覇権と地域協力の国際政治学 の商品レビュー

西川吉光【著】

2012/04/03

旧ユーゴ解体に伴う民族紛争の過程でバルカン半島で発生した多くの難民はドイツに向かった。ドイツに集中したのは東西ヨーロッパの接点という地理的条件に加え、ドイツが亡命者の受け入れに寛大だったから。

トルコをEUに加えた場合、バルカン諸国やベラルーシ、イスラエルが加盟申請をしてきた場合、断る理由が見出しにくくなる。これら諸国を加えれば、もはや現在のEUとは全く異なる別の共同体となる。

キリスト教文明圏として共通基盤を持つEUと異なり、多様なメンバーから構成されるASEANの場合はその多様性を尊重して会合一致と内政不干渉を原則とし、対話と協議を重視し、時間をかけながら合意点を探る手法が重視されることになる。

APACではこれまで多国間で政治、安全保障上の対話や協力を行う慣行や経験がほとんどなかった。アジアには域内共通項が少ない。
日本がアジア地域との協力、連携を深めるにあたってはドイツにとってのフランスのようなパートナーが域内に必要である。