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純化の思想家ルソー の商品レビュー

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2013/09/16

従来矛盾し論理的明晰さを欠く思想家として解釈されることが常であったルソーを、人間と市民という両立し得ない選択肢を純粋なかたちで提示する思想家として解釈する研究。ルソーが提示する人間の理念型を人間・市民・孤独な散歩者の三つにしぼり、さらに鍵となる概念として幸福・自由・秩序・神の四つ...

従来矛盾し論理的明晰さを欠く思想家として解釈されることが常であったルソーを、人間と市民という両立し得ない選択肢を純粋なかたちで提示する思想家として解釈する研究。ルソーが提示する人間の理念型を人間・市民・孤独な散歩者の三つにしぼり、さらに鍵となる概念として幸福・自由・秩序・神の四つが挙げられる。人間の理念型を提示するのが『エミール』であり、ここで自然の秩序=自然法における正しい人間の姿が明快に示される。市民の理念型を提示するのが『社会契約論』であり、ここで人為の秩序=国家法・実定法における正しい人間=市民の姿が矛盾なく明晰に示される。しかし、ルソーの示す人間像はこの二つにとどまらない。最後に、こうした人間にも市民にもなれなかったルソー自身の写し絵として、「孤独な散歩者」の姿が描き出される。ここに至りルソーの思想の全体は、世界の秩序の創造者たる神の正しさを問うものとして立ち現れる。統一的ルソー像を探りだす研究として、非常に読み応えがある。ルソーに真剣に取り組むすべての人にとって有益な一冊であろう。

Posted byブクログ