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般若心経の謎を解く の商品レビュー

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2009/10/04

 作者は小説家で、仏教家ではありませんが、その小説家の立場から仏教をわかりやすく紹介するtという本。メインは般若心経なのですが、般若心経を理解しようと思えば、仏教の教義も理解しなければならないということで、仏教の成立した時代背景から、成立と伝播の流れ、上座部仏教と大乗仏教の教義の...

 作者は小説家で、仏教家ではありませんが、その小説家の立場から仏教をわかりやすく紹介するtという本。メインは般若心経なのですが、般若心経を理解しようと思えば、仏教の教義も理解しなければならないということで、仏教の成立した時代背景から、成立と伝播の流れ、上座部仏教と大乗仏教の教義の分裂なども解説しています。  何冊か読んできましたが、とりあえず一冊読んで仏教を知りたいというならば、読んだ中ではこれが一番いいように思います。扱っているのが般若心経なので、大乗仏教がメインで上座部仏教についての話は大乗仏教から見てどうなのかということが中心になってますけど、日本の仏教は大乗仏教の流れをくんでいるので、充分ではないかと思います。  仏教の説く、「空」「無私」「無分別」をつきつめて考えた後で、一番最後に作者が提示した作者自身の考えも、すっきりと身に入ってきました。  ただし、問題があるように思える部分もあります。  釈迦の一生を物語風に書いているのですが、物語風なだけに読みやすいのはいいと思います。が、どこまでちゃんとした裏付けがあって書いているのか、疑問に思えるところもありました。  仏教の入門書として、悪くはないと思いますが、この本の全てを鵜呑みにするのはまずいようにも思えます。  個人的にこの本を読んで良かったと思ったのは、釈迦と仏と菩薩と観音の関係が理解できたことです。  仏教で一番謎だったのがこの部分だったんです。キリスト教なら、唯一の神がいて、神の子キリストがいて、神の御使いがいてっていうのは門外漢から見てもわかりやすいんですけど、仏教世界はわけがわからなかった。仏教を起こした釈迦がいて、その釈迦を仏陀として尊崇してるかと思えば、釈迦より偉そうな大日如来とか阿弥陀如来がいて、さらには観音や菩薩も信仰を集めていて、その上仏教を護る神なんかもいて、それぞれの力関係とか位置関係とか成立の理由とか、その辺が全くわからなかったのです。  でも、この本で解決したので大満足。なるほどねーと思いました。  それから、能楽の般若の面と仏教の般若はまったく関係がないというのも初めて知りました。仏教の般若があの面の象徴する感情と関係しているんだとずっと思ってました。思い違いを正せて良かった。  さらに、仏教用語には、音をそのまま漢字で表したものと、意訳したものとが混ざっているというのも、改めて言われるまで気づきませんでした。般若波羅蜜多は音訳なので、漢字には全く意味がないそうです。仏教用語ってやたら漢字が難しいと思ったら、単に音訳だから難しくなっただけだなんて。意訳した仏教用語の漢字は難しくないんですよね。  難しい漢字が並んでいるからありがたい雰囲気を醸し出すお経の難しさが、実は「夜露死苦(よろしく)」と同じレベルのものだったなんて! そうだったのかー。  さて、この本は、作者が読者に語りかけるという文体を取っています。例えるなら、教室で仏教に関する授業をうけているというような雰囲気。話し言葉で、易しく話してくれています。  ただ、その授業のような雰囲気を、言葉遣いだけじゃなくて文章の展開にも持ってきているので、表現はけっこうくどいです。さっき説明したことをもう一回言い直したり、さらにもう一回違う言葉を使って説明したり、余談を挟んだり、少し前に説明したことをまた言い直したりしてます。  耳で聞いている授業だと、こうしたやり方は学生の注意を引くのに効果的なんですが、文章でやられるとちょっとくどい。  その辺のくどさが我慢できるなら、仏教の入門書として、読みやすくていいんじゃないかと思います。

Posted byブクログ