愛妻記 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
≪内容≫ 映画監督・脚本家である新藤兼人が妻・乙羽信子について綴った回想記。 ≪感想≫ 末期癌による余命宣告を本人に告げる代わりに、新藤は乙羽さんに映画を作らないか、と提案する。「事実は小説より奇なり」とはよく言ったもので、乙羽信子の波乱に満ちた人生や新藤監督との関係はまるで作り話のような美しさがあるように思う。 長い不倫関係にあった頃の話から最期の一瞬まで、一人の女優の生をそのまま写し撮ったような回想録であるが、乙羽さんの日記や対談の抜粋、映画のシナリオなどが折々で挟み込まれており、乙羽さんの素朴な一面までもが鮮やかに浮かび上がってくる。映画監督と女優という立場は違っても、本当に互いを尊重しあい支えあって生きてきたというのが強く感じられ、静かながらも揺るぎ無い男女の愛情が犇々と伝わってきた。 乙羽信子という女優を僕は知らなかった。正直に言うと新藤監督の作品もあまり見たことがないし、この本を手に取ったのもただの気紛れの類であった。本の中で初めて知った昭和の名女優を生で見ることができなかったのは残念なことだが、フィルムの中で彼女の生に出会うことができるというだけでも幸運なのかもしれない。遺作「午後の遺言状」を是非探してみようと思う。
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