背教者ユリアヌス(下) の商品レビュー
「ユリアヌスアウグス…
「ユリアヌスアウグスツス!」群衆の絶叫に、反乱軍の指揮者として首都コンスタンティノポリスを目指すこととなったユリアヌス。古代の神々を胸に抱き、皇帝との戦いに挑む。そして、ペルシャへの進軍。ゾナス、サルスティウスらとともに向かった砂漠の向こうにはたして「日の神」はいるのか。感動の結...
「ユリアヌスアウグスツス!」群衆の絶叫に、反乱軍の指揮者として首都コンスタンティノポリスを目指すこととなったユリアヌス。古代の神々を胸に抱き、皇帝との戦いに挑む。そして、ペルシャへの進軍。ゾナス、サルスティウスらとともに向かった砂漠の向こうにはたして「日の神」はいるのか。感動の結末を迎える珠玉の名作の下巻。
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ユリアヌスを少し応援…
ユリアヌスを少し応援しました。もし、ユリアヌスが死ななければと思ったりします。
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エウセビアの死後、コンスタンティウスを取り巻くキリスト教徒たちの謀略に陥ったユリアヌスは、ガリアの民衆に後押しされて、皇帝への反旗をひるがえすことになります。圧倒的な数を誇るローマ軍に対して、ユリアヌスは知力を尽くして抗戦します。ところが、コンスタンティウスがあっけなく死んだこと...
エウセビアの死後、コンスタンティウスを取り巻くキリスト教徒たちの謀略に陥ったユリアヌスは、ガリアの民衆に後押しされて、皇帝への反旗をひるがえすことになります。圧倒的な数を誇るローマ軍に対して、ユリアヌスは知力を尽くして抗戦します。ところが、コンスタンティウスがあっけなく死んだことで、宮廷内の勢力争いの構図が一変し、ユリアヌスは皇帝の座を引き継ぐことになります。 古くからのローマの信仰を復活させ、学問を通じてはぐくんできた統治の理念を実行に移そうとするユリアヌスですが、そんな彼の理念とキリスト教徒たちの信仰はくり返し摩擦を生み出します。同時にユリアヌスは、ペルシアへの遠征にも頭を悩ませ、理想的なローマの統治への途上で倒れることになります。 ユリアヌスの宗教的寛容の理念をかかげる姿勢がとりわけ印象的で、現代において宗教が直面している問題にも通じるようなものを感じました。
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高校生のとき読んだ本。時々読み返してたけど、久々にまた読む。 今まで物語として(史実だけど)楽しんでいたけど、ユリアヌスと排他的なキリスト教徒との確執は、今の世の中の宗教的なテロリストの問題みたい。ユリアヌスが理想としていた政治やローマ帝国の在り方はそのまま今の時代にも通じるもの...
高校生のとき読んだ本。時々読み返してたけど、久々にまた読む。 今まで物語として(史実だけど)楽しんでいたけど、ユリアヌスと排他的なキリスト教徒との確執は、今の世の中の宗教的なテロリストの問題みたい。ユリアヌスが理想としていた政治やローマ帝国の在り方はそのまま今の時代にも通じるものがあって、1000年以上前のことなのに人間の営みって根のところは変わらないものなのかとおもったり。
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ルテティアの丘で◆東方への道◆異教の星◆ダフネ炎上◆落日の果て 第14回毎日芸術賞 著者:辻邦生(1925-1999、東京) 解説:篠田一士(1927-1989、岐阜県)
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怒涛のガリア・ペルシア討伐編。緊張感のある戦闘シーンも良いが、タイトルにもなっている宗教論が面白い。死後の世界での救いに傾倒する来世思想のキリスト教に対し、(もはや少数派となってしまったが)現世・人間の素晴らしさを称えるギリシア神教との戦いだ。現世にこそ美があると一貫して主張する...
怒涛のガリア・ペルシア討伐編。緊張感のある戦闘シーンも良いが、タイトルにもなっている宗教論が面白い。死後の世界での救いに傾倒する来世思想のキリスト教に対し、(もはや少数派となってしまったが)現世・人間の素晴らしさを称えるギリシア神教との戦いだ。現世にこそ美があると一貫して主張するユリアヌスの説法は熱い。「人間は永遠に未完成のものかもしれぬ。永遠に完成に向かって走り続けるものかもしれぬ。だが、それは走っているのだ。そのことが肝心なのだ。」ナイスフレーズなので、覚えておこう。
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全3巻というボリュームですが、読めちゃいます。例えば江戸を舞台とする歴史小説などの面白さとは違う類いの面白さです。 ユリアヌスは地上の美しさをこんなにも愛でる人なのに、その崇高すぎる思想は地上から離れているような気がして、彼の宿命を皮肉に感じました。
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不遇の境遇からローマ帝国皇帝にまで登りつめ、そしてペルシア遠征の地で32歳で命を落とした「背教者」ユリアヌス。その生涯を叙事詩的なスケールで描く大河小説。上中下合わせて1000ページと大部だけれど、全然苦にならない、どんどん読んでいける。 作中でのユリアヌスは、秩序を何よりも重ん...
不遇の境遇からローマ帝国皇帝にまで登りつめ、そしてペルシア遠征の地で32歳で命を落とした「背教者」ユリアヌス。その生涯を叙事詩的なスケールで描く大河小説。上中下合わせて1000ページと大部だけれど、全然苦にならない、どんどん読んでいける。 作中でのユリアヌスは、秩序を何よりも重んじる人物として描かれる。理性に基づいた人間の営みが、社会に国家に秩序をもたらすという信念のもとローマ帝国を運営していこうとする。その信念は時に夢想的なほどに理想主義。そうした彼が理想としたのはギリシャ的な哲学の世界であり、マルクス・アウレリウス・アントニヌスのような哲人皇帝による政治。だからこそ、キリスト教徒はそうした古典的な秩序美しい秩序を乱す存在として、ユリアヌスには映った。秩序のうえの寛容さでもってキリスト教も受け入れようとするものの、彼の理想主義的な政策は時に世に受け入れられないが、それでも邁進する。 これら信仰同士、政治同士、あるいは信仰と政治の相克を見事に描いているところが、ただスケールの大きな歴史小説とは一線を画している点。ただ単に主人公がどうしたどう考えたではなくて、それらの背景にあるより大きく根深い構造を掘り出してこそ、こうした小説には意義があると思う。
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皇帝への登極、内なるガラリヤ人との争いと、ペルシアへの外征。 多元主義・寛容・知識主義が単純化さらた真理(と思われるもの)に敗れていく様をローマの哲人皇帝の終局の姿を写し絵にしながら描ききった傑作。 極論や止揚を求めない単純主義に勝てないと分かりながらも、相克する矛盾を抱えつつ生...
皇帝への登極、内なるガラリヤ人との争いと、ペルシアへの外征。 多元主義・寛容・知識主義が単純化さらた真理(と思われるもの)に敗れていく様をローマの哲人皇帝の終局の姿を写し絵にしながら描ききった傑作。 極論や止揚を求めない単純主義に勝てないと分かりながらも、相克する矛盾を抱えつつ生きる知識人の辻邦夫御大の理想像がここにあります。
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前皇帝の崩御によりユリアヌスは皇帝の地位についた。 ユリアヌスは哲学的思想によりローマ帝国の腐敗した政治の改革を目指した。最期はペルシア遠征中、志半ばで倒れた。 人の在るべき姿を描いた作品。まさに思わず息を呑んでしまうほどの名句がたくさん出てくる。 上巻は何だかパッとしな...
前皇帝の崩御によりユリアヌスは皇帝の地位についた。 ユリアヌスは哲学的思想によりローマ帝国の腐敗した政治の改革を目指した。最期はペルシア遠征中、志半ばで倒れた。 人の在るべき姿を描いた作品。まさに思わず息を呑んでしまうほどの名句がたくさん出てくる。 上巻は何だかパッとしない雰囲気だったが、尻上がりに面白くなってきた。我慢して読破した甲斐があった。哲学という分野も中々捨て難いと思った。 人間は永遠に未完成のものかも知れぬ。永遠に完成に向かって走りつづけるものかも知れぬ。だが、それは走っているのだ。そのことが肝心なのだ 寛容とは、その無制限な横暴を見て見ぬふりをすることではない。もしこの寛容の背後に、寛容をもたらした精神の火が燃えていないのなら、それは無責任の傍観に等しい。寛容が寛容であるためには、それを支える確たる精神が目覚めているのでなければならぬ
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