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日本人の遊び場 の商品レビュー

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4件のお客様レビュー

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2013/09/20

古本で購入。 昭和38年(1963)、週刊朝日に14週にわたって連載された開高健のルポルタージュ。 ボウリング場・ナイター釣堀・磐梯高原などを訪ねた見聞録になっている。 高度成長を迎えて敗戦国から「大国」への道を驀進するかに見える日本の、アメリカ化していくレジャー、観光会社の...

古本で購入。 昭和38年(1963)、週刊朝日に14週にわたって連載された開高健のルポルタージュ。 ボウリング場・ナイター釣堀・磐梯高原などを訪ねた見聞録になっている。 高度成長を迎えて敗戦国から「大国」への道を驀進するかに見える日本の、アメリカ化していくレジャー、観光会社のゴリ押しで姿を変える山や川、客と演者の奇妙で濃密な親近感が満ちる演芸館。 日本のハードとソフトが様変わりしていく、その一幕を切り取った風俗ルポとして見てもおもしろい。 無茶苦茶で軽薄で、ただエネルギーはある。エネルギーしかない、のかもしれない。 そうしたエネルギーの残骸が今も日本のそこら中に残っていて色褪せたわびしさを漂わせているのだが、残骸たちが熱を帯びていた時代が生々しく、ときに開高一流の皮肉たっぷりに描かれている。 印象的なのは最後を飾る「遊び場ルポのおわりに」の一節で、少し長いけど引用。 「たいていの場合、私には人びとの横顔が、なにかに追われて逃げるとちゅうでちょっと横道へ入って一息ついているところなのだといっているように見えてならなかった。ひとことでいえば、血まなこである。血まなこで遊んでいるのだ。奇妙な表現だけれど、私たちは血相変えて“楽シイ!”と叫んでいるかのようなのである」 …今の日本人は、我々はどうだろう。 「○○離れ」などと何の根拠があるのか、離れることの何がいけないのか、わけのわからないことが昨今よく言われるけれども、低成長の時代にあって、日本人はようやく「血相」を抑えて個々の身の丈に合った「遊び」をするようになってきたのかもしれない。 同じく開高の傑作ルポ『ずばり東京』と合わせて読むと、いっそうおもしろいかと思う。

Posted byブクログ

2010/10/03

日本人の遊び場・目次 ・ボウリング場 ・食いだおれ ・パチンコ・ホール ・マンモス・プール ・テクニランド ・ナイター釣堀 ・軽井沢 ・湘南の海岸 ・ナイター映画 ・磐梯高原 ・浅草木馬館 ・阿波踊り ・ヘルスセンター ・遊び場ルポのおわりに

Posted byブクログ

2010/09/23

わびしさは、味の素みたいなもの、とは、40年後の2010年でも同感。登場する「遊び場」の栄枯盛衰は、あるものも、本質は変わらず。脱ちまなこ、で大人の余裕を心掛けたいです。

Posted byブクログ

2010/09/23

 さすがは開高健といいたくなるような名文が並ぶ。タイトル通り、日本人の遊び場を巡るルポなんだけど、なんせ書かれた時代が古い。娯楽は200円くらい、というのがキーワードになるような時代であるのだ。だから逆に「時代劇」的な興味もたくさんある。  ここに描かれている湘南の海やナイター...

 さすがは開高健といいたくなるような名文が並ぶ。タイトル通り、日本人の遊び場を巡るルポなんだけど、なんせ書かれた時代が古い。娯楽は200円くらい、というのがキーワードになるような時代であるのだ。だから逆に「時代劇」的な興味もたくさんある。  ここに描かれている湘南の海やナイター映画というのは、今の自分にとっては異界である。寝返りを打ったら他人にぶつかるような海岸には絶対に行かない。立ったまま朝まで寝ながら見るような映画なら頼まれても見ない。昭和30年代の後半のレジャーというのはこういうものだったのかな。自分が子どもの頃のことを思い出し、親が自分をどう育て、どんなふうに遊びに連れて行ってくれたのかと言うことを微かに思い出すと、少し切なくなる。遊ぶのにも体力が必要な時代だったんだなと思う。  で、よおく自分の行動パターンなんかを見てみると、案外同じようなものを形を変えて「楽しんでいる」自分がいたりするような気がしなくもないのがちょっと怖いのである。 2009/10/31

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