓介の夜這の話には出てこないような女性の性や出産に関する話も多数。  「戦後の女性」(p190)に、戦後の婦人参政の話題があり、このことについて世間では当時、 「女に選挙権を与えても、投票のときは亭主の投票する人と同じ人を選ぶことになるのだから、意味のないことで、夫婦が別々に人を選ぶようになれば家族の争いのもとになる」 と言われていたそうな。21世紀に生きる私は驚愕したのだけれど、同時に夫婦別姓に関する議論を連想した。たったの65年でこんなに人の認識というのは変わるものなのだなぁ。

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2010/03/24

ランチの時にだけ、少しずつ読んでいたのでだいぶ時間がかかったけれど、最近読了したのが題記の本。日本という土地に生きる、全ての女性に読んでもらいたいというのは言い過ぎか。いや、決して言い過ぎではない。それほど、庶民生活の歴史の中で女性がどのような位置を占めていたのかを、丁寧に、愛情...

ランチの時にだけ、少しずつ読んでいたのでだいぶ時間がかかったけれど、最近読了したのが題記の本。日本という土地に生きる、全ての女性に読んでもらいたいというのは言い過ぎか。いや、決して言い過ぎではない。それほど、庶民生活の歴史の中で女性がどのような位置を占めていたのかを、丁寧に、愛情を持って記述しています。いろんなレベルで目から鱗、現代の偏狭な価値観を容赦なく揺さぶってくれます。 ホントに大げさな話ではなく、日本という国は、つい最近まで女性が動かしてきたと言ってもいい、という読後感。 日経「私の履歴書」で連載していた谷川健一氏が本書に解説を寄せていて、その中から宮本氏の言葉を以下に。 「新聞も雑誌もテレビもラジオも全て事件を追うている。事件だけが話題になる。そしてそこにあらわれたものが世相だと思っているが、実は新聞記事やテレビのニュースにならないところに本当の生活があり、文化があるのではないだろうか」

Posted byブクログ