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モブツ・セセ・セコ物語 の商品レビュー

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2021/09/18

CIAがDRコンゴの親米支配者候補として見出したことを今も組織の誇りとしている(7頁)、敵には残虐に、身内には甘く、国家を私物化し続けたあげくに亡命先で寂しく死んだアフリカの独裁者についての物語調の伝記作品。モブツを通して独立後のアフリカを考えるために読んで損はない。 モブツが...

CIAがDRコンゴの親米支配者候補として見出したことを今も組織の誇りとしている(7頁)、敵には残虐に、身内には甘く、国家を私物化し続けたあげくに亡命先で寂しく死んだアフリカの独裁者についての物語調の伝記作品。モブツを通して独立後のアフリカを考えるために読んで損はない。 モブツが興味深いのは、ベルギー植民地時代に公安軍のリンガラ語の機関誌『サンゴ・ヤ・ビスー』の編集者、ジャーナリストとしての経験が、後の報道機関の弾圧や懐柔などに生かされたという指摘だった(52-54頁)。本書はモブツが妻や政敵や部下に対して発揮した残虐で野蛮なエピソードには事欠かないが、単にモブツは小心さと残虐さが同居した複雑な人格の持ち主であっただけでなく、このようなジャーナリズムの操縦能力を有していたことを忘れてはならない。 “ モブツは何と言っても暴力的な性格を持っていました。あんなに健康そうに見えた妻マリー・アントワネットが妊娠中に急逝したのは、モブツに腹を足蹴にされたのが直接の原因であると、ある側近が語っています。”(本書61頁より引用) 妻に対して残虐なだけではなく、自らが殺害したコンゴ独立の英雄パトリス・ルムンバを、独立の英雄として持ち上げ、顕彰するという柔軟さを持ち合わせていた(117頁) “ モブツを大佐に昇任させたとき、軍の長老たちであるボボゾ、ルンドゥラ、ムランバ、ココロたちは、ルムンバにいつかこの昇任が間違いだったと悔やむことになりますよと忠告しました。しかし、言われた本人はもちろんのこと、この長老たちもその日がこんなに早くやってくるとは、思いませんでした。”(本書95頁より引用) と本書にはあるけれども、仮にルムンバがモブツを昇進させてなければコンゴ民主共和国は今頃あんなにひどいことになっていなかったんじゃないかと、そんなことを考えてしまった。 モブツはルムンバを暗殺した後に、5日間で15キロ瘦せ、物が食べられなくなり、ウイスキーを1日1瓶~2瓶飲むことで持ちこたえていたとの証言があり(66頁)、一人の人間の中に小心さと残虐さが見事に共存するということの恰好の実例となっている。 1970年代以降、15,000人のギリシャ人、12,000人のポルトガル人、3,000人のパキスタン人を主とする外国人の個人事業主を追放して経済のザイール化を図るも(245頁)、これは見事に失敗した。国有化政策を中心とする経済政策は失敗に失敗を重ね(第10章、第11章、第12章)、腐敗が構造化し(第13章、第14章)、子飼いの秘密警察による暴力的な統治の中で国家を私物化し続けたモブツは(第15章~)、ついにかつて自分が暗殺したピエール・ムレレの部下だったローラン・カビラ将軍によって追放される。飛行機でザイールから脱出するモブツは「自分の兵士たちでさえ銃を私に向けている。私はもうこの国でやるべきことがない。もはや、これは私のザイールではない」(Honsho 455頁より引用)と語ったとのことである。コンゴ民主共和国の富を私物化してベルギーやフランスのパリ16区、スイス、セネガルなどの一等地に不動産を所有し(289頁にリストがある)、世界各国の元首と権勢で張り合おうとしたモブツの最期は誠に寂しいものであった。 “ 彼はすべての面で一流であることを目指していました。ベルギーのボードワン国王、エリザベス女王、ドゴール大統領、歴代のアメリカ大統領、毛沢東主席、それにローマ教皇などと対等につき合うことを望んでいました。自らの宮殿で日常飲む酒も高価なロゼのシャンパン、ローラン・ペリエでした。ただ残念ながら、モブツは自分の国民を一流の民にしようという面では、あまり熱心ではありませんでした。”(本書8頁より引用) “ 問題は、コンゴという豊かな国の富を国民に分配することなく、自らとその一族のために恣意的に、徹底的に吸い上げたことです。ある人はモブツのことをコンゴ村の酋長さん的存在と決めつけていますが、それは適切ではありません。アフリカの本当の酋長とは、「先祖代々からの土地の受託者であり、農耕をする人々から十分の一の税を徴収し、もめ事を裁き、富を蓄える。この富は、自分自身の財産というよりは、不幸な出来事が起きたと(←8頁9頁→)き、村落全体のために役立てるための蓄財である。その権限は終身的なものではなく、もし管轄能力がないと判断されれば、酋長はその部族の者たちによって罷免されうる」(*2)”(本書8-9頁より引用)

Posted byブクログ

2017/08/12

独立後のコンゴ(民)の、モブツによる混迷独裁政治の、至るまで、至ってから、そして終焉までがだいぶよくわかった気がする。(人が変わっただけで、独裁政治そのものは結局終焉になってないけど) ルワンダ大虐殺~カビラに取って代わられるあたり、ルワンダ側のWikipediaそのものをいくら...

独立後のコンゴ(民)の、モブツによる混迷独裁政治の、至るまで、至ってから、そして終焉までがだいぶよくわかった気がする。(人が変わっただけで、独裁政治そのものは結局終焉になってないけど) ルワンダ大虐殺~カビラに取って代わられるあたり、ルワンダ側のWikipediaそのものをいくら読んでもツチ・フツの違いで混乱しちゃってボンヤリしちゃってたけど、むしろこの本で理解が進んだ。 これだけひどかったモブツより更にひどいというローラン&ジョセフ・カビラ物語(そんな本ない)も読みたいところ。

Posted byブクログ